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私を望んでくれたのは誰?



ただでさえ激動の1日だったというのに、翌日の昼、更なる衝撃が待ち構えていようとは流石の私も予想出来なかった。


「──ああ、フレイ。お前結婚しろ」

「……は?」

「父上、今なんと…?」


パンとオムレツ、それに水という素っ気ない昼食を取っている最中、父に一方的にそう告げられた。


「そのままだ。結婚しろと言っている」


一瞬頭が真っ白になった。

リリアの結婚でも驚いたというのに、次は私?

言葉も発せない私の隣で、カイルが激高する。


「突然何を仰るのです、父上!」

「何を怒っている?フレイにとっても、こんなにいい話はないだろう。お前のような行き遅れでも、構わないと仰ってくれているのだぞ」

「なんて言い様だ!父上の分まで仕事をしてきたから、姉上は結婚出来なかったんじゃないか!」

「いいのよ。ありがとうカイル…」


10代での婚姻も珍しくない世界で、確かに24歳の私は行き遅れだった。

親がいいお相手を見つけるか、誰かに見初められるのが通常ではあるけれど、カイルとリリアに忙しかった父母は私のことは常に後回しだった。婚姻もそう。

それに加えて、社交の場への参加を控えていた私は貴族たちの世界での存在感が薄いだろうし、見初められる程の大した容姿でもない。

結婚など、とうに諦めていたはずだったのに。


「しかしだ、リリアが結婚するというのに、姉が独身のままでいるというのは体裁が悪いだろう?貴族の世界にはメンツというものがあるんだぞ。お前たちはまだそこが分かっていない」

「そのようなものよりも、大切にしなければならないことを知っているだけです」


カイルが吐き捨てる。だけど父の言葉はもっともではあった。

貴族の世界は見栄を張り合う世界ではある。そして昨日私は自分自身で、リリアの結婚に少しの弱みも見せては駄目だと言った。

確かに今の私は妹の、その汚点になる可能性のある存在だった。呆然とする時間も与えられないまま、私の決心だけは固まりつつあった。


「……お父様、その方はどなたですか」

「ほれ、見てみろ。1週間…いや2週間前だったか、書状が届いたのだ。すぐに了承の返事を出したぞ」


父が投げて寄越したのは、見るだけで質が高いと分かる真っ白な紙の便箋だった。

そこに優しい筆圧で、確かにレティシアン家の長女、フレイ嬢との婚姻を認めて欲しいと書いてある。

私はそれを見て更に驚いた。父のことだから、邪魔になった私をどこか適当な貴族にあてがったのだと思ったのに、どうやら違ったらしい。

まだ文字しか知らない、いえ、この字だって本人が書いたものかも分からない。

だけどこの何歳かも、どんな方かも知れないお方は私自身を欲してくれている。

弟や妹以外で、そんな相手がいただろうか?胸のなかの驚きが、じわりじわりと温かいものに変わっていく。


 

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