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アルトとリリア



「実はね、僕が君に興味を持ったのは妹さんのお陰なんだ」

「リリア?」

「彼女はしょっちゅうパーティーや舞踏会に顔を出していただろう?僕も昔はそういった場によく連れて行かれてね、そうすると顔見知りというのはやっぱり出来るものなんだ。誓って言うけれど、彼女に恋愛的な意味で好意を抱いたことはないよ。ただ、いつもあまり乗り気ではなさそうで、それは僕も同じだった。僕など酒を飲めないから、本当に暇なんだよね。だからお互い、会えば話すことが増えていった。ダンスは好きだけれどじろじろと見られるのが怖い、人気の男性に誘われると同性に陰口を叩かれて困ると良く言っていて、可哀想だったな」

「リリア…そんなことがあったのね、知らなかった…」

「でも、彼女は兄と姉の話をするときはとても楽しそうでね。特に姉の…君の話を聞くのは僕も好きだったんだ。頭が良くて、美人で、働き者で…でも、いつも自分のことを後回しにしてしまうから、そこは絶対に良くないのって怒っていたよ?」

「ま、まあ、あの子ってば恥ずかしい…」

「君を想っての愚痴だよ。許してあげておくれ。ただ君も知るように僕は2年前にここに来てしまったので、リリア嬢とは会えなくなった。来たばかりの頃はまだしょっちゅう熱を出していたし、仕事に慣れるのに大変で君のこともすっかり忘れていた。久しぶりに名前を聞いたのは半年程前かな、従兄弟が結婚を考えている人がいると相談しにわざわざここまで来て、その相手が妹さんだった。その瞬間、彼女の姉のことが頭をよぎった」

「わ、私ですか?」

「未婚の姉を差し置いて妹が先に結婚するということに、顔をしかめそうなのが親族の中に何人かいてね。彼女が既に結婚していればいいけれどそうでなかった場合、ちょっと揉めそうな気がした。折角堅物の従兄弟に好きな相手が出来たのだから、本人たちの預かり知らぬところでケチを付けられたくはないし、何よりまたリリアという接点が出来てしまった以上、姉に会ってみたいとの想いが再燃した。それから少しの間、君の家のことを申し訳ないが調べたり、僕の両親に結婚の話を了承させたりと、準備が整ったのが手紙を送った頃だったんだよ」



 

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