こんなのは私じゃない
「……?あれは…」
鬱蒼とした森の中で、少し異質な木があった。他は豊かに葉を蓄えているのに、それだけは痩せ細り、枝も今にも折れてしまいそうな程か弱そうなものしかついていない。
当然葉の一枚も生えてはおらず、栄養が行き渡っていないように見える。
木にも寿命はあると本で読んだことがあるけれど、これがそうなのだろうか。でもこの姿は、枯れているのとはまた違う気がする。
不思議な木の、その下の方へと視線を移す。そこには木を囲むようにして、灰色にも似た少し気味の悪い葉たちが生えていた。
「……あった…?あ、あのっ、皆さん!こ、これは違いますか!?」
私の叫びで、手伝ってくれていた方たちが一斉に集まる。そして私が示した場所を見ると、皆驚愕していた。
「こ、これです、これ!こいつがこんなにたくさん生えているのなんて、初めて見た…!」
「お前足速いだろ!ちょっと何枚か取って急いで屋敷に届けろ!」
「わ、分かった!奥様、俺に任せて下さい、すぐに届けますから!」
「お願いします…!」
材料さえ届いてしまえば、私に出来ることはもうない。
私は薬の作り方など知らないし、後は無事を祈るだけだ。
「奥様、大丈夫ですか、私が送りましょう」
「ありがとう…」
「何人かはここに残れ、薬草が枯れないうちにどうにかしよう」
「保存方法も考えねえと、いやあしかし奥様は凄い。俺らに任せて下さって構わないのにご自分で、しかもこんなに生えている場所を見つけるだなんて!」
「いえ、私は…」
私がしたかったからしただけ。そう言葉にしようとした口を、動かすことが出来なかった。
ただでさえ寝不足の身体に、薬草探しは更に追い打ちをかけるようなものであったのかも知れない。意識が遠のいて、まともに立っていられない。
ああ、アルト様に迷惑をかけてしまう。
嫌われたくない。
強い私は、一体どこへ消えてしまったの?




