ずっと一緒にいたかった
「どうして、どうしてそんな大切なことを話してくれなかったの!じゃあリリアと過ごせるのは、もうあと少ししかないじゃない!」
「仕方ないだろう、まだ縁談の段階で正式に決まったわけではなかったのだから」
「そんなに心配しなくても、婚姻が決まったからってすぐに嫁入りするわけではないのよ?私たちだって嫁入り道具を用意しなきゃならないし、あちらはあちらで式の準備があるのだから。ブレイク家ともなると来賓の数も多そうよね、うふふ」
「式で出す食事や装飾品も必要だろうからな。当人たちだけの問題ではないぞ、招待された客は新しく衣装を拵えなければならん。私たちなど花嫁の親だからな、身につけるものは十分吟味しなければ。だからリリアの婚姻には、まだ多少の猶予がある。それで十分だろう」
「もう何十年と一緒にいたのだから、兄妹水入らずもそろそろ満足しなさいな。子供じゃないのだから」
「……っ」
この人たちにはもう、何を訴えても無駄だと感じた。
きっと私の気持ちなど分かってはもらえないし、私だってこんな両親の気持ちなど分からない。分かりたくもない。
「……カイル、任せていいかしら?」
「ええ、姉上、行って下さい。リリアが心配です」
「ありがとう、カイル」
両親のことはカイルに任せ、私はリリアの部屋へ向かった。
ノックをして声をかけると、そっと扉は開かれる。
それはいいけれど、中にいるリリアの目はうっすらと赤く染まっていた。思わずその細い身体を抱き締めると、新たな泣き声がまた生まれた。
「うっ、うっ、お、お姉様、お姉様ぁ…」
「リリア、ごめんね、ごめんなさい。あの2人を止められなかった、ごめんね…」
「いいえ、いいの、お姉様は何も悪くないの。ただ私が、お姉様やお兄様と離れたくないだけ。分かっていたわ、いつかこんな日が来るって」
それは私も同じだ。リリアが嫁ぐことは、なんなら産まれた瞬間から定められていた。
泣き声が落ち着き、ようやくまともに顔を見せてくれたリリアは、もう覚悟を決めたかのような真っ直ぐな表情をしていた。妹は私などよりも、よっぽど強いのかもしれない。
だったら私は、後はリリアの旦那様となる男性が優しく妹を愛してくれることを願うだけだ。
私とリリアはベッドに隣り合って腰掛け、お互いの手を繋いだ。