弱い私
「皆さん、お願いがあるのです…!」
「奥様!こんな早くにどうなさったんです?」
「そんな格好じゃ風邪引きますよ、家に帰られた方が…」
「風邪を引いているのはアルト様なの。もう何日も熱が下がらなくて…ランベックにいい薬草があると聞きました。もし場所をご存知ならば教えて頂きたいのです」
「アルト様が?それは大変だ」
「道理で最近顔を見せないはずだ、こちらです奥様!」
「ありがとう…!」
騒ぎを嗅ぎつけた他の者も加わり、数人で薬草を取りに向かう。
小走りで先導する彼らは麓と山の丁度境目のような緩やかな坂道を少し進んだ先で止まり、きょろきょろと辺りを見回した。
「ここですの?」
「ええ、普通の草よりも黒っぽくて、一見枯れているようにも見えるんです」
「貴重なもんでなかなか見つからないかもしれませんが…旦那様の為なら必ず探し出してみせますよ!」
「ありがとう、皆さん…!」
土に触れる作業に既に慣れていた私には、手足が汚れようと今更だ。
こんなときに思うことではないかも知れないけれど、随分逞しくなったものだ。だから探すのには何の支障もない。
問題は、これだけの人数で探していても一向に薬草が見当たらないということだ。
今後体調を崩す誰かの為に取って置く、なんてとんでもない、たった1人に使うものすら生えていない。
焦りばかりが募って、時折顔や腕に触れる木々が鬱陶しくて仕方ない。
「ない…あの、もっと上は探してみなくていいんですの?」
「それが不思議なもので、山の本当に下の方にしか生えないんですよ。山頂などではまるでないし、平地に生えていたことも、ないことはないんですが相当珍しい例で」
「そうそう。私たちもいつでも使えるように、畑や何かで栽培出来ないかどうか試してみたいんですが、何せ数が少ないので今も出来ていないんです」
「そうなの…じゃあこの山で見つからなかったら、もう…」
この村に山はこのひとつだけで、後は確か隣の村にあったはず。勿論ここにないようならばどこにだって探しに行くつもりではあるけれど、その間にアルト様の容態がどうなるか分からない。
不安で、怖くてたまらない。
アルト様に何かあったらどうしよう。
カイルやリリアの前ですら見せたことのない涙で、視界が歪む。
私はこの土地に来て愛情を与えられ、幸せだけれど確実に弱くなった。私はもう、強くなんてなれない。
強いから大丈夫だなんて、思えない。




