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休んで下さい



「どう思う?フレイ」

「素敵だと思います。ただ、その…す、少し肌を見せなければならないのが…」

「だよね。私もそう思う。フレイの肌を見ていいのは私だけだ」


滲む独占欲に胸が高鳴ってしまう。私はそっと、彼の背中に頭を触れてみた。正面から抱きつくのは、流石に恥ずかしくて私には難しい。


「アルト様、私も…アルト様になら、着ている姿を見て、欲しい、です…」

「フレイ…」

「……アルト様、お待ち下さい」

「ここで待ては酷いな、フレイ。今ほど君を抱き締めたいと思ったことはないのに…」

「だって、アルト様。肌が熱いですもの!失礼しますわ!」


うっすらと額に触れる彼の首筋が、熱を持っているのが分かった。

慌てて前に回り額に手を当てると、やはり手のひらが熱い。確信は、彼の言葉だ。


「ああ、フレイの手は冷たくて気持ち良いね…」

「私の手が冷たいのではなく、アルト様が熱いのです!」


私は慌ててランベックを呼んだ。尚も仕事に励もうとする彼を引きずるようにベッドへ押し込む強引さは、女の私では難しかったに違いない。

私は私で氷嚢を用意し、料理長に胃に優しいものと水を頼み、ココとレナに新しい毛布を持ってきてくれるよう申し付けた。


「奥様、手際がよろしいですね。助かります」

「弟と妹が熱を出したとき、よく世話をしたので慣れていただけです。あの、アルト様は大丈夫でしょうか…」

「ひとまず医者を呼ぶことにします。奥様は旦那様の傍にいて頂けますか、何かあればすぐに知らせて下さい」

「はい。分かりました」


ベッドの上で横になるアルト様は、まだ眠ってはいなかった。不満げに唇を尖らせる姿は、子供のようで少し可愛い。


「フレイ、私は大丈夫だよ。少し熱が高いだけだ」

「少し熱が高い状態は、大丈夫とは言いません」

「でもついさっきまで普通に仕事をしていたんだ。大した病じゃない」

「だったら尚更早く休んで早く治すべきです。…どうなさったのです、アルト様。らしくありませんわ」

「だってフレイ、君があのドレスを着てくれるとわくわくしていたのに、こんなのってあんまりじゃないか」

「そんなことで寝るのを嫌がっていらしたんですの?いけません、早くお休みになって。アルト様が見たいと仰るなら、治った後いつでも着ますから…」

「約束だよ、フレイ」

「ええ、約束です」


ようやく目蓋が閉じられ、一息つく。手から伝わる熱さからして、彼の言うような軽い熱だとはとても思えない。

アルト様は元々病弱だったらしいから、発病状態に多少の慣れがあるのかもしれない。

結局渋っていた割には彼はぐっすりと眠り続け、医者が顔を出してからも起きることはなかった。



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