辿り着いたのは
「とりあえず今日はデートなので、私たちはそろそろ行くよ。皆、ありがとう」
「旦那様、奥様、お気をつけて」
「奥様、疲れたら遠慮なくアルト様に甘えて下さいね」
「良ければ奥様、今度お茶会などさせて下さいな!あたしら菓子作りもなかなかのもんですから!」
「まあ、是非!」
気持ちのいい声援を受けながら、私たちは改めて2人で歩き始めた。
アルト様がまず連れて行ってくれたのは、花畑だった。赤や桃色、黄色に紫、鮮やかな色彩の海に私の目は一瞬で奪われる。
「まあ、凄い…!」
「今の時期は特に花は豊かです。ただ勝手に生えているように見えますが、村の者が種から植えて水をあげて、育てているのですよ」
「もしかして城の花もここで調達していますの?飾られているのを見るのが毎日楽しいです」
「良かった、私も花は好きで、自分で取りに来ることも良くあるんです。これも立派な村の特産品で、評判が良いんですよ」
「分かりますわ、花は綺麗に咲かせるのも育てるのも難しいですもの。手間もかかりますしね」
「分かって下さって嬉しいです。ところでフレイ、忙しいのが好きだと仰っていましたね?」
「え、ええ。動くのは好きです。は、はしたないと思われるなら、控えます…!」
「いえ、逆です」
「逆?」
「こちらへどうぞ。少し驚かせてしまうかもしれませんので、先に謝っておきます。申し訳ない。一応これでも私、ちゃんとした貴族ではありますのでご安心を…」
「……?」
次にアルト様に案内されたのは同じ畑でも野菜が育てられている場所だった。
私たちは花は勿論野菜も肉も自ら店に赴くことはほとんどなく、商人が品を売りに家まで来てくれる。だからその場で実っている光景を見たことがなかった。
畑には数人、実をもいだり土を耕している方がいたけれど、そのうちの1人はなんと執事のランベックだった。執事が畑仕事をする場面も、当然初遭遇だ。
「え、え…?ここは…」
「ここはね、売り物ではなく、我が家で賄う分の野菜を作っているんだよ。だから遠慮なく取ってくれていい」
「と、取る…?」
「ああ、こうして…」
アルト様が真っ赤に熟したトマトを引っ張り、もぐ。その艶々とした、見るからに瑞々しいそれはとても美味しそうだ。
そしてその瞬間、アルト様の手が意外に荒れている理由も分かった。こうして時折、農作業に勤しんでいるのだ。そういえば花も自ら摘むと言っていた。




