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逞しい腕



「きゃ、あ、アルト様…っ」

「とても美しいです、フレイ…私の為に着てくれたのですか?」

「は、はい…ココとレナの手を借りて…」

「なるほど、あの2人はよく街に繰り出しては服や鞄や靴を買ってきますからね。目は確かです」

「アルト様…私、似合っているでしょうか」

「似合っているどころの話ではないです。このまま画家を呼んで絵に残すか、デートなど行かずに独り占めしたいくらいです」

「わ、私には勿体ない言葉です」

「では行きましょうか。独り占めもしたいけれど、皆に見せびらかしたくもありますから。さあフレイ、私に掴まって」

「…はい」


アルト様が腕を曲げ、私に差し出してくれる。私は恐る恐る、その腕に自分の腕を絡めてみた。

アルト様は見た目だけで言えば優男風で、体型も細見ではある。けれど抱き締められたときに感じた胸板も、今正に触れている腕も、女の私にはない逞しさがある。

カイルといたときにはまるで意識しなかったのに、アルト様が相手というだけでこんなにも胸がドキドキする。恋愛は無縁だと思っていたけれど、私はただ運命の相手を見つけられていなかっただけだったに違いない。

運命の人?

そう、彼は私の運命の人。きっと、そう。




道行く人たちの視線が熱い。相変わらず立場の垣根を越えて声をかけてくる皆の中に、初めてここに着いたときに励ましてくれた女性の姿も見えて私は改めて礼を言った。


「皆さん、先日はありがとうございました。とても救われましました」

「え?私何かしました?」

「励まして下さいました。身支度の出来ていなかった私に、そのままで大丈夫だと」

「いやだ、奥様。それこそ私たち、本当に思ったことを口にしただけですわ」

「そうそう。こんな美人が旦那様に嫁いできてくれるなんて思わなかったから、あたしらも嬉しかったんですよ!」

「ありがとう…」

「アルト様、奥様大切にしなきゃ駄目ですよ!こんな辺鄙なところに来て下さるお嬢様なんて他にいないんだから!」

「そうなんだよ。しかも大変なことに、フレイは美しいだけではなくとても頭も良いんだ。捨てられないように頑張らないといけないな」

「あ、アルト様っ…」


自慢するように話す旦那様が恥ずかしい。逃げ場のない私はただ顔を赤くして、俯くしかない。



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