昼食を共に
「フレイ様…!そのドレス、とてもよくお似合いですよ。さあ、お疲れでしたでしょう?昼食を取って、ゆっくり休んで下さい。酔いが残っているかもしれませんので、食べられるだけで構いません」
「あ、あの、私はどこに座れば…」
「そちらにどうぞ、フレイ様」
「そ、そんな、アルトベル様を差し置いて私などがそこに座るわけには…」
「フレイ様、私の頼みを聞いてはくれないでしょうか…」
美青年であるはずのアルトベル様が、なんだか怒られた犬のような顔をして私を見上げる。
失礼は出来ない、けれど美しい彼にこんな顔はさせられない。いきなり突きつけられた選択に戸惑い座った途端怒られるのも覚悟しつつ、私は言われるがまま上座へと腰を下ろした。
だけどアルトベル様はにこにこと嬉しそうに微笑んだだけで、文句の一つも彼の口から零れることはなかった。テーブルの上に置かれた、たくさんの野菜の入ったスープからは、空腹を擽る香りが漂ってくる。
「毒見のせいで少し冷めてしまったけれど、どうか食べて欲しいのです。この野菜たちはね、村で作ったものだから新鮮なんですよ。自分の領地を自慢するようだけれど、ここらの食べ物は本当に美味しいのです」
「ええ、分かります。色が鮮やかで、香りもとても良いですもの」
「分かってくれますか?嬉しいな。さ、一緒に食べましょう」
アルトベル様がスプーンを手に取りスープを口に含んだのを見て、私も恐る恐る料理に手をつける。ほくほくのじゃがいも、大きくて柔らかい人参、くたくたで甘い玉ねぎ。
贅沢な品は入っていないのにそのすべてが美味しくて、そして優しさまでもが身に沁みた。この野菜からは、村の方が大切に作ったのだという想いが伝わる。
「美味しい…!あ、アルトベル様、とても美味しいです!」
「気に入ってくれて良かった。ああそうだフレイ様、私のことはアルトと呼んでくれませんか。私と親しい者は皆そう呼ぶのです」
「え、ええ、勿論…アルト様…でよろしいですか…?」
「ありがとう、フレイ様。あ、そういえば私は勝手に貴女のことをフレイと呼んでしまっていますね。よろしかったでしょうか?」
「ええ、私のことはどうぞお好きなように…、なんなら呼び捨てて下さった方が落ち着きますわ」
「ではフレイと…ううん、本人の許可を得て呼ぶとなんだか少し照れてしまうな…」
話をしながら、ちらちらと周囲を窺う。見た目と同じように、中もまた質素だった。




