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私の旦那様?



「アルト様、いきなり女性に抱き付く人がありますか!」

「そうですよ!こういうときはランベックさんを呼んで、こっそりお風呂に入ってもらったりお化粧を直したりさせてから対面するものです!奥様に恥をかかせてどうするんです!」

「いや、だって、恥などどこにもないのに…どんな姿だってフレイ様は綺麗なのだから…」

「アルト様のお気持ちはどうでもいいんです、奥様の不安を取り除いて差し上げて下さいと言っているんです!」

「………申し訳ない、フレイ様。私は色々と間違えたようです。貴女とようやく会えたことで舞い上がってしまっていました…許して頂けるでしょうか?」


そっと放された身体を、慌てて後ろに向ける。

そこにいたのはさらさらとした豊かな黒髪と、柔らかく薄い灰色の目。

高い背とすらりと伸びた手足、穏やかな微笑み。

申し訳ないけれどこんな辺境でのんびり暮らすよりも、パーティーで女性の視線を浴びている方が余程似合いそうな殿方だった。

まさか、この方がアルトベル様?私の旦那様になって下さるお方だというの?

何も答えられないままこくこくと頷く私を今度は正面から再び抱き締めた彼は、今度こそ周囲の女性に引き剥がされていた。






アルトベル様の好意により、私は話もそこそこに無事入浴を済ませていた。そしてメイドたちに髪を整えられ、化粧も施される。数は少ないけれど上質だと分かる化粧品の数々は、私の肌を滑るように流れた。


「奥様、準備が整われたようで」

「あ、はい、ありがとうございました。助かりました…」


化粧を済ませ部屋から出た私を、この家の唯一の執事であるランベックが出迎えてくれた。アルトベル様よりも更に長身で、仕事が出来ると雰囲気から醸し出している方だ。

差し出されるまま身につけてしまった真っ白なドレスは、一見派手ではないものの花の刺繍が裾や襟、袖に細かく散りばめられていて繊細な美しさがあった。

それに軽くて動きやすい。これならいくらでも働けそうだと、令嬢らしからぬことを思う。

連れられたのは食堂で、既に食事が運ばれていた。テーブルの上座ではなく、その横を陣取っているアルトベル様に流石に面食らってしまう。



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