第1章-6 お見舞いについて
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不幸中の幸いだった。
あんだけの騒ぎだった割に被害者は2人で済んだからな。
すぐ気づいてくれた子にお礼しとかないとな。
「おいセーラ!お前ルール破ったんだからな。
まずゴメンなさいからだぞ」
「だってお芋が、傷んでるなんて知らなかったんだモン。
プンプンっ」
セーラうぜぇー……。
頬っぺたふくらましてんじゃねぇよ。
歳考えろっつんだよ。
「ババァ!
語尾に可愛く、モン♪とかつけてんじゃねえっ!」
「えっ?!
アルちゃんが可愛い♪って言ってくれた!
あはっ、嬉しいっ!
ね、もっかいゆってぇ?」
「いや、言ってねーし。
意味ちげぇし。
まずモンいうのやめろし。
あと自分でプンプンとか言ってんなし。
つか、ウルセェ黙れ、処すぞコラ!」
「アルちゃんは、なんでそんな酷いことばっか言うの?
アタシ頑張ってお料理しただけだよぅ?」
「答えは3つだ。
まず1つ目。
お前がルールを破った。
はい2つ目。
その結果がお腹壊した被害者2名。
この時点で罪状は、ルール破りプラス傷害罪。
つまり、これはお前が悪いことをしたってことだ。
それから3つ目。
頑張ったから許されるとかナイ。
動機と過程は良くても結果がクソとか、もうね。
勘違いも甚だしい。
おととい来やがれってんだよ。
評価されるのは、過程×結果だけだから。
動機は査定に含まれませんからっ、残念!
動機が良ければ何でも許されると思ってる勘違い野郎とか。
バカぢゃね?切りっ!!」
「アルちゃんが言うこと、いつも難しくてよくわかんない。
つまりアタシが可愛いってことでしょ?
いいよ?
ハグしてあげるから、こっちおいで♪」
「……いや、うん、もういいわ、わかったから。
とりあえずお腹壊しちゃた人にはゴメンなさいしような?
俺も一緒に謝ってやるから、な?
いいか?
手土産持ったか?
よし、じゃ被害者のお見舞い行くぞ」
「アルちゃん(人´∀`)アリガトー♪
だから好き。
ハグしてあげるね」
……うん、まぁいいか。
仮初の親子関係とはいえ、もう長い付き合いだ。
言ってもわからんのはもう諦めてるから、さ……
うん、だってセーラのハグ気持ちいいし、暖っかいし、なんか良い匂いだし。
いやさ?
あのさ、胸がさ、爆な胸がさ?
ぎゅうぎゅう押し付けられちゃってさ?!
いやあ、なんつーか?
ねぇ!
わかるよねぇっ!!
俺もオトコノコだからさっ!
すでに前かがみになっちゃって困るんだけど……
ンだよ?!
このままじゃ外出歩けねーじゃんかぁ……
いいぞセーラもっとやれ。
はぁ……ダメなんだよなぁ。
セーラにハグされるとなーんか全部許しちゃってんだよなぁ。
ほらあれだ。
癒されるっつーの?
やっぱ俺は母親の愛情ってのに飢えてたのかねぇ?
この己の弱さ、いかんともしがたいんだけども。
見ないふりして否定しつづけるのもねぇ。
なんかガキっぽいていうかさ……
俺には責任がある。
これは俺の矜持だ、ただの下らねぇ意地だ。
実際何の腹の足しにもなりゃしねぇし、他人からみたらゴミみたいなもんかも知れねぇな。
だが、俺が人がましく生きていく上で、決してないがしろにしちゃなんねぇ大事な背骨だ。
これを無くしちまえば、二度ともとには戻らない。
そこらの野良犬みてぇに、義理も恩も屁とも思わねぇクズに成り下がるだろう。
リアのことしっかり守ってやれるように、早く強くなんなきゃいけねぇのになぁ。
まだまだ情けねぇや。