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57 女の一生

 今日も今日とて、訴訟の書類やら、ゴロツキどもの判決やらに追われてお仕事お仕事……


誰かコピー〇ボットでも作ってくんない?


俺、社畜する為に転生した訳じゃないんだけど?



「副長!ふくちょーっ!!

 事件です!事件ですよぉー!!」


「ンだよ?

 こちとら、ションベンしてる暇もねぇのよ?

 ちったぁ、自分らで解決してくんねぇかなー。

 いい加減、過労死するっつーの……」



 俺の執務室に飛び込んできたのは、神聖組紅一点?


唯一の女性隊員、キリア。


こっちの俺の幼馴染の一人である。



「副長?

 いくらなんでも、女の子の前でそれはないわー」


「うるせぇよ、お前にゃこの程度でも言葉としちゃー、上等なほうだろ?」


「うっわー……

 幻滅……スラムの王子様の名が泣くよ?」


「なんだよ、そのふざけた二つ名は?

 褒めてんのか、貶してんのかわかんねーぞ」


「副長はスラムの乙女たちの期待の星なんだから、もっとイメージ大事にして!」

 

「うるせぇよ、とっとと要件いえよ」


「なんか、ボクの扱い雑じゃない?」


「なにをいまさらだよ」



 こいつとは、物心ついた頃からの仲だ。


気の置けないってやつだ、いまさら取り繕うことなんかありゃしない。


それに、キリアにはなんだか異性を感じなかったのだ。


この年になってからもだ。


つまりはリア以上に兄弟のように感じていたんだ。


戦友っつーか?


 

 リアは俺にとって保護してやるべき存在だったからなー。


お姫様みたいに思ってる部分があるんだよ。


お姫様を守る騎士を自認してるっつーか、これ、男の浪漫ってやつか?


ま、女から見たらくっだらねー感傷程度のモンだろうけどな。



「ねぇアル。

 キミってボクのこと男だと思ってないかい?」


「あ?

 別にどっちだって構やしねぇだろ。

 つか今更だろ?

 俺とお前の仲だぜ?

 つか、職務中は副長って呼べっつってんだろがっ!

 このタコっ!」


「……そ、そっかー……

 も、もしかして?

 ボクってアルにとって特別な存在なのかなー?」

 

「お前は、ヴェ〇タースオリジナルかよ?

 つか、副長な!

 あと、はよ要件な!」


「はいはい。

 隊員の不正。

 金銭授与。

 タルボット商会。

 以上。」


「おし、出るぞ!」


「二人だけでっ?!」


「十分だろ?」


「どこまでやるの?

 カチコミ?」


「気がはえーよ!

 どんだけバトルジャンキーなの?

 お前は?

 まずは、現状の詳細な確認だろ?

 二人だけで十分だ。

 時間が惜しい、出るぞ」


「おっけー」


「なんか気がぬける返事だなー。

 つか、お前な。

 コレがまたガセネタだったら……わかってんだろーな?

 一か月は執務室に監禁して、俺の代わりに書類仕事やらせるからな!」


「えーーーーーーーっ!!!

 それはないよー!

 ボク真面目に仕事してるだけじゃん?!」


「お前の仕事の精度が低いからだろ?

 文句があるなら結果で示せよな」



 キリアは女だてらに、男所帯の衛兵団改め神聖組に入団してきた。


いつ、命を落としてもおかしくない物騒な職場だ。


それなりの覚悟はあるんだろうさ。


どうせスラムにいたって、女が稼げる仕事は多くはない。


通りで立ちんぼ(街娼)する前に、早めに良い旦那を見つけるのが乙女たちの最善策といっていい。


もしくは、少しでも程度の良い女郎屋でも入って太客を捕まえるか。


キリアはそんな生き方に向いていなかったのだろう。



 別に器量が悪い訳じゃない。


中性的な顔立ちで、あまり女性を意識させないってだけだ。


背も俺と変わらないから、女としちゃ高いほうか。


残念ながら洗濯板だから、なおさら男に見えちまうのもあるかもな。


髪は長い方だが、いっつも一つにまとめて後ろに流してるし、化粧っけはねぇしな。


俺と同じ、黒髪に黒目、エキゾチックな風情のある耽美な美少年にも見えるからな。


だからか、こいつとつるんでるとキリアばっかり女にモテるから自信なくすんだよなー……


別にひがんじゃいねぇよ?!



 キリアとはガキの頃から一緒にバカやった。


悪ガキどもと喧嘩して、一緒に袋叩きにされたり。


ガキ大将を闇討ちしてリベンジして、不良グループのリーダーに担ぎ上げられたり。


悪ガキどもを食わせてやるために、仕事探して頭下げて回ったりと。


何をするにしても、コイツが一緒だった。


まぁ、俺にとって一番信頼できる親友ってわけだ。



 なんせ、キリアは頭がいい。


正直俺も、頭じゃこいつに勝てる気がしない。


天才ってのはまさにコイツのことだろう。


ただ、こいつも頭は抜群に切れるが、人の気持ちを読めない奴だ。


頭が良すぎるせいで、凡人の気持ちが理解できないのかもな。


その辺は俺が補えたわけだ、人の気持ちを読むのは何より得意だったからな。


糞見てぇなオトナ共の気持ちを正確に読み取れなきゃ、生存すらも危うかったからな。


前世も、現世も。


キリアの足りないものを、俺が補い合う形で相性が良かったんだ。


比翼連理とでも言うべきか、そんなしっくりくる相手だった。


最近ようやく気づいちまったのは、そんな親友が女だったってことだ。



 いつまでも、同じ道を歩んではいけない。


否応なく、男と女という違いが目の前にあって。


いつしか俺たちは疎遠になってたってわけだ。


特に俺が司祭様の下で仕事するようになってからはな。



 ある時、物騒なこの神聖組に応募してきたこいつに、俺は正直どう対応したもんか悩んだけどもな。


キリアは必死に喰らいついてきた。


リズの地獄の訓練(シゴキ)にも耐えきった。


俺もそうだが、キリアは体格に恵まれているわけではない。


もう少し成長する余地はあるだろうが、その華奢な身体でむくつけき男どもの中で良く頑張っている。


剣の腕も、隊の中でも中ぐらいの位置にはあるだろう。


実際、俺とそんなに腕はかわらない。


並々ならぬ努力ではあると思う。



 だがこの物騒な職場で擦り切れていくキリアを見るのは、俺には我慢できないだろう。


職権濫用は責任者の特権だと、胸を張って言える俺は適材適所という建前のもとに。


キリアを諜報担当者として特別任務を与えていた。


少しでも、キリアを荒事から遠ざけて置きたかったからだ。


頭の良いキリアのことだ、配置としては悪くないと思っていたんだよ。


実際な。


まぁ、結果は何とも言えなかったんだけどな……

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