第4章-8 盗られてたまるか
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さて、喫緊の課題がある。
そう辺境伯の脅威である。
「コッドナー司祭よ、兄は痺れを切らしたようだぞ。
今ならまだ間に合う、大人しく恭順するよう商人組合に掛け合ってくれないか?」
「それは無駄でしょうな」
さて、楽しい楽しいお食事会のお相手はジョン・タルボット殿でした。
こいつオレから賄賂受け取っておいて何言ってんだ?
自分の立場わかってんのか?
「無駄だと?
命が惜しくないのかっ?!」
「そりゃ、どちらでも変わりませんからねぇ」
「はあ?
気は確かか?
司祭!」
「残念ながら」
「大人しく辺境伯家の代官を置き、税を納めるだけではないか!
命の代償としては安いものだろうがっ!」
「いえいえ、金に比べれば命など」
「お前は何を言っているのだっ!
死ねば金を稼ぐどころではないだろうが!」
「いえ、稼いだ金を持っていかれるくらいなら死んだ方がマシ、なんて商人はザラですよ。
なんせ、ここはブリングハムですからな」
「話にならん!」
「奇遇ですな。
私もですよ。
もしかすると私達は気が合うのかもしれませんな!
はっはっはー」
「貴様、俺を侮辱するかっ!」
「滅相もないことです」
「はっ!
貴様、覚悟しておけよ!」
激しく音を立てて椅子から立ち上がった。
ふんっ、無駄な時間だったな。
もはや、コイツに用は無い。
とっとと退場してもらうか。
何の気概もない腑抜けだったな。
兄貴が怖くて、質の悪い伝言ゲームしかできないか?
こいつは本当に己の立場をわかっているのだろうか?
既に兄を裏切り、商人組合に加担していたという事実を。
ブリングハムの食料自給率の低さは、今までは辺境伯として付け入る隙だったのだ。
そこをオレが荘園を開拓することで解決した。
コイツは賄賂を受け取り、オレの計に加担し街への食料供給体制の構築に一枚噛んでいる。
しっかりと賄賂とも言うべき中間マージンを受け取り、率先してブリングハムの食料自給率向上に貢献していたのだ。
そして、それは辺境伯の小麦輸出を妨げて、ただでさえ厳しい辺境伯家の財政を圧迫したはずだ。
当然ながら、辺境伯家に出入りの商人から伯に情報は伝えられている。
まあ、オレが心配してやる程の義理もないな。
しかし期待外れな奴だ。
もう少し野心のある男かと思ったのだがな!
結局は、兄貴が怖くて仕方ないか?
ならば中途半端に欲をかかず、兄に忠実であれば良かったものを。
多少の気概がある男なら、埋伏の毒にでも仕立て上げてやるつもりだったが……
もちろん使い捨てに等しないさ、オレはロマルフとは違う。
成果さえ出せば見返りも与えたのだがな。
そうすれば、早死にせずに済んだろうに。
どちらにしろ、あの狂犬は裏切り者を許しはしないだろうさ。
祈ってやるさ。
お前の冥福を。
ここはオレの街だ、彼女に捧げるオレの祈りそのものだ。
盗られてたまるかってんだ!




