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第4章-7 スラムの麒麟児

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 相も変わらず聖女様の力は驚嘆すべきものだった。


アルの助言を取り入れ、聖女様の奇跡には入念な祈りと精神集中が必要であり、おいそれと奇跡を具現するわけにいかないと吹いてまわらせた。


おかげで、現在癒しの奇跡を望む者たちの順番待ちの行列だ。



 まず、最初の聖女案件であるハウエル・バーナードは娘の快復の礼として白金貨を寄こしてきた。


つまりは金貨100枚。


そこらの商人では逆立ちしたって出せない金額だ。



 どれだけ売り上げが上がっていようとも、資金繰りに詰まれば商人は一気に信用を無くす。


その為、商人は資金繰りに詰まらないように、そこそこの金を動かさずに貯め込んでいるものである。


つまりハウエルは、資金繰りの為の資金を確保した上で白金貨1枚を寄こしたのだ。


まさに驚嘆すべき資金力である。


流石はブリングハム随一の商人、なかなかのものだ。


奇跡の価値を値上げして、商会の名も上げて、さらには教会にも恩を売っておく、か。


相変わらず抜け目がないな。



 次に聖女様の恩恵に与かるには、資金力だけでは足りないこととした。


教会の荘園、リードニウムの発展に寄与した者や、教会の権威を高める行いをした者を優先することにしたのだ。


まぁ、これが非常に美味しかった。


金はじゃんじゃん入るわ、教会の権威、というか主にオレのだが、ブリングハムでのオレの発言権が更に高まるわで、ご機嫌伺の商人達もわんさか押し寄せてきた。


これはまぁ、勘違いもするよなぁ、と空恐ろしい気持ちになったよ。



 とにかく金はいくらあっても邪魔にはならない、むしろ足りないくらいだった。


まずはリードニウム街の中心に、教会の新本部を建設する事業だ。


ここは行商人達の宿替わりにもなるし、市場に出店する者達の管理業務も行う。


その他の様々な機能も有する必要があり、当然建物としてもそれなりの規模が必要であった。


さらには、最悪を想定して篭城戦ができるよう設計させてあるしな。


金はいくらあっても足りない。


まぁ、これは聖女様の奇跡を餌に商人達に人と金を工面させることができた。


ちょっとだけ商人達の競争意識をくすぐってやるだけで、どいつもこいつも湯水のごとく金を出してきてくれる。


どこの商会の名前を冠した聖堂とか、庭園とか、しまいには馬小屋までな。


アル曰く、スポンサー制度を取り入れましたとかなんとか。


御蔭で大貴族の城かと見紛う程の、壮麗な教会が出来上がりそうだ。



 他にもアルの構想した北リードニウム街の区画整備があり、城壁ともいうべき外壁作り、外堀も掘って水を引き入れるというものもあった。


見張りだけでなく防衛用として機能する壁なので、通路にもなるし、兵舎まであるわで、これもまた大事業だ。


そして次にアルは、面白いことに教会主導で統一規格なる概念を導入しようと言い出したのだ。



 奴曰く、まずは馬車から始めよとのこと。


自由市場を区画するにあたって、出店の土地を長方形のマス状に小分けしていた。


1マス分の荷車を設計し、この規格の馬車や荷車しか出店させないという。


もちろん1マスに満たない荷しか取り扱わない小口の行商達には、この義務を課さない。


アルは弱者優遇し、新規参入のハードルを下げたいそうだ。


そして貧乏な行商でも取り扱いしやすい、縦横2m×1mの荷車が1単位として採用された。


豪商クラスになると、この1単位の荷車を連結させて出店できるようにも手配できるらしい。



 自由市場へは無料で出店できるので、直接教会の利益になるわけではない。


しかしだ、流通の規格を主導し強制することで、教会は市場への強い影響力を保持できるということなのだ。


なかなかに奇抜なことを考える奴だ。


正直、オレも全て理解できているかというと怪しいものなのである。



 教会にとって規格統一の恩恵のなかでも直接の利益となるのは、教会お墨付きのマークの入ったものしか許可しないということだ。


先ほどの、馬車についても誰が作っても良いが教会の認定マークを受けなさいという義務を課す。


この認定の儀の手数料で儲けるわけだな。


うっわ、これボロ過ぎだろ?


元手かかってないぞ?!


ちょっとばっかし、オレがそれっぽく洗礼施すだけとか……


あいつ金儲けに関しては悪魔的才能の持ち主だな……


そう考えると、オレはこのちょっとヤバすぎる奴に世に出る機会をあたえてしまったのかもしれんな。

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