第4章-5 只より高いものはない
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リアの癒しの力は予想以上のものだった。
商人組合からの問い合わせが引きも切らない。
聖女様の名を冠した治療院の設立話があとを立たない。
これは早くに大聖堂へなしをつけとおくか……
あまり、奴には借りを作りたくはないが仕方ないだろう。
次期枢機卿となられる、ロマルフ大司教殿へ手紙を書いておくとしよう。
一週間後ロマルフ卿から、はやくも返事が来ていた。
多忙な中、随分と仕事の早いことだ。
『我が親愛なる朋友、リード君へ
前略
相変わらず君は、なかなかに面白いことになってるね?
急ぎの用件みたいだね、手短にいこう。
聖女という言葉は教会には非常に重いんだよ。
わかるかい?
かつて彼女達や彼等は教会への反逆者だったんだ。
表沙汰にはできないけどね。
その為に、色んな伝承が隠蔽されたり、改竄されたりしてるんだよ?
ああ、これ極秘事項だからね?
漏れたらヤバいから、取り扱い気をつけてね?
なお、この手紙は自動的に消滅しないから、しっかり処分してくれよ?
やったね?
これで僕たち一蓮托生だね!
リアという子は、今は君の手元に置いて貰った方がこちらも助かるかな。
猫の首に鈴を付ける勇者様として、君のことも売り込んどいたげるから、安心してね!
派手にやっても大丈夫!
じゃんじゃん神の奇跡を見せつけてやりな!
教会の名と、君の名をしっかり売っておきな。
今が売り時だよ、機を逃すなよ。
何かあれば、僕がなんとかしたげるからさ。
辺境伯が邪魔してくるだろうから、その時はやっちゃっていいよ。
待て、と言っても全然言うこときかない駄犬だからね。
君がしっかり、しつけておくように。
ああ、そうだね。
ただ、これだけはダメだよ。
彼等を絶対に野放しにするな。
いいかい、これだけは忘れないでくれよ?
じゃあ、君の健闘を祈る。
草々』
「まあ、話がはやくて助かるのはいいが……
相変わらず、無茶を言うよ……」
あのガメツイ奴が何の見返りの要求も無しとは……恐ろしいことだ。
つまり、それだけ難易度の高い案件だということだ。
「聖女とは、オレが思っていた以上に厄介だったのかよ……」
今すぐあの兄弟を放り出し、知らん顔したい欲求にかられる。
奴に知らせしまったからには、今更できやしないが。
教会の闇、それも門外不出の超極秘事項をオレに教えて、抜き差しならない状況に追い込むわ、辺境伯は抑えられんから勝手にやれ、つまりお前がなんとかせぇよ、だとか……
随分と好き勝手言ってくれるものよ。
果ては、いつ着火するかもわからん火薬庫抱えて火遊びを楽しめだぁ?
はぁ、だからアイツに頼るのは嫌なんだ。
全く只より高いものはないってことだよ。




