第3章-18 再びチートスキルの問題
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「なあリア、俺達も商売を始めるとしようか」
午後のティータイムを楽しみながら、リアと雑談をする。
これが最近の俺の幸せの一つだ。
ようやくこの街での聖女活動も、立ち上げ当初の繁忙期を抜けたからな。
金もたんまり稼がせて貰った。
「いいね!
2人の共同作業だね?!
じゃ、ワタシは何したらいいの?」
「ああリアは俺の隣で笑顔を振り撒いてくれ」
「そんなんでいいの?」
「それが大事なんだよ」
まだ聖女様の件については根回しが済んでいない。
あまり、大っぴらにはできない。
が、こいつを利用しないという手もない。
使える物は何でも使わないと後悔するぜ。
「先ずは馬、馬車、荷台が要るな」
「ハウエルさんに頼めばいーんじゃない?」
確かにハウエル商会は石切場からの運搬が多いこともあって、その手のことには強い。
が、俺には少し思いついたことがあった。
「リズ頼みがある。
馬車や荷台を作れる商会と渡りをつけたい。
あと、取り決めたいことがあるから組合を通して話をつけたい」
「畏まりました」
最近のリズは俺の秘書みたいな立ち位置になっていた。
もとはお目付役なわけだからな、おかしくはないのか?
あと御嬢様然とした見た目で騙されるが、こうみえてリズは剣を嗜むようだ。
とんだお転婆お嬢様だが、これが滅法強らしい。
怒らせないようにしないとな。
「あとは、目玉商品が必要だな。
なんせ信頼の聖女様ブランドだからな。
利幅の小さい商売じゃなく、高額商品で勝負したいな」
「え?
そんなの何でも良くない?
みんな聖遺物とか大好きなんだからさー。
聖女関連でなんでもいけるじゃん!
何なら聖女の腰布とか売り出したら?
ある意味色んなマニアが食いつくんじゃない?!」
「コラッ!
ワルイ顔になってるぞ!
自重しなさい」
「えー、でも1番楽だよ?」
そうなんだ、それは悪い考えじゃない。
むしろ商売としてはめちゃくちゃ美味しい。
故に乱用するべきではない。
俺の考えはこうだ。
まず元手がいる。
その資金は聖女様グッズで賄うのはどうだ?
グッズの販売数は限りなく制限して、プレミア感を維持する。
なんなら、名誉授与みたいなもんで何か社会的事業や、俺達に寄与する事を為した者にだけ与えられるとかな?
これ、いけてんじゃねーか?
経費がかからずに簡単に価値を生み出してまう。
しかも、権威を与えるのは俺達だ。
まさに金を産む聖女様の腰布ってな。
しかし、こいつをはかなり関係各所に喧嘩売る案件だな。
大聖堂辺りが騙ってないだろう。
まだ取扱検討事項だな。
でもなぁ、こっそりやる分には良くないか?
この街は今、リードニウム自由特区建設の特需にわいている。
商人達はみな血まなこになって利権に食らいつこうと躍起になっている。
そういや、石材の供給が追いついてなくて道路整備が思うように進んでいなかった。
「やっぱりコンクリートとアスファルトが欲しいな。
あとはガラスかー。
さすがに石油掘るのは難しいか……
石灰石とか火山灰くらいなら輸入できっかな?」
「そだねー。
やっぱりガタガタの道だとお尻が痛くてねー。
馬車なんか乗ってらんないよねー」
「いやまあ、それはそうだけどもな。
いま、このままじゃ街の近くの森なんかがなくなっちゃいそーだしな」
「うん?
どゆこと?」
この町は金があるせいか道路ならば石畳、建造物なら煉瓦造りが多い。
しかし、石材は運搬に時間と金がかかる。
煉瓦なら簡単だ。
ただ焼けばいい、粘土層のある地形ならこの街周辺には多い。
土地の造成も行っているから一石二鳥だ。
だから道路も煉瓦で舗装なんてのはよくあるのだ。
しかも、煉瓦造りなら昔からの工房が沢山あり、歴史ある工房から一人立ちした弟子も多く煉瓦職人にはことかかない。
なんせ、ずっと製法も変わってないしな。
そして、この街の建築ラッシュだ。
ただでさえ少ないブリングハム付近の森林が、煉瓦を焼く薪を作る為に大量に消費されてしまう。
森は綺麗な水源を保つためには必須だ。
さらには、貴重な食料、毛皮、動物の皮などの資源の元でもある。
猟師の仕事もなくなっちまうしな。
「植林事業でもすっかなー?
儲かんないんだけどなぁ……」
「お兄ちゃんはさー、どうしたいの?」
「誰にも邪魔されずに、穏やかに暮らしたい」
「お爺さんかっ?!」
「似たようなもんだろ?
リアが居て、シーナやセーラもいてさ。
食うに困る心配もなくて。
一日の終わりは暖かいベッドで眠れて。
今日と同じ明日がやってくるって、無条件に信じていられるのならな。
俺は、ただそれだけでいいよ。
他に何もいらないさ」
「お兄ちゃん……」
そう、俺が欲しいのは。
俺達が願っているのはありふれた生活ができる幸せ、ただそれだけなんだ。
神様なんか信じていない俺達の為には。
『スキル 心願成就 が発動しました』
おおおおいっ!
いきなり、なんだぁ?!
「リアっ!
今、チートスキル発動したかもっ?!」
「おおっ!
やったねお兄ちゃん!
で、何が起こるの?」
「わかんねっ!」
「なんじゃそりゃ?
意味わかんないよ!」
俺だってわかんねーよ!




