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第3章-16 利権の問題

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「アル、成果をだしているようだな。

 君の働きに感謝しよう。

 正直、期待していた以上だよ」



 リード司祭様からの呼び出しを受け、リアと2人執務室にきていた。



「自由市場の設置許可を頂きありがとうございました。

 つきましては、これが自由市場特区の町割りの図面になります」



 俺は高級紙を繋ぎ合わせた図面を提出した。


自由市場特区はブリングハムから北上する大街道沿いに位置する。



 このまま北上すれば、タルボット辺境伯の領地へと繋がる。


辺境伯も、まさかいきなり武力で制圧、などという野蛮なことはしないと思うが懸念はある。



 なんせ辺境伯の領地内には、悪名高き暗闇の森がある。


この辺境伯の領内の北部一帯を占めるこの森には、魔獣や亜人といった御伽噺にしか存在しないような異形の者達が徘徊しているという。

 


 辺境伯とは、そもそもこの異業の輩への対策の為に設置された貴族だ。


当然のことながら武張った家柄であるし、そうでなければ改易されている。


しかも、現当主様は大分猪突猛進な性格であらせられるらしい。


そして何より大の戦好きときている。



 タルボット家からの要請としては、つまり戦費が足りんから矢銭を寄越せということなのだ。


いや最近ではもっとひどいな。


ブリングハムの地はもともとタルボット家の領地だから、代官を置かせろ、滞納している税金払えだとさ。



 正直、遠くない内に一戦交えることになると思っている。


なぜなら、現当主アーサー・タルボットが辺境伯を承継してからずっと、勝算の無いままに絶え間ない暗闇の森の開拓計画を推し進めている。


結果、辺境伯家の財政は悪化の一途をたどっているからだ。



 何が何でも金が欲しい、そうでなければ辺境伯の本分を全うできない。


何よりこれだけの資本を投下した状態で開拓計画の結果がほとんどでてない。


今更開拓計画の中止を決めるのは難しいだろう。



 ま、しかしなぁ、賢明なリーダーならば損切りの打撃が如何程のものであろうとも、当座の見返りすらない状態が続くのならば、決断する必要があるのにな。



 おそらくタルボット家は没落する。


このブリングハムを手に入れられなければ、そう遠くない未来に。


今は辺境伯の領地収入は、いわば動脈から出血しているような状態だ。


止血する気がない以上、ブリングハムという輸血を早急に欲している。



 ボヤボヤしている暇はない。


俺も出来うる限りの手を打ち、少なからず恩義のあるこの街を守ろう。



 司祭様の名を関したリードニウム計画の肝は教会総本山大聖堂へのアピールであり、また牽制でもある。


まずは自由市場では誰にでも商売をする権利を与えることにより流通の発展を促す。


更には各地で困窮した移民、流民、難民を受け入れて人口の増加を図る。


そして人口増加に伴って街は一大消費地としての規模を拡大していく。


全てが循環していくことにより街の経済力を上げる。


それだけでなく、今後の街の防衛力をも底上げしていくつもりである。



 戦力としては、他都市のギルドと連携し冒険者や傭兵を速やかに手配できる仕組み作り。


常設警備隊の設置、臨時には義勇兵徴収制度などを計画している。



 また、商人組合の人脈、商売上の繋がりを利用しての外交力、交渉力強化を図り、大聖堂への影響力を増すことも意図していた。



 大聖堂には辺境伯家への牽制を期待している。


なんせ俺の計画が上手くいけば、ブリングハムの衛星都市とも言えるリードニウム街ができあがる。


ブリングハムとの相乗効果で発展を遂げれば、教会への寄進が増える。


当然、総本山である大聖堂への付け届けも増える。


商売のネットワークが広がって有力商会や貴族との繋がりも増える。


結果、俺の理想とするリードニウムは辺境伯程度がおいそれと手を出せないような、半ば独立都市としての在り方が可能となる。


それこそが俺の望みだった。



「自由市場特区ですが、ブリングハムを北上する大街道を特区の中心に据えて計画しました。

 ブリングハムの街の北辺に接し、ブリングハムの街の外に半円で飛び出すような形の立地です」



「北かね?

 教会の荘園である農園は街の南だ。

 物流の点では非効率ではないのか?」


「はい。

 それについては考えがあります。

 1つは商人組合への義理立てです。

 農産物の販売を担当する商会を中抜きして売買できないよう、収穫したものは全て一度ブリングハム内へ持ち込むことを想定しています」


「そうだな。

 理は通っているな。

 しかし君のことだ。

 意図はそれだけではないのだろう?」


「はい、あと2つ程。

 まず、将来商人組合によってブリングハムに通行税が課されることを想定しました。

 東西と南の街道に連結する街の入り口で課税されると想定しての対策です。

 課税対策として、街の北に飛び出した形で自由市場特区"リードニウム街"を建設する。

 そうすると、街の北口の税収はリードニウムを通った人、物からのみとることになります」


「ブリングハムの分け前をピンハネするのか?」


「司祭様、貴方にはそんな下賤な言葉は似合いませんよ?」


「ふんっ。

 侵害だな、オレなぞ所詮は貧乏貴族の三男風情だ。

 多少の目端が効いたおかげで、今の人がましい立場にいるだけにすぎんさ」


「あ、デレた?!

 くっ〜……

 こんな豚まで虜にするとはっ?!

 お兄ちゃんの王子様スキルチートすぎだよ。

 ああでもっ、妄想がはかどるっ!」



 なんか隣でリアがぶつぶつ言いながらクネクネしてる。


ちょっと危ないんだよなー、この娘。


まだ、矯正できるかな?


駄目だ、腐ってやがる……



 しかし最近、司祭様は俺にぶっちゃけてくるようになった。


少しは信用してくれたのかね?


まあ、どっちかっつーとアレか?


共犯関係の気やすさってところかな。



「で、ですね。

 自由市場で想定しているのは小口の行商人、近所の住人達、食うに困っている流民や各地の水呑百姓達などです。

 少ない資産を使って、今より豊かになる為に事業を始めようとする偉大な勇者達です。

 彼らを応援し、彼らの成長にのっかり、リードニウム全体が発展していく腹積りです。

 その為にはショバ代払えだの、みかじめ料はどうした?

 だのといった邪魔なものは一切取っ払ってやりたいんですよ。

 司祭様、考えてもみて下さい!

 彼らは今日食べるパンにさえも事欠く有様なんですよ?!

 爪に火を灯すようにしてこさえた虎の子の銅貨をかき集めて、この街にやってくるはずなんです。

 食うに困れば父母を捨て、腹が減ったと泣く子らの食事すら減らして、子を産んで間もない妻でさえ野良仕事に出して、そうしてまでも明日こそはより豊かになろうとする。

 今日のリスクを背負ってでも、豊かな明日を手にするべく勝負にくる彼ら。

 そんな彼らの為にこそ、この街は在るべきなのだと俺は信じています!」


「ブリングハムは通らずに、直接リードニウムに来て売買すれば彼らの儲けになると?

 資本の無い商人達としてはブリングハムを迂回して、北口のリードニウムに入り商売をするだけで、あとはリードニウムが通行税も関税も負担してくれるわけだな?」


「正確には、ブリングハムの住人や商人達ですね。

 リードニウムに来て多彩な商品を買い漁ってもらった上で、お帰りの際の駄賃(通行税)は払ってもらう。

 まあ、あくまで商人組合が課税を要求してきた場合への事前の対策ですがね」

 

「つまりは教会の看板を盾にして、子飼いの商人達を育成したいわけか?

 私と同じことをするわけだな。

 子飼いの農民か商人かの違いはあるが。

 ふんっ。

 そして業腹だが、私の為した事よりも何倍もスケールを大きくしてな!」


「司祭様の為された事に比較できる事案ではありません。

 というか、僭越ながら司祭様の目指しておられる事と、そう違いがあるとは思っておりませんが?」


「貧しき者の為にか?

 私がそんな聖者に見えるとは驚きだね。

 君はそんなに目が悪かったのかね?」


「いえ、勿論聖者様には見えませんね。

 俺は楽がしたいし、苦労はしたくない。

 辛いのは嫌いだし、毎日快適に過ごしていたいだけなのです。

 ですが、そんな夢物語を今のこの世界は許してはくれません。

 だから、俺が望む暮らしができるようにする為に生きる。

 なんなら、むしろこの世界のありようの方を変えてしまえばいい。

 ただ、そう思って行動しているだけですよ。

 その為には、何より意欲がある奴が欲しい。

 いつだって事を起こせるのは生死がかかった、必死な奴らの死にものぐるいの努力なんですから。

 多少の能力や見識の違いなどお話にもならないですよ。

 頭が悪かろうが、要領が悪かろうが、物を知らなかろうが、そんなことは全く問題じゃない。

 ただただ永遠の不満足に身を焦がした、分不相応な身の程知らず達の浅慮な行動こそが、この世界の壁を突き破るんです。

 そんな奴らが作る世界は、きっと活気に溢れて楽しいと思いますよ、司祭様」



 その後も司祭様にリードニウムの町割りの説明を続けた。


自由市場特区の中心点にはブリングハム教会新本部を設置し、ここから放射状に流通用道路がリードニウム街の隅々にまで広がっていくのだ。


 いつもお付き合い下さり、ありがとうございます。読んでいただけるだけで大変嬉しいです。


もし宜しければブックマークや★の評価1つ付けて頂くだけでも、義月は踊り狂って喜びます。

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