第3章-14 公共の問題
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「仕事があるがどうだい?」
「アルが言うんなら間違いねぇな。
いっちょ俺達もそいつにかましてくれや」
俺は開拓地の開発を進める為、古巣に戻って来ていた。
思えば、リアの聖女様活動で忙しくしていて、こちらに顔を出せていなかった。
ここらの男手を軒並みかき集めれば、500人近くは揃えられるだろう。
俺が斡旋する仕事など、お上品な連中にはとても務まるものではない。
その点では、こんな頼りになる連中もいなかった。
「じゃあ、手分けしていくぞ。
まずは汚水溜めから街の外へ水路を掘る奴からだ!
力仕事担当は日当に大銅貨2枚だすぞ!
大判振る舞いだ、稼ぎまくりな!」
「おうっ!
力仕事は俺っちにまかしときなっ!」
「5人1組で班を作れ。
5班集まりゃ、それをまとめる頭もだせよ。
頭の20人には俺から直接指示を出すから。
指示があるまでは、勝手なことはするなよ。
何もなきゃ昼寝しててもかまわないから」
「おうよっ!
聖者様のご指示どおりにってな」
「なんだ?
その聖者様ってのは?
そんな胡乱なやつがうろついてんのか?」
「何言ってんだよ、アル?
聖女様の身内なんだから、お前が聖者様に決まってんだろうが?」
「テメェらふざけた事抜かしてんじゃネェぞ、コラッ!
も一度そんな胡散臭い呼び方しやがったら、テメェらまとめて汚水溜まりの中ぶち込んで漬け物にしちまうぞっ!」
「おおっ、おっかねぇ。
解散、かいさーん!」
ちっ、アイツらバカばっかりだな。
色々問題引き起こしそーなこと広めやがって。
さすがにこいつは口止めして置かないとな。
今は世話になっちゃいるがな、このまま都合良く教会に取り込まれるのは良くない。
何より大聖堂辺りに知られると、奴等のプライドやら利権やらにひっかかり、要らぬちょっかいかけられそうで、これもまた非常にマズい。
その為にも、ここらで実績を上げて名を上げる。
そうすりゃ、司祭様の教会でのおぼえもめでたかろうさ。
仕事を信頼されれば権限が上がる、扱う金がデカくなる。
そして繋がりが増える、使う人も増える。
すると金の動かす場所も増えるだろう。
金ってのは不思議なもんで寂しがりやなのさ。
一箇所に集まろうとする。
そして雪だるまみたいなもんで、動かせば動かす程デカくなってくもんだ。
なら、俺がやることは一つだ。
元でがない俺は教会の看板で、司祭様の後ろ盾を使い、金と人を動かす立場を手に入れてみせる。
そのままではいられやしないだろうが、手っ取り早くリアと独立する為さ、張り切って行こうぜ!
さあ、信頼されるにはまず実績だな。
その為にまず俺が目をつけたのは、この街の水路だ。
新興の街だからな、未だに発展途上だ。
お上品な方々のお住まい辺りくらいは、綺麗に街並みを整えてあるけどもな。
しかし、下層民の地区は別だ
下水道なぞ整備されてないからな。
適当に作った汚水溜まりが溢れ返り、衛生面もえらいことになってる。
今回はこの街の水路整備含め、開拓した農地の肥料にも再利用しようという一石二鳥の公共事業な訳だ。
まあ後々は上水道まで引き込み、スラムの環境改善までやれればいいが。
俺達はここんとこの聖女様家業のおかげで、莫大な金銭を稼いでいた。
実際稼いだ額は金貨300枚はくだらないだろう。
まあ金貨1枚もありゃ俺達1人くらいなら2、3年くらいは食っていけるんじゃないかね?
するってーと、スラムなら600人が1年以上は食っていける程の、そんな大金だ。
今回の事業だと炊き出しをやって、さらに必要な資材を持ち出しにしても、4ヵ月くらいなら十分資金が回るだろう。
ちなみに銅貨1枚で安いパンが買える。
銅貨10枚で大銅貨、100枚で銀貨、1,000枚で大銀貨、10,000枚で金貨に相当する。
もっとすげぇのは金貨10枚で大金貨、100枚で白金貨、1,000枚で大白金貨だとさ。
俺らには金貨でさえも御伽噺くらいに現実感がないもんだったがな。
「次は、ガキどもに仕事だぞーっ!
ああ、身体が弱った爺いや婆あも瓶さえ運べりゃ仕事しなっ!」
リアに頼んで、ガキ達と年寄りも集めて貰っていた。
「みんな、お仕事で怪我したら治してあげるからね。
あと、頑張ってくれた人には病気を治してあげるから、身内に病人がいるならその分、頑張ってね!」
「ああ、あと仕事した日は、飯もでるからな!
張り切って働けよ!
給金は日当で大銅貨1枚だぞ、大判振る舞いだ!
気張れよお前らーっ!」
「おお、聖女様、ありかだや、ありがたや。
聖女様の為ならお迎えが来るまで馬車馬のごとく働きますで!
何でも言うてくだされ!」
「よし、お前らは汚水を開拓の畑に持っていけ!
向こうに教会の助祭達がいるから、そこで指示を仰ぎな」
スラムで仕事を指示したら後は、今度は道の整備の打ち合わせだ。
多数の石工を抱え、石材の生産地を押さえるハウエル商会が街道の整備を担っていた。
さすがはブリングハム随一の商会、ハウエル抜きにこの街の新興はなかったはずだ。
子煩悩なだけの親父じゃないぜ。
「お兄ちゃん、結局司祭さま、お金は渡してくれなかったよね?
支払い、大丈夫なの?」
「ああ、心配ない。
リアが頑張ったからな!
稼いだ金は貰えなくても、街の為に使う権限はちゃーんともらっといた。
癒着も汚職もどんとこいだぜ!」
「うんうん!
やっぱりお兄ちゃんは、そーゆー悪いこと考えてる時が一番かっこいい!
もう、ちゅーしてあげる♪」
「いや、そーゆーの間に合ってるから」
「もう、なんなのよバカーっ!?」
リア、そういう俺が理性をなくしそうなことは慎みなさい。
うーん、でもさ、ほっぺにチュッぐらいはオッケーだよな?




