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第1章-3 教会について

3


 スラム生活にも馴染んだ。


元世界(あっち)の記憶も薄れて感じる今日この頃。


俺は12歳になっていた。



 俺の育った教会併設の孤児院にいるシスターは、もう60は越えた婆さんシスターと、若きシスター2人だけだ。



 婆さんの方のシスター、名はシーナ。


シーナの叔父だった神父さまは、去年流行り病で亡くなった。


1年経つが教会本部である、首都大聖堂教会から派遣されてくる神父はいなかった。


ま、街の豪商どもの寄付もその程度なんだろ。


大街道中央広場にある、この街の教会本部にはたっぷりと金を落としてるんだろうが。


スラム街の教会支部になんぞ、よっぽどの大ポカやらかした間抜けぐらいしか左遷されてこないんだろうぜ。



 こんな場末の教会に左遷されちまった神父さまは、愚直な善人だったよ。


婆さんシスターも神父さまに顔も、性格も、双子みたいによく似た愚直な善人だ。


ガリガリに痩せて年相応にシワだらけになった顔は、苦労してるくせにいつも穏やかだった。


俺は婆さんが、孤児院のクソ餓鬼どもを怒ってるところなんて見たことがない。



 この愚鈍さこそが善人でいられる資質なのかもな。


ここじゃ多少の目端が効く奴が、善人でいられるような環境じゃない。


食う為には、他人を喰らってなんぼ。


他人を喰らわなければ、自分が喰われるだけなのだから。



 俺にとっては母親がわりともいえる、若い方のシスター。


名はセーラ。


若いと言っても、俺を拾ったときには二十歳を越えてたはずだ。


随分若作りな女だが、もう三十を越えた大年増だ。


そろそろ子を産むような歳でもないはずだが、この歳でやたらと艶っぽい。


この掃き溜めのスラムに咲き誇る、一輪の薔薇といった風情がある。


栄養状態の良くない貧乏生活してるはずなのに、やたらと肉付きが良いのだ。


近所の呑んだくれ共曰く、男好きのするふるいつきたくなるような良い女らしいが。



 まぁ、確かに化粧もしていないのに、透き通るように白く健康的な肌。


桜色に色付いた頬。


熟れた果物の如く、赤く艶やかな唇。


目尻の垂れ下がった優しげな蒼い眼。


身内贔屓だろうが、かろうじて美人といえるだろう。



 とにかくこの女はよく笑うのだ。


近所の野良猫が子を産んだといやあ笑い。


向かいの婆さんの腰痛が治ったといやあ笑い。


毎度どうで良い話を、さも大層な重大事だとばかりに近所の爺婆に吹いてまわる。


微笑むと、ただでさえ下がり気味の目尻がさらに下がり、柔和で暖かい印象を与える。


もともと目が細いので、笑うと糸のようだ。


目が糸になると、目尻にあるホクロがよく目立ち、これがなんとも言えない妖艶さであるらしい。



 男共はまず、この笑顔にやられるのだ。


そしてデカイ胸。


とにかくデカイ、無駄にデカイ。


セーラが屈むと山がぶるんぶるんに揺れる。


近所のおっさんどもは、この胸目当てに何かしら用事をつくっちゃあ、足繁く教会に通ってくる。


男共は大抵、この胸に殺られるのだ。



 そして、胸に負けず劣らずのふくよかな臀部。


豊満な割に、胸と腰のくびれのカーブがやたらと艶めかしい。



「でけぇケツだな。

 俺が手を廻しても届かないんじゃないか?」



って言ったら随分とご立腹で、しばらくの間はネチネチとしつこく絡まれたっけな。


しみったれた修道服に包まれている豊満なその身体から、匂い立つような色香を漂わせている。


まあ、ンな感じでピンクな雰囲気全開なんだよ、髪の毛もピンクだしな。


そして頭ん中もピンクだなんだけどな、ハッハッハッー!



 俺の母親のセーラはそんな女だった。


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