第3章-6 敬意の問題
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上司へのご報告のお仕事です。
「ご苦労だったアル、リア。
ハウエル殿からの礼が届いている。
くれぐれも君達に宜しくと言っていたよ。
贈り物は部屋には入りきらないだろうから、あとで自由に持っていくといい。
聖女としてではなく、ハウエル殿からリアへの個人的な贈り物となる。
全て自由に使うがいいよ。
ああ、ただ金銭についてだけはこちらで預からせてもらうよ。
今のところ君たちは、教会関係者ではなく雇われた使用人という立場だ。
事情を理解してもえらえると助かるがね?
もちろん正式に聖女としての立場を確立した後には、君たちへの報酬は約束するつもりだよ。
ざっくりと半々で教会と分けてもいいと考えている。
君達との取り決めは、後日書面で正式に証明するつもりもある。
それを望むのならばね。
できれば今後君達とは信頼関係を結びたいと考えている。
契約書なんてものが必要なくなることを祈っているよ。
さて、贈り物についてはハウエル殿から目録まで頂いている。
後で確認してくれ。
全く予想以上の成果だったよ!
これからも宜しく頼む」
金は取り上げか……
ここで俺らに逃げられても困るだろうしな。
まぁ軒先を貸してもらってる身分だしな。
今のとこ否応はないさ。
しかし、この司祭様金遣いが荒いのかと思いきやそうでもねぇしな。
金満家として贅沢してるそぶりもない。
むしろ仕事中毒でほとんどの時間、執務室で高価な紙の束とにらめっこだよ。
そうか?!
あれがいつも口にする報告があがっているってことなのかね?
いつも金がない、教会本部でさえ人がいない、か。
義妹をお目付け役に据えるくらいだしな。
それだけの情報収集を行っているとしたら、そら金もかかるよな。
しかもあんだけ上質の紙を使ってるってことならな。
やっぱ、この司祭様は油断ならんな。
今の内からきちんと敬意を示しておくべきか?
「ありがとうございます。
ハウエル殿のお気持ちに対してこちらに否応はありません。
司祭様のご意向に従います。
ところで司祭様、此度の件ですが。
聖女の力というのは取り扱いが難しいのでは?」
「ふんっ。
それは、教会の力では御することはかなわないと?」
「危惧しているのは、恩恵に与かれない者達の妬みです。
客観的に見て公平なルールが必要かと。
実際に公平かどうかはさておき」
「ふんっ。
一理あるな。
早急に案を用意できるかね?」
「まずは金銭で制限を掛けるのが良いかと。
また、それ以外にもいくつか懸念が」
「そうだな……
アル。
君は文字の読み書きを学んだことは?」
「孤児院にて。
支障ありません」
「では、今後私に会えない際には、書面で報告をしなさい。
紙と筆は支給しよう。
報告すべき事は、まず要件だ。
その情報は報告なのか、相談なのか、それとも私の許可が必要なことか?
いずれかを必ず記載せよ。
次に、私の答えが必要な期限だ。
詳細については、最後で良い。
そして、これだけは忘れるな。
君の勝手な判断は許可しない。
君の独自の判断を許すことができるほど、私達の付き合いは長くはない」
「承知しました」
「ふんっ。
アル、君に敬語は似合わないな?」
「今後の為に必要かと思いましたが」
「好きにするがいい」
……一応は上司への敬意を示したつもりだよ。
スラムの孤児だってな、敬意を抱く相手くらいは選ぶのさ。
俺の敬意は高いんだぜ、黙って受け取っときな。




