第3章-4 美人局の問題
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さて、今日は商人組合筆頭ハウエル・バーナード氏との面会だとよ。
商人組合でコネ作りする為の大本命だな。
ここで躓いたら全てオジャンだからなぁ。
おしっ、気合い入れてかないとな!
「本日最初の面会予定ですが、ハウエル商会の会長です。
この方は子爵家の一つ、バーナード家の縁者になります。
バーナード家はそう影響力のある家でもありません。
またハウエル殿とバーナード家との関係性ですが、現在薄い経済協力関係のみのようです。
ですので、貴族家からの横入り等の問題は心配ないかと思います。
顔合わせだけで済むかとは思いますが、何か気になる点などございますか?」
「いや、大丈夫」
どうしたってリア主体の面会だし、目的は聖女様の顔を売ることだしな。
俺はただの連れ、小間使いってとこだな。
同行者のもう一人。
エリザベス・ヘレフォード。
彼女が聖女様のメイン秘書官って感じだな。
ヘレフォード子爵家出身、コッドナー司祭様の兄君が婿入りした家だな。
彼女は司祭様の義理の妹にあたるわけだ。
長女ではないから婿を取るわけじゃない。
当然、良い片付け先を求めてるわけで。
それ故、教会での縁故採用ってとこか。
いやいや、如何にお貴族様とはいえ、さして裕福でない家は大変ですわな。
ま、庶民も事情はかわりゃしねぇがよ。
ちなみに彼女、当年とって13歳。
いつ結婚しても良い頃あいだ。
絶賛お年頃ってやつだな。
こっちじゃ乙女の花の旬も短いからな。
命短し恋せよ乙女ってな、精々頑張ってくれ。
異世界は元世界に比べて特別寿命が短いってわけじゃないみたいだ。
だが、事故、災害、戦争、騒乱、病気と生きていくうえでリスクが高い。
医療も未熟、衛生状況も悪いしな。
早逝する奴は多い。
当然結婚も早いんだ。
男は15歳、女は13歳くらいから結婚するのが多いみたいだ。
そのあたりから、一人前扱いだしな。
そんな婚活まっしぐら肉食系乙女のエリザベスさまなんだが、俺にゃどうにもやりずらいんだよ。
なんせ、初対面の時からなんかグイグイ来る感じなんだよ。
なんか婚活まっしぐらのお嬢様みたいな。
「お初にお目にかかります、アル様、聖女様。
エリザべス・ヘレフォードと申します。
どうぞ、お見知りおき下さいませ。
私にお手伝いできることでしたら、どうぞ何なりと遠慮なくお申し付け下さい」
彼女のとの初顔合わせは、そんな丁寧な自己紹介から始まった。
ねぇ、なんでそんなギラギラした目で俺を見るの?
ちょっと怖いんだけど……
「アル、彼女は私の義理の妹エリザベスだ。
聖女様のサポート役を命じてある。
仲良くやってくれ」
そういって司祭様から紹介を受けたわけなんだがよ……
こんな丁寧な挨拶なんてされなれていねぇしな。
面倒くせぇが、こっちも丁寧に返しとくべきだな。
いいとこのお嬢様だ、嫌われちまったら今後の仕事がやりにくいぜ。
「初めまして。
アルトリウスと申します。
12歳になります、また私はスラム育ちで物を知りません。
ですので、エリザベス様にはご迷惑お掛けすることも多いかと思います。
どうぞ、至らない点があれば遠慮なく仰っていただけると助かります」
「むぅ……」
リアはちょっと不安そうだった。
頬っぺたふくらませて黙り込んでいる。
ちょっと人見知りの激しいところがあるんだよなぁ。
挨拶くらいはできるんだが、相手によっちゃぁなかなか打ち解けないんだよな。
聖女としての今後の生活を考えると心配だぜ。
「アル様、どうか私のことは気軽にリズと呼び捨てにして下さいませ。
貴方様のお力になれるよう、精一杯務めさせて頂く所存です。
こちらこそ、至らない点をビシビシご指導下さいませ。
アル様とご一緒させていただけて私、大変光栄なんですのよ!」
って、オイっ?!
近い、近い、近いっ!
いきなり手握りしめないでっ?!
そんなん、勘違いしちゃうじゃん?!
俺、あんま淑女に免疫ないんだからさー。
そこんとこちゃんと気を付けてくれないと。
オトコは狼なんだよ?ガブっていっちゃうよ?
え?何、セーラもお嬢様でしょって?
あぁ、アイツ色物枠だからな、関係ねぇよ。
あれは、いわゆる都合の良い女一直線だからな。
『ああ、まだ終電あんだろ?やることやったら、邪魔だからはよ帰れよ!』みたいな?
自分で言ってて良くわかんねーけども、そんな感じ。
頭ん中ピンクな女も嫌いじゃあないが、ちょっとセーラは足りなさすぎる。
ま、そこも可愛いけどもな。
どーでもいいけど、距離が近いのよこのお嬢サマ。
手握るわ、腕組んでくるわ、あと当たってるからね、それ。
え?あててんのよ?何それ?!気持ちいいんだけど!
彼女がくっついてくる度に、背中まで届く綺麗な赤い髪がフワフワ舞ってさ、なんかフェロモンむんむんなの?
ね、困るっしょ?
「アル様、どうかされましたか?
さ、お仕事に参りましょう!」
いやね、彼女俺より少し背が低いんだけど。
腕組みながら、上目使いで話しかけてくんの。
綺麗な紫色の瞳がウルウルしてんの?
何コレ、リアがよくやる奴じゃん、超可愛い!
ヤベっ、これ俺がその気になっちゃったらさ。
へ?庶民がお貴族様相手に何勘違いしてるんですか!ツーンって。
奈落の底に落とされるパターンぢゃね?!
俺は胸に手を当てて深呼吸した。
いいか、落ち着け、まだだぞ。
スラムじゃ慌てるやつはいつだって先に死んでくんだ。
フーッ……ああヤバかった、落ちる寸前だったぜ。
とりあえず今日のお仕事を真面目に勤め上げよう。
こんな美少女の誘惑にいつまで耐えれるんだろう俺?




