第1章-1 孤児院について
俺には妹がいる、可愛いカワイイ妹だ。
ちょっと引っ込み思案で人見知りが激しいんだけど、俺にはよく笑ってくれるんだよ。
コイツだけは何があろうと、俺が守ってやらなきゃいけない。
そう決めてたってのに、気が付いたら異世界にいたんだよ?
何を言ってるかわからねーと思うが、断じてそんなチャチなもんじゃない。
最後の記憶は、いきなりトラックが目の前にいてさ。
スローモーションってこういうことかぁ。
なんて呑気に考えてたんだよな。
あぁ、リカ、お前を一人にしちまってゴメンよ。
きっと泣かしちまうんだろうな。
きっと怒るだろうな。
ホントにさ、リカの怒った顔も愛らしくてさ。
何笑ってるの!ワタシ怒ってるんだよっ!ってさ。
また、俺のこと叱って欲しかったのにさ。
駄目な兄貴でゴメンな……
気がついたら飛び出してたんだ。
ほっとけなかったんだよ。
あの娘、ケガしてないといいよな。
なぁリカ、祈ってやってくれないか?
あの娘の為にさ、元気になるようにさ。
リカ、またお前に逢いたいよ……
1
この世界で俺の最初の記憶は、静かに眠る赤ん坊の顔だった。
薄汚い布に包まれ、ボロボロのバケット入れられ捨てられていた。
その赤ん坊を拾ったのは、俺が3歳の誕生日を迎えた日。
といっても俺も捨て子だった。
誕生日といっても孤児院の前に捨てられていた日。
それが生後何ヶ月だったのかもわからねぇ。
だから俺の年齢もテキトーなもんだが。
俺の名は、アルトリウス。
名付け親であるシスターセーラが、大分イっちゃってる感じでのたまっていたんだが。
なんでも御立派な由緒ある英雄さまである、なんたらかんたら……っつう感じなんだな。
霊験あらたかな名らしいがね、悪いが正直よくおぼえちゃいない。
ま、孤児には大層過ぎた御尊名らしいぜ。
当時、婚約者に裏切られ人生に絶望してたセーラがさ。
俺を拾って運命感じちゃったらしいんだよ。
ホント酔っ払いが多い街なんだ。
ここの連中、金がないから何にでも酔っちまうんだよな。
救いの無い現実を束の間でも、忘れさせてくれるんだろ?
ただ、俺はそんな生き方はまっぴらゴメンだけどな。
いつも腹を空かせてた。
野良犬のように餌を探してほっつき歩いてた。
ようやく食い物を見つけたと思ったら、ガリガリの赤ん坊。
さてどうやってこいつを口にするかなって考えてたわけだ。
なのに赤ん坊の寝顔が穏やか過ぎて、吸い込まれるように目が離せなくなっちまった。
こんなクソッタレな街で。
親に見捨てられ。
誰にも気付かれず。
誰にも気にされないまま。
このままだと朽ち果てていくしかないってのに。
泣き叫びもせず、穏やかな顔してたんだ。
気が付いたら。
俺は後生大事にバケット抱え、赤ん坊を孤児院に連れ帰ってた。
その時さ俺が守ってやらなきゃ、って何故かわからないんだが強くそう思っちまったんだよ。
俺が住んでる孤児院は教会が運営している。
この街は、最近大規模に整備された街道が交差している新興都市だ。
東西南北にのびる大街道の交差地点で、この国の物流の拠点になっている。
流通を強味にした、そこそこの規模の新興中核都市だ。
物流がある、人の流れがある、ならば当然金が落ちる。
その金を栄養に様々な商売が成り立っていたが、競争は激しい。
この街に夢を見る者は多いが、弾きだされる弱者は増える一方だ。
いかがわしい商売が幅をきかせ、弱者を喰い物にしながら街は発展する。
そんな喰い物にされる弱者達の救済をする為、またガス抜きを担わせる為の教会は、この街の中心街から南にあるスラム街の端っこにあった。
街の成り立ちから当初、大街道の交差する街の中心広場に沿う形で外円状に貧しい者たちは群がっていた。
しかし、街が交易で潤い発展していくにつれて、俺たち貧乏人どもは追い立てられていったってことだ。
俺の居る孤児院はそんな教会への寄付金で賄われているが、ここは貧乏人ばっかりのスラム街だ。
当然台所事情は苦しい。
だから孤児達はいつも飢えていた。
初投稿です。
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