烏
「烏と言うのは、何かと負のイメージが強いようだが」
先輩はいつものように話し出す。
それに、カラスは負のイメージが強いと言うが、それよりも汚いと言うイメージの方が強い。
生ゴミを漁り、動物の屍肉にたかる。
カラスの行水なんてことわざもあるくらいだから、汚いイメージは昔からなのだろう。
「だがしかし、それが全てというわけではない。実はカラスはきれい好きなのかも知れないと言うのを知っているかい?」
「いやいや、せんぱい。カラスの行水ってことわざくらい俺だって知ってますよ?つまり、水浴びの時間が短いとか、そんな意味ですよね」
「ああ、そうだな」
「なら、」
なら、やっぱりカラスは、とそう言いかけたが先輩が話を始めた。
「それはあくまで人から見た時間だ。こーはいくんは他の鳥、雀なんかの水浴びの時間を知っているかい?」
「えーと…」
「答えを言おう。数秒から数十秒だ」
「はやっ」
「それに比べて烏は1分から長いものは3分と水浴びをしている」
「マジスか…」
「つまり、烏は案外きれい好き。なのかも知れない。さらに言うと、烏の濡れ羽色と言うことわざもある。
その意味は、美しい女性の黒髪を表すのだよ」
そう言い、先輩は自慢げに髪を、俺に見せつけるように長い黒髪をかき上げた。
「そう、私を指しているようなことわざだ」
「自分で言いますかそれ」
「自身の長所を自覚することも重要さ」
「さいで」
「ちなみに、烏の話だが、いくら水浴びをしてきれいだと言っても、うんこをいくら洗剤で洗ってもうんこのままなように、果たして、水浴びが長いから綺麗かと言うのはまた別の話だ」
「クソみたいな話じゃん…」