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2.悪役令嬢がやって来た

我が家にリリナ姫がやって来た。


リリナ姫ことここ、フィンツィ王国の王女、リリナ・フィオレンティナ・フィンツィ。


あっ、所謂、兄ルートの悪役令嬢ですね。


リリナ姫は兄ラファエルにぞっこんである。

この国の第二王女で淡い緑の髪に濃い緑の瞳の美少女だ。森の妖精みたいに可愛い。


幼少期からリリナ姫は兄に早く私に愛を囁いて!と言わんばかりの怨念を送っているが兄ラファエルはどうやらまだ紳士に擬態する前の様で、常にスルー。

今の兄は周囲には無関心、がデフォルトのようです。


まぁ毎度、毎度、スルーされているのにめげないリリナ姫も凄いと思う。

私だったら数回スルーでポッキリと心が折れているだろう。



この世界の社交ルールによると女側からは例え王族であっても、自分から好きだの、娶れだのは言えないらしい。


しかも相手よりも地位の高い女から言ったら最後。魅力が無いからと陰口を叩かれるのだ。


プライドで息をしているリリナ姫はもちろん、そんな事は出来ずに、すんごい目力で必死にラファエルへとアピールする日々だ。

リリナ姫とラファエルは、はとこ、となるそうで政治的にリリナ姫を娶る旨みが今のところインファンティーノ公爵様には無い。


むしろ、力をつけ過ぎているので避けたい縁組となるそうだ。


リリナ姫に無関心なラファエルは完全に今、その存在すらスルーで私と話しをしている。


「ウラリー、確か洋菓子店コワン ドゥ ナチュ-のタルトが好きだったよね。帰りに買って帰るよ。」


ラファエル的には、今日は歌劇を見に行く予定になっていて、劇場に行くのは夜になり、夕飯の時間が取れるか怪しい時間帯なのでアフタヌーン・ティー(十九時頃に食べる軽食)を一緒にしようとタルトをウラリーの鼻面に置いて誘っているのだが、頭空っぽのウラリーは、その意味を理解しウラリーを睨み付けているリリナ姫の様子に全く、ちっとも気付かずに勢い良く食い付いた。


純粋にタルト!タルト!!くらいに思って顔を上げたのだろうウラリーが、目をキラキラさせながら笑みを浮かべる。


「あ、あ……ありがとう!私…コワン ドゥ ナチュ-のタルト、大好き!」


用があるからちょっとだけ出掛けるのでお土産は何がいいかな、って事かな?

わぁーい、タルト!


でも……出来ればリリナ姫を回収して出掛けて欲しいのだよ、お兄ちゃん!


今目が合ったリリナ姫の眼差しが凄い怖い。

彼女の目にビームが出る仕様なら私は確実に殺られていた。

そんな勢いの、怒りの炎が点っているのがわかった。


お土産を買ってきてもらえるなんてと怒ってるのかな?


昨年、公爵様が再婚した事によって愛しのラファエルに出来た赤の他人な義理の妹。

そう、私ウラリーは今のリリナ姫にとっても邪魔者なのだ。


ウラリー・インファンティーノ(私)が現れて以来、彼女はやや暴走気味だ。ゲーム内ではここまで毛嫌いされてなかったのだけど、ゲーム内のウラリーはこの時既にラファエルからは無関心で放置された義妹だったし。


けれど今のラファエルは色々と行動や思考がおかしな頭空っぽの義妹を何処と無く監視している節がある。


公爵家に籍を置いているから、やはり放置しておかしな行動や言動であそこの令嬢はおかしい、とか変な噂が出ないかと危ぶまれているのかもしれない。


けれどそのラファエルの監視は、無関心な態度しか取られた事の無いリリナ姫からすれば看過できない事だろう。


しかも、母と公爵様が再婚した時の事だ。

当時、11歳のウラリーと、15歳のラファエル。

既に私に初潮がきていると知った公爵様はなんと私とラファエルお兄ちゃんを結婚させようとしたのだ。


理由は、子を成せる年の血の繋がらない男女が同じ屋根の下に暮らす事を親族などが反対した為だ。


しかし、親族はたぶん、自分の娘達をラファエルにと目論んでいたのだろう。

その案を出した瞬間に不満をさっと取り消したそうだ。


ゲーム内のウラリーはそれを知って自分がラファエルのお相手と大きな勘違いをするのだが。

好きになるともれなく自分を殺す男を好き好んで夫にする気はサラッサラない私なのだけど。


野生の勘、故か前世の記憶を思い出す前の私も、その話を聞いてラファエルからササッと距離を置いていた。


グッジョブ私!


しかし、そんな話を聞いてしまったリリナ姫が放っておく訳も無く。


「貴方、まだインファンティーノ公爵家に居座ってますの!?」


「はぁ、一応インファンティーノ公爵である義父に、養子縁組をして頂いてますので。」


「叔父様もお人が良すぎますわ!!」


プリプリするリリナ姫は兄ラファエルに会いに来ては、毎回私に絡んでくるのだ。

本来ならウラリーは自分の美貌が儚げでまんま天使と言われても可笑しくない美少女っぷりな為にこの頃には自分の美貌がどんなものかを知っていた。だからこそウラリー自身もラファエルに相手にされていない事実に気付かず、リリナ姫を小馬鹿にしていたのだ。


しかし、今や舞い降りた天使とまで言われる可憐な私だが、美貌はなんの足しにもならないと知っている。


そんな物なんの価値も無い。


サイコな人達には面の皮一枚がどんなものであれ、骨格が一般的で、その下に流れる血が赤ければ同じ人間と言う認識なのを知っているのだ。


ちなみに、リリナ姫は血みどろなルートが少ない。

ラファエルのルートに唯一、一つだけあるがそれ以外にはない。


なぜ悪役令嬢なのにチョイ役の私より死亡率が低いんだ!?

と今なら声を大にして言いたい。


リリナ姫はラファエルお兄ちゃんと、宰相様のご子息、コルナーギ侯爵令息のダニエーレのルートに必ず立ちはだかる悪役令嬢だ。


ラファエルの場合はリリナ姫の想い人として。


ダニエーレの場合はダニエーレの初恋のお姫様として。


ちなみにこの年にダニエーレ少年は森の妖精の様に可愛らしいリリナ姫に一目惚れをする。


まぁ、ダニエーレのルートだと私の出番は無い。そしてリリナ姫も初恋の人だが、初め以外は余り出番が無い。

悪役なのに断罪も無い。


だって本当に困難な人格の厄介な登場人物が既に主人公を翻弄するので悪役が仕事する暇もない。


そして、どうか主人公よ、ダニエーレのルートを進んでおくれ!


ダニエーレのルートならこのゲームの中で難易度が一番低いし、人も敵国の兵以外は死なない。


このゲームの最難易度はやっぱり、隠れキャラの兄ラファエルのルートで、兄に惚れているリリナ姫が恋路の邪魔に現れ。

兄がどこかに行く度に泣き落とし令嬢の妹ウラリーが兄を行かせまいと現れる。


ウラリーはかなりしつこい。

そして両手を広げての泣き落としで物理的にも行く手を阻むのだ。


まぁ、私もリリナ姫も、二人とも最後は消えるけどね。


ハッピーだと、主人公はラファエルに監禁…いや、結婚。

紆余曲折を経て二人は結ばれる。


リリナ姫は兄ラファエルの策により隣国の鬼畜な第三王子の部屋に薬を飲まされて放り込まれ、翌朝ヤリまくっていた二人が使用人達に見つかりそのまま隣国に嫁ぐ。鬼畜だがリリナ姫にぞっこんなので後々リリナ姫はちゃんと幸せになる。


アンハッピーだと、リリナ姫を惨殺した事で追われるラファエルと主人公は無理心中だ。


唯一の救いであるノーマルエンドの友人エンドでは主人公は攻略対象者だけでなく、リリナ姫とも友人となる。


ちなみに私の役どころはひたすら邪魔をして殺される役どころとなる。

手口が巧妙でラファエルが犯人だとはどのルートでも知られずに闇に葬られた形だ。


私は主人公がラファエルルートに入った瞬間死が確定する。

だから、ラファエルのルートのハッピーでも、バットでも、ノーマルでも私はサクッと殺される。


そしてラファエルは隠しキャラでラスボスとかってに私が言ってるだけで魔王になったりはしない。

ラファエルが設定上、ちょっと反則級に有能でチート過ぎるだけで。


基本、自分の邪魔をしなければ無関心な兄なので私としてはこのまま。


あ、こいついたの?くらいで生きて行こうと思う。




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