12、ついつい
「お兄ちゃん!?あっ、あのっ、冷たい…って言うか。」
凍ってるんですけどー?!
凍りついた廊下は兄が「ごめんな、ウラリー。つい、魔力が漏れてたみたいだね。驚かせてごめん。」とちょっと苦笑いで解凍していた。
いや、最近思ったんだけど。お兄ちゃんって結構おっちょこちょい?
ついうっかり廊下を凍らせるなんて。
「じゃ、ウラリーまた後で」
「じゃーな、ウラリー俺も」
「オレーはちょっと僕に付き合ってもらうよ。」
「………ですよねー」
白目を剥いたオレリアンを背筋も凍る笑顔で見ているラファエル。二人は仲良く手を振ってくれた。
すっかり、遅れて教室に行くと時間はギリギリだった。
「……あ、あの」
「はい!」
急に話しかけられ私は驚いて裏返った声で返事をしてしまった。
恥ずかしい。
先程の声はお隣の席の子からで、マティルデ・トマと言う、男爵に成り立てでちょっと貴族っぽく無い子なので私としてはとても親近感が持てる方だ。
むっちりぽっちゃり系のかわい子ちゃん。
「あ、あの。」
「あっ、はい!どうしましたか?」
困った顔、可愛いな。なんて思ってるとマティルデちゃんはうるっとした顔で頭を下げた。
「ごめんなさい!私のいとこが!あなたに酷いことを、して…ぐすっ。傷は大丈夫ですか?まだ痛みますか?」
「……ん?いとこ?」
「はい、あの。バローネ家のアウロラ様の子分だった…あっ!いえ、お友達?だった!ルロワ子爵家のエレーヌのことです。彼女は私の母方のいとこで。」
しょんぼりと肩を落としてるマティルデちゃんだけど、さっき、あれ?
子分って言ってたような……
気のせい?
うんうん、気のせいだよね。
「もうすっかり治ったので大丈夫です。それに、マティルデちゃんが謝る必要なんてありません。」
「いえ、エレーヌがやった事は、許されません。」
マティルデちゃんはまたうるっとした顔でウラリーを見て言葉を続けた。
「ですが、ありがとうございます!家から身一つで追い出されそうになっていたと聞いて。でもウラリー様が口添えくださったおかげでエレーヌは修道院へ入れたと言っていました。
ウラリー様の口添えが無ければ、あの子、今頃………」
ぐすん、と涙ながらに言われて、罪悪感がつのる。
私を攻撃したばっかりに彼女達の未来が刈り取られたなんて。
「ごめんなさい。私なんかの事で、あなたのいとこは修道院に」
「え?ええ?!いえ、それは違い─」
「よし、お前らそこまでだ。ひとまず授業を始めるぞ」
なんと、いつの間にか先生が来ており、更には授業開始の時間を過ぎていた。
周囲を見ればサッと視線を逸らされたがさっきまでみんなに見られていたらしい。
「は、はい!すいませんでした」
「すいませんでしたっ!」
私達は共に謝罪して、顔を見合わせて苦笑いした。
一限は外国語の授業。
ウラリーはこの世界の言語がなぜかだいたい全て分かる。そんなミラクルなチートを持っている事にこの授業のおかげで気付けた。
今まで他国の言葉なんて触れる機会が無かったからいつからこんなチートを持っていたのかは不明だ。
そして先生は私を流石はインファンティーノの令嬢だと言ってくれたけど、良く考えれば外国語の先生なんて付けられていなかった私が数カ国語を理解しているのは異常だ。
どうする!?
なんて慌てていたけど。
その後、一般常識を習ううちに神様のギフトと呼ばれる不思議な能力持ちの人が少数だが、いる事を知った。
なるほど、コレって神様のギフトなのね。と納得した。まぁ、聞かれたら話せばいいよね。
それに、先生は何処と無くだけど、私のギフトに気付いている節がある。
そんな訳で
「インファンティーノ、この例文からこれに続く会話をする。相手をしろ」
とか……
「うーむ、この国の言葉は発音が難しいからな……インファンティーノ、お前がみんなに、この文章を読んで発音を聞かせてやってくれ」
と言って先生に便利な翻訳機能付きの助手扱いを受けている。
先生の発音はおかしく無い。
だというのに
なぜそんなに私をこき使うのだ!
と言った感じで一限の授業は終わった。




