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11、チャラっと

翌朝は雨が降っていた。


憂鬱な気分を水で洗い流して侍女達の手によって制服に着替え、朝食を食べに食堂に向かうと兄は既に食べ終えた後だった。


公爵様も母も今は隣国の西の地方へ、外交の為向かっており、私は久しぶりにぽつんと一人座って食事をする事になった。


無駄に広いテーブルも以前はサイコな兄との防波堤だと有難く思っていたのに……


「ウラリー、本当に大丈夫かい?体調が悪いようなら」


心配そうにそう言われてはっと我に返る。

これじゃ寂しがり屋のお子様みたいじゃないか。

一人で食べて学校に行く。至って普通の極々一般的なことだ。

ウラリー!何をしょぼくれてるの?しっかりするのよ!


「私ものすごく元気だから!!」

鼻息荒く言ったウラリーを見てラファエルは先程よりも険しい顔をして見てくる。


しまったわ。これじゃぁ無理して笑う健気な子にしか見えない。

そんなものは望んでいない。


「……えっと。本当に元気よ?お兄ちゃんが食べる暇がなくて残したプディングだって私が全部食べるつもりだし」

そう言うとラファエルは、なるほど、早く食べたかったんだな。と言う顔をした。


うん、釈然としない。物凄く物申したいけれど、うん。


もう、それでも良いわ!



「じゃあ、僕はもう行くけど…」


私ってどんな義妹だと思われているのかと、顔を引き攣らせる私に、兄は気遣わしげな眼差しを送ってきた。


ラファエルは急にしなくてはならないことが出来た為、今から急いで学園に向かわなくてはならないと言う。


「そっか、朝早くから大変だねお兄ちゃん。行ってらっしゃい」


「ごめんな?ウラリー。学園で待ってるから。もし気分が優れない様だったらお休みしていいからね」


昨日私が泣きべそをかいていたものだから、たぶん心配してくれているのだろう。


それはそれは渋い顔をして馬車に乗り込んで行った。


そんな訳で、私は今日、珍しくぼっち登校だ。


それにしても気が重い。


あの事件後、初めての登校となるので着けばまたみんなから興味津々に見られるのだろう。


「ウラリーお嬢様。本当にお休みしなくても宜しいんですか?」


「うん、心配してくれてありがとう。でも本当に大丈夫だから」


執事や侍女達まで心配するから私は何とかにっこりと笑って行ってまいりますと言うと馬車まで向かった。


馭者が傘をさしてくれて私はとぼとぼと歩いて馬車に乗り込み、学園へと向かう。


そんなウラリーを執事達が心配そうに見送っていたがウラリーは馬車に乗ってもぼんやりとしたままだった。


学園に着き、校舎内を歩いていると金髪に灰色と青を混ぜた様な瞳の、背の高い男子生徒が私の目の前に立ち、ニヤニヤと馴れ馴れしく近づいてくる。


「ねぇ、君がウラリー嬢かな?インファンティーノ公爵家の」

「……どちら様ですか?いきなり」


ウラリーが怪しいヤツだと言いたげに男を見ると、目の前の男は片眉を上げた。


「あっ、俺、オレーだよ」


オレオレ詐欺みたいなやつね…


「俺、じゃわからないんですけど」


ウラリーは益々警戒を強めた。


「いや、だからさ、オレリアンだって」


オレリアン?


「……どちらさん?」


ウラリーが本当に分からないと言う様に首を傾げると「え、マジで?」と目の前の男が驚愕の眼差しを向けてくる。


「叔父さんから何も聞いてないの?マジで?俺、ラファエルのいとこのオレリアン・ランベール。君の婚約者候補だよ」


いとこ…ラファエルのいとこで……私の…


「私の婚約者候補!?」


ウラリーは目の前のチャラっとした男をまじまじと見た。


それはそれはじぃーっと。


チャラ男はなぜか面食らった顔をしている。


しかし、イケメンだな。


そんな彼はチャラいけれどイケメンだった。

そしてラファエルに何だか何処と無く似ている。


そうだ、似ているのだ。

ラファエルに。


雰囲気は全く正反対なのに。


「まぁ、可愛い子は大歓迎だからさ。よろしくな? 」


そう言って手を差し出して来たので、ウラリーは反射的にその手を握ろうとして─


「ウラリーになんの用かな、オレリアン?」


サッと伸びてきた手が私の手を阻んだ。


「お兄ちゃん?」


「ウラリー、一緒に登校出来なくてごめんね。そのせいで変なのに絡まれて怖かったよね?」


「変なの!?酷っ!酷いよラファエル!」


「黙ろうか?オレー」


「……………」


兄の刺々しい眼差しはオレリアンに向かっていて、オレリアンは顔色悪く先程までのゆるゆるな顔も流石に硬直している。


ウラリーは内心、オレリアンに心の中で合掌しつつ、ラファエルに頭を撫でられていた。


「で?なぜウラリーに絡んでたの?オレー」


「いや、ラファエル?絡んだっつうか。婚約者になる子がどんな子なのかなって気になったから見とこうかと思っ…っ……グォッ─」


突然オレリアンが呻いた。


何があったのかとウラリーは目の前に、まるで目隠しの様にあるラファエルの腕を少し下げてオレリアンの方を見ればオレリアンはラファエルの手によってシャツの襟元をグッと捕まれ片手で締め上げられていた。


「婚約者?誰が……誰の……婚約者だと?」


「グェッ……え?あぁ、まだ…候補だけどね?他にも……ちょ、ギブギブ」


ラファエルはチッと舌打ちしてオレリアンから手を離した。


「で?」



「ラファエル怖いんだけど!どったの!?」


目を白黒するオレリアンはラファエルを見て首を傾げている。

しかし、ラファエルの笑顔の威圧感にオロオロと話を続けた。


「話すよ。うん、えっと。ウラリーの婚約者候補の話だよね?たぶん俺以外にも後二、三人くらいウラリーの婚約者候補を見繕ってるんじゃないかな?そんな事叔父さん、言ってた、し──」


「…………へぇ、一人じゃ無かったんだ」


「あ、あれ?ラファエル、なんかめちゃくちゃ怒ってる?もしかしてウラリーの婚約者候補を俺にしたからって怒ってる訳じゃないよね?」


オレリアンがオロオロとしながらラファエルの顔色を見ているがラファエルの目はどう見ても座っていた。


寒っ!ひっ、な、な、何でいきなり廊下が凍ってるの?


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