舞台裏のお兄ちゃん
ラファエルは報告書を見て眉を寄せた。
「よくこんな成績で入れたな…」
バサリと執務机に投げたそれはマリーと言うラファエルの義妹ウラリーにまとわり付き、更にはウラリーの腕を無理に引いた気に食わない女子生徒に関する報告書だ。
読むのすら阿呆らしいそれにはマリーの家が没落しそうな原因が書かれている。
マリーの父は真面目な男だった。
ジーノ伯爵家は三年前の魔物の被害の後、災害にあって領地の復興金の申請をしている。
本来の彼ならほかの貴族の様に復興金を着服し、領民からの税を搾り取ったりしなかったはずだ。
彼の人望は厚く他貴族からの復興支援もあったようだ。復興金の申請から支援が行くまでの間はかなり厳しいものだっただろう。けれど、領地の復興に尽力し、没落ギリギリでも領民からの税を安くしていたはずだ。なぜ着服などしたのかと言う疑問の声が多かった。
しかし更に調べて行くとマリーのドレスや装飾品に多くの金が動いていた。更には侍女がその頃に数人辞めさせられている。
首になった侍女の話によれば、復興金に手を出したのはマリーの独断によるものとわかった。彼女はこの学園に通えば未来は私のもの。私は将来インファンティーノ公爵夫人なるのだから。お前達に心配されるなんて不愉快だわ!出て行け!と首になったらしい。
意味がわからない。酷い妄想癖のある女だ。
だが、あの女は義妹を馬鹿にしたように見ていた。
嘲笑う醜い顔が一瞬ウラリーを見た瞬間。ラファエルはこの不愉快な人間を消そうと考えた。
義妹であるウラリーを馬鹿にして見て良いのは自分だけだと言うのに。
「ラファエル様。捕らえたあの女は如何なさいますか?」
「闇に渡してくれ。騒ぐ様なら脳に刺激を送る魔術師に一度弄らせてからでも構わない。気に食わない不愉快な人間だったが殺すとウラリーにバレた時に泣かれそうだからね」
「………死ぬのとどちらがマシかはわかりませんがね」
闇に産まれた赤子だったマルケスは父が人を殺す事のみに特化した闇武術や禁忌とされる闇魔法を仕込み今ではすっかり我が家の暗部を一手に仕切る男となっている。
気配無く動く手足には我が家を裏切れない魔術がかけられているがこの男は義妹ウラリーを気に入っているらしくウラリーの為だと判断すれば嬉嬉として手を下す。
「それでも、殺してはダメだよマルケス」
不思議な男だが、自分と似た気配すら感じられる。
だから余計に、ウラリーを近づけたくない。
自分のこの執着が玩具に対するものか、恋とやらのせいなのかは自分にもわからないが。
「ウィリアムにマヌエル。更にはマルケスまで誑し込むなんて。悪い義妹だね。ウラリー」




