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そんな少女の唯一楽しめることといえば絵を描くこと。美術部に所属していた少女はネットなどでいろいろな模写を載せたり、創作絵を描いたりする事が好きだった。決してとても上手い訳では無い。なんなら、あの幼馴染たち三人の方がよほど絵が上手いだろう。
でも少女は絵を描き続けた。いくら『下手くそだ』『もう描くな』と言われようと、受験時期になろうとも絵を描くことだけはやめなかった。半年間でスケッチブックはゆうに5冊以上。それ以外にもルーズリーフやノートの切れ端など、至る所に少女の絵が残されていた。そして、描いたものは毎日一枚以上、ネットに載せていた。
それはもはや、一種の執着心とでもいえるだろう。まるで、自分には絵を描くことしか残っていないかのような…そんな気持ちに囚われていたのかもしれない。
高校に入ってからも絵は描き続けた。毎日、らくがきも入れたら絵を描くことに費やしている時間は3時間以上。
シャーペンか、色鉛筆しか使わない少女の絵に虜になるファンはいつの間にか増えていた。線画はもちろん、色の付け方がとても上手く、特に少女が好んで使う青が多く入った絵は、本当に色鉛筆だけで仕上げたのかと思うほど綺麗だった。
少女が高校を卒業するくらいのときには、ゲームや歌のMVを数多く手がけている有名な絵師さんまでもが少女をとても高く評価した。
そんな、絵を描くことがすべてだった少女がある日を境に突然、絵を描かなくなった。ネットにも浮上しなくなった。少女のファンからは様々な応援や心配の声が聞こえた。
それでも少女がネット業界に戻ってくることはなく、時間ばかりが過ぎていった。
『今日が最後です。みなさん、心配ありがとうございました。』
月日が経ち、8月20日の日付が変わった午前0時。ようやく少女がネットに戻ってきた。だが、ファンの予想に反して少女が言ったのはたった、この言葉のみ。
少女は、どれだけファンが『やめないで』『もっとあなたの絵がみたい』と言われようとも無反応のまま、その日が終わろうとしていた。
誰もが、もう絵を載せないで終わってしまうのか、と残念に思っていた。
そして、日付が変わる1分前。
『今までありがとうございました。こんな私のことを応援してくださっていた皆さんのことが本当に大好きです。』
この言葉と共に、1枚の絵が載せられていた。それは、少女が最も好きで、よく使っていた青を基調とした絵。真ん中で涙を流しながら座っている女の子を中心にたくさんのものが、統一性もなく描かれていた。
昔から応援していたファンは思った。あぁ、これでもう本当に最後なんだ、と。
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