セーブ193 毛玉回収
向日葵畑に戻ると、毛玉が落ちていた。
よく大人しくしていたな、と思ったが、どうやら上着に絡まって動けなかっただけらしい。
俺を見るや否やぴいぴいとやかましく鳴き出す。
いなくなっていなかったことの安堵とやかましいと言う二つの感情を胸の中に押し込めてひょいと上着ごと毛玉を抱き上げれば、不機嫌そうに俺を見上げてくる。
そんな目で見んなと苦笑しながら絡まった上着を解いてやれば短い翼をぱたぱたさせてぴいと鳴いた。
興味深げにカトレアが毛玉を覗き込んで来たので見えやすいようにカトレアの目の前に毛玉を持ち上げる。
毛玉はぴいと偉そうに鳴いた。
カトレアはじっと毛玉を見たあと俺の手からひょいと毛玉を取り上げて、海竜の様に抱っこした。
やっぱり気に入ったか、と笑いながら、こいつの住処とかわかったりする? とダメもとで問えばカトレアはうーん、と少し困ったように毛玉を見たあと首を横に振った。
だよな、と苦笑しジペイに聞けばいいだろうと毛玉を眺める。
さて、この部屋にいる理由もなくなったしさっさと出ていきたいわけだが。
ここから出口まですんなり行けるとは思えない。俺を引き留めたがっているキメラも送ってくれるとは思えない。
カトレアに、出口までの道はわかるか? と聞こうとしたが、キメラがぴゅいぴゅい鳴いてすりよってきたため聞けなかった。
本当に、このキメラはなんで俺にここまでなつくのか。
「お前は俺に何をしてほしいんだ?
ここにずっといてほしいとかは無理だけど、そうじゃなくできることなら何でもするぞ」
よしよし、とキメラの額を撫でつつ苦笑すれば、キメラはぴゅいと鳴いてぐりぐりと頭を擦り付けてくる。
言葉が通じているのかなんなのかはわからないが、このままだと埒が明かなそうだ。
「ずいぶんなついとるさね」
そこでジペイの声がした。
ハッとして振り返ればいつの間にかジペイが立っており、興味津々とばかりに俺とキメラを見る。
そしてカトレアの抱っこしている毛玉を見ると、笑いだした。
「またこんなところにいるのか! 何回目さね?
よくギムレット達と出会えたな? にしても本当に懲りないやつさね」
わははと爆笑するジペイ。何か訳ありなのか。
とりあえず助かった、と安堵したのも束の間、不機嫌そうなキメラの唸り声が耳に届きがっくりと脱力したのは仕方ないだろう。
先程までの可愛らしい鳴き声はどうしたのた。やはり俺以外に懐かないと言うのは本当らしい。
ははは、と乾いた笑いが口から零れ、この先もなんか起きそう、とため息を吐いた。
しかし、何故ジペイはここがわかったのだろうか。謎が増えるばかりだ。