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セーブ189 キメラとの再会

 地上に戻るとジペイはこっちだと言って城の客間らしき場所に案内してくれた。

そこには特に変わった様子も反省した様子もない夜月を初めとしたダンジョンに飛ばされなかった連中が寛いでいた。と言うか大半がうたた寝をしていた。


 あれ、少しはなんか反省してるかなって思ったんだけどな。

布袋尊に関しては爆睡しているんだけどなんなんだろうか。


「大丈夫だった?」


 一番最初に俺らに気付いたのが夜月だった。

心配した様子もなくにっこりと笑って問いかけられた時はどうしようかなって思った。本当に。


 トトはそれでこちらに気付いたらしくハッと顔を上げたが、俺らを見てホッと安堵したように苦笑した。

多分トトの場合は俺らではなくカトレア単体の安否を気遣っていたのだろう。


 その二人以外は爆睡しており起きやしなかった。


「大丈夫だったけど…お前らは相変わらずだな」


 文句の一つでも言おうかと思っていたがあまりの緩みっぷりに言葉を失う。

ジペイはそんな俺の隣でからから笑っており、そうだと手を叩く。


「先程言っていたキメラ達を見に行くか?」


 その言葉にカトレアがぴくりと反応した。やはり気になるらしい。


「じゃあ、お願いしようかな」


 頷けば、ジペイはこっちだと歩き出す。

俺とカトレアだけでいいよな、と思ったが一応声をかける。


「ちょっとキメラ見てくるけどお前らどうする? 来ないなら大人しくしててくれよ?」


 俺の言葉に、空竜は一瞬行こうかと言うそぶりを見せたが疲れてしまったのかやっぱ行かないという様にソファーに腰掛けた。

 トトと夜月は興味があるのか、それともカトレアが心配なのかはわからないがついてくることになった。


◇◇◇


 城の廊下はぼんやりとオレンジ色の不思議な明かりに照らされており、そこまでは暗くなかった。

しかしどこかお化け屋敷の様な雰囲気が漂っており、歩くたびにコツコツと足音が響き渡るので少々不気味だった。

床は鏡のようにぴかぴかと磨かれており、とても綺麗だったため不気味さも半減している。


 ジペイがいくつか角を曲がっては進みを繰り返し、迷路の様な道をしばらく歩いていると銀色の扉が見えてきた。


「ここさね」


 ジペイが銀色の扉を開くと、そこはガラス張りの大きな部屋だった。

部屋、と言うには少々違う様な。森と言うか、草原と言うか。まず目に飛び込んできたのは緑で、月の光や星の光がガラスの天井を超えて降り注いでくると言うとても幻想的な部屋だった。


「地下でのキメラ達の生活環境は最悪だったのでな。綺麗な場所を用意してみたさね。

 これが大ウケでな。キメラ達も大人しく寛いでくれているさね。キメラごとに居る場所が違うし、この部屋は何せ広い。迷わない様気をつけるさね」


 ジペイが自慢げに話してくれたが、それも頷ける。

トトや夜月もほー、と感心したように声を上げている。カトレアはじっと空を見上げているが何かあるのか。


「鳥みたいな奴らってどこにいる?」


 気になるのがやはりあの無駄に懐いてきた鳥のキメラ達だ。

ジペイは鳥、と復唱し、それなら…と何か言いかけた。

そこでふと視界が陰った。


 何だ、と思う間もなくぼふっと柔らかい衝撃と共によろける。


「鳥の方から来た見たいさね。」


 からからと笑うジペイの声に目をあければ、いつぞや一番俺にひっついてきたシームルグらしき鳥だった。

相変わらずでかいなと思いつつわざわざよく来たなと驚いた。


 もしかして、カトレアが空を見上げていたのはこいつの気配を察知したからか? モンスターだしあり得そう。


 ぴゅいぴゅい鳴くシームルグらしき鳥は相変わらずで、図体にしては可愛らしい声だし何故か俺に無駄に懐いてくる。


「お前さん、そのキメラに何かしたのか?」


 ジペイがそんな俺とシームルグらしき鳥を見て不思議そうに問うてくる。

特に何もしていないけど…と困惑すれば、ジペイは首をかしげる。


「そのキメラはな、とことん人に懐かんのさね。

キメラ達自体が人を嫌っていると言うのもあるが、その中でも特に人を警戒して近寄ることすらできんやつなんだ。」

「うっそだぁ!?」

「嘘ならどれほど楽か。

そのキメラが落ち着くまですごい苦労したさね」


 ジペイがため息を吐くので、困惑する。

こんなに引っ付いてくるのに? 俺だけに引っ付いてくるの? なんで?


 じっと大きな瞳を見つめるがわからない。俺の何がいいんだ?


「ギムってやっぱり珍しいモノに好かれるんだよねぇ。

俺とかを筆頭に。いいんじゃないのかな、懐かせとけば。役に立つかもしれないよ?」


 夜月が他人事よろしく笑うので、そうは言ってもなと困惑する。


「とは言っても、俺はずっとこの国にいるわけでもないしなんなら死ぬ確率も結構高いわけで…。

キメラってやっぱり野生に帰すと色々まずいんだろ? 死ぬまで人の保護下だとするなら、俺だけに懐いてたら仕方ないだろ」

「そうだけどねぇ。やっぱり恩人ってのは変えられないんだよ」

「恩人?」


 夜月の言葉に疑問を持てば、夜月はぽかんとして、


「だって、ここにいるキメラ達の一部はギムとカトレアが助けたんだろう?

暴走しているところを止め、埋め込まれていた機械か何かを壊して解放したんだろう?」

「よく知ってるな」

「砂が知っていることは俺も知っているんだよねぇ」


 つまり、と夜月は笑って俺とシームルグらしき鳥を見る。


「ギムはそのキメラにとって恩人だし、キメラ達はやっぱり生き物同士を混ぜ合わせられているから記憶が混乱している。

 そしてキメラとして目覚めてから初めて認識した優しい生き物がギムになるだろうから、親みたいなものなんじゃない? よかったねぇ。そんな立派な子供ができて」

「何一つよくないんだけど。ソレイユだけで手一杯なんだけど」

「そこは空竜もカウントしてあげなよ。あ、あれは弟かな?」


 からからと笑う夜月をこれ以上相手していても仕方ないと区切り付け、ジペイにどうしようと言う目を向ける。


「そうさな。離れそうにないさな。

 ワシももう眠いし、お前さんはそのキメラと寝ればいいのではないか? そのキメラは大きいから布団代わりにもなりそうさな!」

「なあ色々おかしくない?」


 あんまりな言葉に脱力する。

 夜月はいいんじゃないとか言いだしているし、トトは珍しそうに俺に引っ付いている鳥をまじまじと観察している。

ここに俺を助けてくれる連中いなさそう…と期待はせずにカトレアを見れば、カトレアは完全に部屋の中を見ており多分今までの会話を聞いていないだろうと言う状態だった。


 諦めると言う選択肢が頭に浮かびつつも、元気そうなキメラをまだ一匹だけとは言え確認できて安堵したのは確かだった。

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