表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
194/287

セーブ188 脱出後の後始末

 ハートに散々怒られ、解放されたのはかなり時間が経ってから。

スペードが死んだ魚の目をしていたのには面白かった。


 俺は主に事故とは言えダンジョンに入ったこと、そしてダンジョンを破壊したことについてこんこんと説教された。ハートって怒ると本当に怖いのな。

地震雷火事親父とは言うが、親父レベルで怖いぞアレ。


 とは言え、俺はよくわからないままダンジョンに放り込まれたため説教はそれだけで終わった。

 スペードはと言うと、案内係の癖にこう言った事故を止められずダンジョンがバグっていると言うのにダンジョンに俺らを連れ込んだこと、そして破壊する許可を出した事だのなんだのをめちゃくちゃ怒られていた。

 その時だけは、隊長と副隊長が逆になっているように見えたのは仕方がないだろう。


 スペードが解放されるまでは一応連帯責任と言う事で解放されない予定だったが、すっ飛んできたジペイによって俺らは回収された。


「災難だったさな!

 しかし面白いな。まさかバグが渦巻く場所に飛ばされるとは!

しかもワシの作ったあの仕掛けが原因とは…このことが女王に伝わればまた女王にこっぴどく怒られるさな!!」


 からからとジペイは笑っているが、こいつは反省と言う事をするのだろうか。

しないのか。しないからこうもふらふらしているのか。


「呑気だな…」

「ワシはいつも呑気さね。

それより、よくそれで平気だな」


 ジペイがまじまじと俺を見るので何がと思わず返す。


「服さね。

川に落ちたと聞く。まだ乾ききっていない様だし寒くないのか?」


 それを言われてハッとした。

そうだ。一応絞ったりしたとは言え着替えていなかった。


「カトレアに空竜大丈夫か? 寒くない?」


 二人を振り返れば、カトレアは今更かとばかりにため息を吐く。空竜は濡れていない。そうだった。こいつは川に落ちてなかった。

 カトレアの服も生乾きと言った感じで寒そうだ。しかし本人はケロッとしているし大丈夫なのだろうか。


「や、ワシが聞いているのは一応人間に近いお前さんなんだが」


 ジペイが苦笑交じりに俺を見るので、俺は平気だけどと困惑する。

昔から、川だのなんだのに飛び込んだ経験はあるためこの程度では風邪などひかない。


「大丈夫だって。俺は丈夫だから」


 旅を始めてから熱を出した記憶もないし、免疫力は強い方だろう。

ジペイはそうかと笑って、とっとと地上に戻るさねと歩き出した。


 どこへ行くのかと思ったら、少し前にジョーカーが俺らを地上に送ってくれた場所だった。


「さて、戻るとするさね」


 ジペイは伸びをして魔法陣へと歩いて行く。


「…そう言えば、この地下都市は空間が捻じれてるって聞いたんだけど」


 ふと、ジョーカーから聞いた事を思い出して口にすれば、ジペイはそんな事かと苦笑する。


「この地下都市は、天罰から逃れるために生まれたものと言われているらしくてな。

 神に嫌われ天に嫌われているから、下手げに自然の恵み、神の恵みとも言われる魔法を使ったり魔法陣を書いたりすると爆発が起きるんさね。

日常生活に支障は全くない捻じれ方だが、魔法には最悪の捻じれ方をしているさね。」

「天罰から逃れるために生まれた都市…?」

「天罰から逃れようとしていたのが罪人なのか、それとも神に嫌われた能力者なのか、それとも神自身なのかはわからないままさね。

 でも、不思議なことに外から来た者が魔法を使う分には何の問題もないさね。

あくまで、この地に住んでいる者だけと言うおかしな法則ができているさね。」


 そう言われ、ハッとした。

 確かに、前の一件で俺は魔法を全力で駆使していた。

水魔法だのなんだのを鳥共相手にぶっ放していたが、何の問題もなかった。何故この矛盾に気付かなかったんだろうと思いつつも、この地に住む者は苦労するなと同情する。


「あ。じゃああの一件でお前が引き取ったらしいキメラ達はどうなったんだ?」

「ああ、それなら保護してあるさね。

王宮の一角にある保護区にいるから、見たいなら案内するさね。」


 保護区、と聞いて少しだけほっとした。

どうやら変な扱いは受けていないらしい。そもそも、変な扱いなんて受けたらあいつらも暴れるだろうけども。


「…お前さんたちが持って行ったキメラはどうしたんさね?」


 ジペイがじっと俺らを見るので、そうだ、とカトレアを見る。

カトレアは困ったように笑うだけなので戻ったらトトにでも聞こう。


「あー、トトが知ってると思う。」

「トトってのはあの悪魔か?

成程。聞いてみるさね」


 からからとジペイは笑って、戻るかと手を叩く。


「スペードはいいのか?」

「案内役として読んだだけさね。ワシが連れて行くんだから必要ないさね。

それに、ハートの邪魔をするとワシまで被弾する可能性がある。触らぬ神に祟りなしさね」


 慈悲なく切り捨てられたスペードに内心合掌しつつ、次会ったら慰めの言葉でも投げるかと心に決める。

 なんだかんだ言ってあいつが居なければダンジョンから出られなかっただろう。感謝もあるし色々言いたいこともある。一緒にいて楽しい相手ってのは認める。


「外はもう日が暮れ夜さね。

難しい話は明日にして、今日は休むといいさね。」


 ジペイのそんな言葉に礼を述べながら、ダンジョンに結構いたんだなとため息を吐く。

ダンジョンの中は初めてのことだらけだったため時間の流れがよくわからなかった。そもそも、バグの中だし数日経っているかとも思ったがそうではないらしく一先ず安堵した。


 戻ったら、好奇心旺盛な奴らに下手げにあちこちいじりまわすなって注意しとこうかな。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ