表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
192/287

セーブ186 反射の壁と打開策

「ここ!」


 空竜が止まったのは、開けた場所だった。

空竜が指さす壁には目立つものは何もなく、換気口らしきものも見当たらない。


「換気口は基本術で見えなくなっていると聞いているし、場所さえわかればいいだろう。」


 スペードが付け足す様にそんな事を言う。

そう言えば、地下都市に来るまでにも術がかかっていたな。


「この壁を壊すの?」


 空竜がコンコンと壁を叩きながら俺を見るのでそうなるな、と返す。

空竜はふうん、と壁を見上げて少し強めにガンと壁を叩いた。


 しかし、壁は一つも壊れなかった。


「ボクの方が痛いなんてすごいや」


 空竜が叩いた拳をひらひらさせる。見ると、少し赤くなっていた。

あの空竜の方がダメージを食らうとは。どんな作りになっているんだ。


「毒なら溶けるかと思いましたが、今の私は水魔法しか使えませんでしたね。

トトたちの力を借りることも禁止されているみたいですし。」


 カトレアが少々困ったように笑う。


「おかしいな。そこらの壁よりは頑丈にできてはいるが、空竜の力で壊れないとは」


 スペードもまじまじと壁を見る。

 空竜はまだ痛いのか、赤くなった手をさすっている。そんなに痛いのか、と水魔法で空竜の手を冷やしながら確かに結構腫れているなと驚いた。


「私、少し試したいことがあるので離れていてください。」


 カトレアが壁の方へ歩いて行きながらそんな事を言った。

何をする気だろう、と若干心配しつつ見送る。言われた通り少しだけ離れた場所に移動する。


 カトレアはコンコンと壁を叩く。そして先程サラマンダーにとどめをさした時のように手から腕を変色させていく。変色と同時に薄く水魔法を纏わせている。

 先程渡した鎌の柄で壁を一度ゴン、と叩く。そこへ間髪入れずに拳を叩きこみ、即座に右斜め後ろに飛び退いた。


 なんで飛び退いた、と不思議に思った直後、殴った壁の反対側にある壁がものすごい音と共に木っ端微塵に砕け散った。


「…え…こわ…」


 砕けたのは別にいい。だが、サラサラとした状態まで砕けたのだ。

何が起きたのかは何となくわかる。カトレアの殴った衝撃が、反射して向かいの壁にぶちあったったのだろう。


「…なるほど、その壁は反射するのか」


 俺がぼんやり思うと同じくスペードが納得したように声を零した。


「だから空竜が負傷したんだな。

自分の力がそのまま跳ね返って来たからここまで腫れたって事だな。」


 やっと赤みの引いてきた空竜の手を見つつ恐ろしい事しやがるとため息を吐く。


「反射がバグのせいってわけじゃないなら、ジペイの策かな。

ダンジョンを破壊しようとする様な頭のおかしいヤツ百人に一人くらいいるだろうし」

「そうだな。このダンジョンは完璧すぎる故に色々面倒な輩が集まりやすいとハートが嘆いていたな。」


 ははは!とスペードが笑いながら教えてくれる。

完璧すぎるといらない反感まで買うってやつか。大変だなとため息を吐きつつ、大人しくなったカトレアに大丈夫かと声をかける。


「…この壁、反射はそうだけど反射と同時に衝撃を上乗せされています。

多分私が全力でこの壁を殴ったらギムたちは消し飛ぶ威力を反射してくると思いますよ」

「怖い事言うなよ」

「事実ですから」


 そもそもカトレアの純粋な全力だけでも消し飛ぶと思うんだけど、と付け足せばカトレアは否定も肯定もせずに聞き流す。

成程。消し飛ばすくらいの力はあると言う事か。


「どうする? これでは仮に壊れたとしてもワイらも無事ではいられないな」


 からからと笑うスペードに、笑いごとかとため息を吐く。

カトレアはうーんと考え込み、粉々になった向かいの壁と反射する壁を交互に見る。


「この壁の術を向かいの壁にコピーできれば、一度どちらかの壁に衝撃を与えれば反射が繰り返されて上乗せされ続ける衝撃に耐えきれずにこの階層が吹っ飛ぶとかはありそうなんですけどね。

 コピーする魔法なんて発見されていませんし、見た感じ能力として持っている人は今ここにはいなさそうなんで無理ですね。


 それに、うまく行ったとしても私たちも無事じゃすみませんね、これだと」

「カトレアって昔に比べて結構えげつない事言う様になったよな」

「昔からこう言う考えは持っていましたよ。ただ、口にしなかっただけです。

だって口にしたらギムが怒るでしょう。無駄に過保護でしたから」

「怒る前に驚いて言葉を失うと思うぞ」

「はいはい」


 げっそりと返せば、カトレアは楽し気に笑って振出しに戻りましたねと話を切り替える。


「うーん、この壁のその反射とか言うのが内部側だけなのか、外側もなのかがわかればボクどうにかできると思う!」


 そこで空竜がぴんと手を挙げた。

何をする気だ、と空竜に訪ねれば、


「この壁の向こう側って、外が近いんでしょ?

なら外の風を集めて、巨大なエネルギーにして外から破壊するの!

 でもそのエネルギーってやっぱりすごい強いものだから、外側にも反射って言うのがあるのなら外が更地になっちゃうなって」


 反射って厄介だね、と空竜が顔をしかめる。

 外のモノを操って壊すと言う発想はなかった。できるとは思わなかったの間違いか。

 だが、ここには空竜がいる。できるんだったなと反省する。視野が狭くなってるなと自分に呆れつつ、スペードに外側って反射するのか? と聞けば、


「そこらは知らん。

ハートが知っていると思うぞ」


 からからと笑う。

使えないなと頭痛を覚えつつ、外側には反射はない気もするが一概にそうとは言えない。

どうやって調べるかとため息を吐く。


「小さなエネルギーをぶつけてみて、試してみればいいのでは?

反射して、衝撃を上乗せされても被害が出ない程度のエネルギーをぶつけて壁の音を聞くんです。


 反射する壁だと、ぶつかった時の音はしますがそれだけです。どんなに小さなエネルギーでも反射と言うものが無ければ少しは壊れるんです。

壁に耳を付けて、壊れる音がするかどうか聞き分ければすぐにわかると思いますよ」


 そこでカトレアが策をくれた。

やっぱりカトレアがいると話の進みが速い、と感謝しつつ空竜にできるか?と問えば、


「まっかせてよ!」


 ぱっと笑って引き受けてくれた。

 よかった。これでどうにかなりそうだ。と安堵しつつ、これで外側にも反射があったらどうしようと思わず苦笑した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ