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セーブ171 奇妙な神社

「面白いものがあったよ」


 色々悩んだ末にシンプルなデザイン…しかし手の甲の部分に少しだけ独特な刺繍の入っている物、長さは俺のものと同じものを選び外に出てみれば、夜月が戻っておりひらひらと袖を揺らしながら笑った。


 出てきた俺をちらりと一度見たカトレアはため息をついていた。

トトはにこにこしており、空竜はすぐに俺の側に駆け寄ってくる。


「面白いもの?」


 ぽかんと夜月を見ると、そうそうと笑って手招きされる。

なんだろう、と駆け寄って来た空竜と顔を見合わせとりあえず着いていくことになった。


◇◇◇


「ここ」


 夜月に連れられて来たのは賑わった場所から少し離れ、静かな場所。

そこには真っ白な屋根に真っ赤な壁の少々奇妙な神社があった。

 屋根は神社の流造なのに、扉や壁はレンガ造りで神社として成り立っていない様にも思える奇妙な建物。

神社もどきの回りにはオレンジと赤、そして真っ白な植物がちらほらと植えられており、神社もどきの場所は大理石の様な地面になっている。


「…神社、もどき…」


 思わず呟けば、夜月はからからと笑う。


「本当だよねぇ。

日本の文化をこうも歪ませるとはねぇ。

アートと言うのかなぁ。」


 夜月の口からも出てきた日本そ言う言葉。

やはりこの世界にもあったんだと再度実感させられる。


「それで…この建物の何が面白いので?」


 トトがおずおずと夜月に問えば、夜月はひらひらと袖を揺らしながらまた笑う。


「ここの神社ね、俺や君みたいな上級のモンスターでもわからないくらいにカモフラージュされてるけど、モンスターが一本踏み込んだら消し飛ぶんだよ。

見てて」


 夜月はふらふらと敷居の境目に手を入れる。

途端、敷居の中に入った夜月の手が消し飛んだ。


「ちょっ、」


 デジャヴを感じながらも、なにしてんのと声が出る。

当の本人は、ほらねぇ、と神社もどきを指差しながら笑う。


 消し飛んだはずの夜月の腕はさらさらとどこからか砂漠の砂が現れてもとに戻っていく。


「夜月様ですら呆気なく消し飛ぶ程とは。

迂闊に入ったら死にますね」


 トトが少々面倒そうに神社もどきを見る。

うん、だからね、と夜月は俺を見て笑う。

なんだ、と怪訝に思いつつも次の言葉を待つ。


「この場所、うまく使えばカトレアを元に戻せるかもしれないよ。」


 ひら、と夜月の揺れる袖と同じくさらりと言ってのけた夜月。

ぽかんとして神社もどきと夜月を交互に見る。


「ぼーっとするでない阿呆!!

 つまりだな! この場所はモンスターのみを消す力がある! だからそこの小娘の中にあるモンスターとしての小娘だけを殺せれば元に戻ると言う簡単な仕組みだ! このくらいわかれ馬鹿者!!」


 おとなしかったカイがすこーんと体当たりをしてきながら呆れたように捲し立てる。


 こいつ今殺すとか言ったか。


「俺、いくらモンスター絶対殺すマンでもカトレアは殺せないぞ」

「貴様が殺すわけではなかろう!」

「例えモンスターだとしてもカトレアが死ぬのはすごい困る」

「本来の小娘は死なんわ阿呆!!」

「でもカトレアが死ぬのは困る」

「埒があかんな!?」


 どんな形であれカトレアが死ぬのは困る。

 でも、カイの言う通りモンスターのカトレアを殺さないと元に戻らないのなら、俺はその選択を迫られたときどうするのだろう。


 カトレアを見れば、カトレアは少々嫌そうに神社もどきを見ている。


「カトレア自信は今のところ元に戻る予定はないみたかだから、やめた方がいいと思うよ。

 俺らがあーだこーだ言っても、このやり方をとる場合は本人次第ってとこもあるからねぇ。

ま、選択のひとつとして覚えていてほしいだけだからあまり考えなくていいと思うねぇ」


 ぎゃんぎゃん騒ぐカイをひょいと捕まえながら夜月は笑った。

なんか意外な一面を見た気がする。

夜月って自分から色々動いてはくれたが、カトレアの事まで考えてくれているとは思わなかった。


「夜月のことです。どうせ気まぐれですよ」


 脳内にクリアネスの声が響いた気がした。

クリアネスの言う通り、気まぐれだとしても。

俺にとってみれば有難いので問題はないだろう。


「カトレア次第か。

一番手っ取り早く人間に戻れそうな方法ってとこか?

なんにせよ、ありがとう。希望が見えた」


 内容は頷けないものだが、カトレアを戻せる手段はあったと言うわけだ。


「あとの方法は簡単にふたつ。

ハックを倒すかハックにどうにかして貰うか…。

最終手段は…まあ、後でいいかなぁ」


 夜月はふたつめを言いかけてやめてしまった。

なんだ、と不思議に思って続きを促そうとした時。

不自然に風が吹いた。その風がやけに嫌なもので言葉は出なかった。


 面倒事が起きるな、とどこかで直感した反面、感じたことのない嫌な風に少しだけ興味を持っていかれた。

 何が起こる事やら。そしてジペイは一体どこにいるのだろう。

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