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セーブ167 薔薇園の薔薇

 薔薇園を少し歩いていると、見覚えのある城が見えてきた。

前地下都市から出た時に居た城だ。どうやらここは城の裏にある大きな薔薇園らしい。


「城についてのは助かったけど…マジモンの不法侵入になったな…」


 今更だが、流石に城の中となるとやばい気がする。


「この国の王様とお知り合いなのなら大丈夫では?」


 呑気に笑うトトに若干流されながらも、とりあえず騒ぎになる前にジペイに会えるといいなと苦笑した。

カトレアはこの場所が気に入ったらしく機嫌よさげに薔薇を眺めている。


「カトレア、ジペイを探しに行くぞ?」


 声をかければ、少々名残惜しそうに薔薇を見た後こちらに駆けてきた。


「王がいるとしたら城の中だろうな。

どちらにせよ見つかる運命なのではないか?」


 そこでカイがふむと腕を組んだ。

いや、そうでもないんだよ、とカイに言いながらふらふらしていたジペイを思い出す。


 ジペイは実に自由な王だった。

 案外城の外をまたふらふらしてるんじゃ…と思いつつ、ハートはRookにいると言っていたしと言われたことを思い出す。


 まずはRookを探してみるか、と考えをまとめながら、探すと言えばやはり城に入らないととぐるぐると思考が堂々巡りを始める。


「考えても仕方ありませんし、まずはこの薔薇園を見て回ってみませんか?

ここまで来る間には誰も見かけませんでしたがもう少し探し回ってみてもいいと思います。」


 主様もお気に召したようですし、とトトが笑って薔薇園を見渡す。

確かに、まだこの薔薇園はちゃんと探していない。

いきなり城を探さず薔薇園を探してからでもいいだろう。


「じゃあ、とりあえず手分け…はしなくていいや、なんか二度と合流できなそうな面子だし…。

薔薇園ぐるっと回ってみるか」


 俺の言葉に空竜は楽し気にはーいと返事をする。

カトレアはもうしばらく薔薇園にいられるのが嬉しいのか機嫌よさげに海竜を撫でている。


「なあカイ」

「なんだ」

「海竜ってそろそろ自分で歩かせた方が成長に良くないか?」

「いきなり何を言うかと思えばなんなんだ貴様は!?」


 常に抱っこされてる海竜の精神年齢がどのくらいなのかは知らないが、抱っこ癖がついたら大きくなった時困るのでは、と思い海の精霊であるカイに言ってはみるが呆れ果てたようにため息を吐かれてしまった。

 俺おかしい事言ったかな。


◇◇◇


 薔薇園は想像以上に広かった。

こんな薔薇園ってある?と言う程に広く、見たこともない様な薔薇が沢山あった。


「緑色の薔薇に紫の薔薇…」


 元の世界では見たこともない薔薇が沢山あって、ここはおとぎ話の世界かと言う程だった。

空竜も珍しそうに薔薇を見回っている。


「どうやら、ここの薔薇は魔力を持っている人工的に作られた薔薇の様ですね。

紫色の薔薇は毒の魔力を感じます。薔薇一本一本が意思を持って生きている、と言う感覚ですね。」


 トトがさらりと恐ろしい事を言う。


「えっ、じゃあこの薔薇って人食ったりするの?」

「阿呆! そんな人食い植物がこんなところにあってたまるか!!!」


 べちっとすかさず体当たりをしてくるカイ。


「人食い植物って俺見たことないけど」

「もう随分昔に滅んだわそんな危険なものは。」


 昔はあったのか、と思いつつじゃあこの薔薇は一体とまじまじと薔薇を見る。


「意思とは言いましたが、そんな大した知能は持っていませんよ。

 他の花より賢い、といいますか危険が迫ると魔法を放つだけしょうね。

私も初めて見るので何とも言えませんが…危害を加えなければ何もしてこないかと思いますよ」


 トトが楽し気に笑う。

人工的に魔力持ちの植物を作ってしまうこの国はやはり恐ろしいな、と思いつつ、なんでまたこんな事をしているんだと不思議に思う。


「ふん、魔力を秘めた植物の蜜などは魔力を上昇させるのにも使えるからな。」


 タイミングよくカイが偉そうにふんぞり返る。

魔力を上昇? と今ひとつピンと来ない。


「つまり、強化アイテムみたいなものです。

 10の魔力がこの花の蜜を飲むと11になるみたいな。

大量摂取をしたらいきなり上昇した魔力に血管が耐え切れず破裂でもして死ぬと思いますけど」


 簡単に説明してくれたトトに感謝しつつ、結構えげつない事言うなと苦笑する。

魔力っていきなり上昇したら血管破裂するのか。恐いな。


「魔力とは体力とイコールしている。

 体力がつけばつくほど魔力は上昇する。体力に見合わぬ量の魔力を持つとまず疲労が出る。次に筋肉痛や体の節々が痛くなり熱が出る。さらに行くと体がマヒしてそこからまた悪化すると血管が破裂するんだろうな。

 体力を上げつつ少しだけ体に負荷のかかる程度の魔力を持ち鍛えるとぐーんと強くなると昔聞いた事があるが…その鍛え方はやはり体に負担がかかりすぎるらしく短命になってしまうと聞いたな。」


 ふんふんとカイが思い出す様に教えてくれる。

トトもそうですね、と笑って


「魔力をこうも使える生き物は、最初はモンスターだけでしたものね。

 人間の体に魔力は元々毒と聞いていましたし。それが当たり前のように魔力持ちが生まれているこの世の中。変わりましたねぇ、随分と」


 懐かしむように目を細めた。

へえ、と聞きながらもしこの世界が元の世界の遥か未来ならたしかにそうだなと納得する。

俺の生まれた時代に魔力や魔法、魔術のまの字もなかったし。


 トトの言う通り、本当に変わったなとぼんやりしながら、空竜が何か不思議そうに見ていたのでそちらを探索してみるかと歩き出した。

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