セーブ166 地上へ
「そーでは上に送りまーが、地下で何かやり忘れたこととかありましょーか?」
魔法陣をちらりと見ながらジョーカーが笑う。
やり忘れたこと、と言われると特にはないが、聞きたいことはひとつある。
「前騒ぎを起こしたキメラ達はどうなったんだ?」
先程ハートに会えたら聞こうと思っていたが、会えそうにないので知っていそうなジョーカーに聞くことにした。
ジョーカーはぽかんとし、そしてああ、と頷いて、
「ジペイさんがぜーんぶ引き取った聞きまーし。
これから会うんでしょーからその時聞くといいでしょーな。」
国のことはトップに聞くのが一番速いでしょーぞとジョーカーは笑う。
ジペイに聞くことが増えたな、と思いつつ、俺はもう地下都市に用はないのでカトレアたちを見る。
「お前らは、大丈夫か?」
まあ、やり残したことがあったとしたなら、また来ればいいだけの話なのだが。
そうほいほい来れるのかは疑問だが、どうしても来なくてはならないなら来ればいい。
「私は思ったより楽しめましたので大丈夫ですよ」
「俺様も別になにもないが」
「ボクスペードは嫌いだけどジョーカーは好きかもしれない!」
各々平気そうだ。
カトレアも海竜を撫でていて、特に用事があるわけでもなさそうだ。
「大丈夫っぽい」
苦笑すれば、なら送りましょーね、とジョーカーは笑って俺らに魔法陣の中に入る様促した。
魔法陣の中に入ると、若干下から押されているような感覚があった。
「魔法が発動しているので圧がかかっているんですね。
ギムレット様の魔力と反発しあっているのでしょう。
この魔法陣、相当強い魔力を発していますので普通なら反発などせず押し切られるのでしょうけど…ギムレット様はやはり強い魔力をお持ちの様ですねぇ」
不思議に思い魔法陣を見ていると、察したのかトトが教えてくれた。
トトってなんだかんだ言って人の気持ちを先読みして色々教えてくれるからすごい有能だよな。
「成程。
トトとかもあるのか、こう言う感覚」
「地面に足を付ければあるかもしれません。
ですが私の魔力は基本的に"貫通型"ですので多分ほぼほぼ外からの魔力による影響はないかと」
「貫通型?」
にこにこと笑うトトの言葉にふと疑問を覚えるが、そこでジョーカーの、
「お気を付けてお行きなーい。」
と言う声が聞こえた。
「どうせすぐまた会う事になると思うが、気をつけるといい」
「バイバーイ!」
ひらひらと手を振るスペードとダイヤ。
スペードの言葉に嫌な予感を覚えつつも、
「ここまで送ってくれてありがとう。助かった」
ひら、と手を振り言葉を返す。
同時に、魔法陣が光った。
ぐわんと下からの魔力が一気に嵩を増した。浮きそう、と思うがそれも一瞬だった。
「見事な転送魔法だな!」
カイの言葉と共に光が消える。
そこは、先程の場所とは違い、辺りにはいろいろな色の薔薇が咲き誇っている場所だった。
足元には先ほどと同じ魔法陣が描かれているが草でよく見えず、パッと見何もない様に見える。カモフラージュのつもりなのだろうか。
さわりと吹いてくる風は地上のもので、空も偽物ではなかった。
どうやら地上に戻ってきたらしい。
「綺麗な薔薇園ですね」
トトの言葉に改めて周りを見ると、色々な色の薔薇が美しく咲き誇っている。確かに、初見では目を奪われる美しさだ。カトレアが好きそう、と思いつつカトレアを見ると、やはりきらきらと薔薇園を見つめている。
薔薇は色ごとに分けられており、真っ赤な薔薇は上から見ると薔薇の形のように見える様に植えられている。
青の薔薇は海のように広く植えられており、黄色の薔薇はハートの形に見えるよう植えられている等結構凝ったことをしている様だった。
「でもなんで薔薇なんだろう。」
空竜が不思議そうに薔薇園を見渡しながら問うてくる。
「さあ…ここの持ち主が薔薇厨とか?」
「雑な推測だな」
適当に答えれば、カイが呆れたように睨んできた。
いやだって。わからないじゃん会ってみなきゃ。
「そもそもここどこだろう」
ジョーカーに肝心なことを聞くのを忘れていた。
転送先がどこなのかと言う事を。Rookのどこかなのだろうけど、本当にここは何処だろう。
貰った地図には地下のことしか書いていないし。
さて、どうしたものか。
いきなりぶち当たった問題に現実逃避をしたくなりつつ、とりあえず場所把握のためにカイに空から見てきてもらおうかなとため息を吐いた。