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セーブ163 占い師・ペテン師

「あの魔法陣、別にワタシ以外も使おー思えば使えーすよ。」


 魔法陣の場所に向かいながら、ジョーカーがからからと笑った。

え、そうなの、と思わずジョーカーを見れば、ジョーカーは頷く。


「ワタシとジペイさん、あとはもう一人のジョーカーさんは使えーすよ。

ワタシ以外のお二人さんは基本地下都市におりゃーせんし、現実的に考えてワタシしか使えーせんってことになってまーが。」


 ジペイともう一人のジョーカーとこのジョーカーの関係が今ひとつわからないが、結局はこのジョーカーに頼ることしかできないんだなっと苦笑する。


「あの魔法陣は普通のものよりも随分めんどくさい仕掛けが施されていましたし、下手げに素人が触ったら腕一本消し飛びそうでしたね」


 トトが何気なく言うので、あれってそんな危険な物だったの!? と思わずトトを振り返る。

トトはケロッとして頷く。


「ええ。

下手げに触ると魔力が逆流して最悪死にますね」

「あんな保険をかけるくらいなら毎回普通の魔法陣を書いて使い終わったら消せばいいものを」


 トトの言葉に続くようにカイが全くと腕を組む。

ジョーカーはにこにこと笑って、そうもいきゃーせんなとため息を吐いた。


「この地下都市はちょーとばかし空間が捻じれてーしてな。

ほいほい魔法陣だのなんだのを書くと爆発が起きかねーせんのよな。面倒な都市でしょーぞ」

「空間が捻じれている?」


 初耳すぎる真実に思わず聞き返してしまう。

ジョーカーは副隊長さんから聞ーてせん?と驚いたように俺を見る。魔術だのA隊のことだのは聞いたが都市のことは詳しく聞いてない、と返せば、うーむと少し考え、


「この国も色々ありーしてな。

元々はそーことなかったんでしょーけどな、いつからか地下はぐわんぐわんと空間が捻じれ右往左往してまーて。」


 よー覚えてりゃーせんが、とジョーカーは笑う。

カイはふむ、と腕を組んで少し何か考える様に大人しくなった。


「まー、ジペイさんに聞きゃーよろし。あの人ならなーでも知っとーますからな」


 ひら、と袖の余った服を揺らしながらジョーカーはそう言い、それ以降は国の話はあまりしなくなった。

 空竜はそんなジョーカーをやはりまじまじと見ている。会ったことがあるのか? と思いつつも向こうから話してくるまではそっとしておこうと思い特には聞かなかった。


◇◇◇


「隊長さんにダイヤさんはまだ来とーないみたいですなぁ」


 魔法陣の場所に戻ったのはいいが、別れた二人がまだ戻ってきていない。

 そもそも、ジョーカーを見つけたと伝えていないのだから当たり前か。スペードは一通り探し終わったらきっと屋敷に来るだろうが、待たなくてよかったのか。


「ワタシから言っとーますから、ギムレットさんたちは先に上に行くといーですよ」


 ふむ、と辺りを見渡してジョーカーはそう笑う。

いいのか、と思いつつも礼を言っていないし待つよと返せば、なら待ちましょーかとジョーカーは笑った。


「…以前よりずーと変わりーしたね、ギムレットさん。

カトレアさんはモンスターなってまーし。何があったかは聞きまーが、苦労しなすっってまーな」


 戻って来てから、海竜を地面に降ろして寝転がっている海竜を突っついているカトレアを見てジョーカーは苦笑した。

苦労ってほどじゃないし、楽しいから問題ないんだけどな、と笑えば、ジョーカーは少々考え、


「まー、思いつめるよりはずっといーでしょーが…」


 上手く言えないが、という様に笑う。

ジョーカーは何と言うか不思議だ。モノクロで何を考えているかよくわからない、常に笑っているが一定の距離は保っている。

 読みにくい、と言うのが正しいのか、それとも踏み込みにくいと言うのが正しいのかはわからないがこの人と話しているといつものテンポを崩される。


「暇つぶしに、占いでもしましょーか。」


 いきなりジョーカーはそう言ってどこからかトランプを取り出した。

唐突だな、と目を白黒させつつ、何の占いだと首をかしげる。


「何の占いがいいでしょーか?

災い、幸運、不運、恋愛運なんでも占えましょーぞ」


 にこにことジョーカーは笑いトランプをひらひらとさせる。


「占いはアテにならないのに、なんで占ったりするの?」


 そこでずっと大人しかった空竜が不思議そうにジョーカーの持つトランプを見て問う。

占いはアテにならない。随分ズバッと言うなと思いながらオブラートに包めと苦笑する。


「そーですねぇ。なんで、と聞かれると好奇心故、とお答えしまーな」


 気にした様子もなくジョーカーは楽しげに笑う。

 そして、バラっとトランプを空竜の目の前に散らした。おいおいそんな雑な扱いしていいのか、と内心困惑する。


「例えば、この落ちたトランプで、表が見えない状態のトランプの中にジョーカーがあるとしまーな?

そのジョーカーはどれか。とか言う遊びから始まって、カードで占って当たるかどうかと言うものになりましょーな。」


 楽し気にジョーカーは一枚の裏返ったトランプを持ち上げる。

そして表面を空竜に見せる。それはKで、ジョーカーではなかった。


「はずれじゃん」


 不思議そうにそれを見つめて空竜はジョーカーを見上げる。


「そー。結局占いは確率なんでしょーや。

 その確率をいかに上げるか、そして信じられるか。そんな出鱈目な確率をどのくらい相手に真実と思い込ませるか。

本物の占い師もいるにはいましょーが、大半は嘘っぱちなんでしょーぞ。


 占いの詐欺(タネ)ありがマジックと言-ばわかりやすいでしょーかな?」


 占い師はペテン師でしょーや、とジョーカーは笑う。


「じゃあ、ジョーカーもペテン師?」


 裏返ったカードをひっくり返しながら空竜は不思議そうに問う。

ジョーカーは少しだけ黙って、にっこりと感情の読めない笑顔を浮かべた。


「アナタさん方次第でしょーな。

結局、アナタさん方次第でどーとでもなりましょーな。

人も、世界も、何もかにも」


 要は視点なのでしょーや、とジョーカーは笑って散らばったトランプを集め出した。


 ジョーカーのその言葉がやけに頭に残ったのは、何故だろうか。

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