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セーブ162 世界の歴史

 屋敷にきたはいいが声をかけても誰も出てこない。

そして入り口は鍵がかかっていない。どうしよう。とため息を吐けば、


「入ればいいではないか。あのスペードとか言う小僧に屋敷を探せと言われたではないか」


 カイがなにをぐずぐずしているんだと首をかしげる。

まあ、そうなのだけど、勝手に人の家に上がり込むのは気が引ける。日本人の性か。いや、日本人じゃなくてもそうか。


「そう言えば、お前ら日本って知ってる?」


 ふと思い浮かんだ疑問を口にすれば、カイやトトはぽかんとする。

空竜はきょとんとしているし、カトレアは聞いていなかったのかぼんやりと都市を見下ろしている。


「日本?」

「日本、ですか?」


 カイが復唱し、トトがそれをまた復唱する。

この様子だと知らないのかな、と苦笑すれば、


「確かに、大昔この世界にはそんな島国があったな。」

「ええ、随分と昔の話ですので考古学者の方以外の口からその名前が出るとは思いもしませんでした。」


 思いもよらない言葉が飛んでくる。

はっ?と思わず二人を凝視する。


「なんだ、貴様歴史なんかに興味があったのか」

「意外ですねぇ」


 からからと笑う二人を他所に、俺の頭は酷く冷静に混乱していた。

 あれ? 俺はまだゲームオーバーになってないんじゃなかったか? それなのに、こいつらは元の世界が滅んだあとの様な事を言っていないか?


 歴史、と言うと元の世界にいたハックが興味を持っていたことと結びつくが、あのハック自体がもしかしたらヒントなのか?


「ま、待て待て。どういうことだ?

日本が滅んだ?」

「うむ。

 魔法や魔術が世界の流れを左右する様になったせいで昔の文化は滅んだのだ。

魔法や魔術の影響で魔素が活性化してこの星自体を造り変えたのだ。古の分化は滅び新たな文化が栄えたのだ。


 もう数百…下手したら千年も前の事だから俺様もよく覚えておらんな」

「私、フランスって国の響き好きですよ。

 洒落た国だったと聞いていますし、そう言った大昔の街並みなどもまだ伝わっていますからね。」

「騎士だのなんだのの剣術の原点は日本の侍だったか。

滅んだ文化のはずなのに地味に生きてこの世界に浸透しているのも面白いな」


 ぺらぺらと二人の進む会話を聞いていて眩暈がしてくる。


「な、なあ、じゃあこのアピロ地方って元々はなんの国が栄えていたんだ?」


 嫌な汗がじわじわと出てくる。


「なんだったか。

 日本か中国だったはずだが。大陸の形も変わったし、大陸同士がくっついたりしたから元々何があったかなんてわかるまいな。」

「アピロ地方は元々日本のはずですよ。

 そのせいで剣術が濃く伝わる地方と言われているはずですし。あれ、これは数百年前の情報でしたっけ?」

「俺様もそう言った歴史に興味がないから覚えとらんな」


 アピロ地方は、元々日本があった場所だった可能性が高い。

 なら、四季の森で見たあの滅びた街はなんだ? 本当に、滅びたのか? だが、数百も前に滅んだものがああも綺麗に残っているか? しかも俺の住んでいた街だけ。

あそこの部分だけが警告で現れたと聞いたが、二人の話を聞いていると矛盾が生じる。


 今すぐハックに色々問い詰めたい衝動に駆られながら、頭を整理しようと深呼吸する。


「顔色が優れない様ですが、大丈夫ですか?」


 トトが心配そうに覗き込んでくるので、大丈夫、と笑って目を逸らす。

アピロ地方が元々日本だったと言う情報のインパクトのでかさゆえに今現在やるべきことを忘れかけるところだった。


 日本が滅んだとかそう言うのは一旦置いておいて、まずジョーカーを探さなくては。

落ち着いてからでないとちゃんと考えられない。


「珍しぃ賑やか思っとーば可愛らしーお客さんですなぁ。」


 そこで、ぎぃ、と扉が開いた。

ハッとして振り返ると、やはりあの時見たモノクロの男が立っていた。


「よく見ーやギムレットさんもいましょーし。

何かご用でしょーか?」


 向こうも俺の事を覚えていたらしい。にこっと笑って出てくる。


「用っつーか…ええと、ジョーカーさん、でいいか?」


 まずは確認しなくては。

問えば、男はそーそーと緩く頷く。


「もしかしてワタシのことぉ探してました?」


 から、と笑いながらジョーカーは聞いてくるので、どこまでわかっているんだと少し不気味に感じつつそうだと頷く。


「副隊長さんから連絡きたのはそう言うことでしたか」


 何やらぶつぶつと少し呟き、ジョーカーはぱっと笑う。


「魔法陣絡みと予想しーすが当たりでしょーか?」

「大正解です」


 頷けばジョーカーはりょーかいしーしたと頷き、じゃー行きましょーかと歩き出す。

 A隊ってなんかすごいすんなり色々行動してくれるけど警戒心なさすぎない? と内心困惑しつつ止める理由もないので大人しくついて行く。

空竜は珍しくジョーカーに興味でも持ったのかまじまじとジョーカーの後姿を見ていた。


 …あれ、ジョーカーをあっさり見つけられたのはいいんだけどスペード達にどう報告すればいいんだろう。まあ、いいか。

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