表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セーブデータをお探しですか?  作者: 卵粥
アサーティール王国編
16/287

セーブ11 VS海竜

 崖に来ると、気持ちの良い風が吹いていた。

昨日の荒れっぷりが嘘の様な穏やかな海。

 先ほど飛び込み海中がとても綺麗なのを知っているためまた違って見えてくる。


「カイ、カトレアってどの辺にいた?」

「そんな細かいところまで覚えとらんわ馬鹿者!!」


 俺の肩に腰掛けているカイは人間は細かくて話にならんわと吐き捨てている。


 崖っぷちに立ち海をまた覗き込む。

危ないよと言うラベンダー達の声を無視して海を凝視する。


 どうすれば海竜に会える?

暴走していてもいい。どういう状態でもいい。とにかく会って話がしたい。


 と、そこでいきなり海が荒れだした。

海は下にあるのに、上からいきなり滝の様に水が降って来る。


「ちょっ、ギム!!」

「旦那ぁ!?」

「っ!?」


 勿論俺は海に落ちる。三人の慌てた声が聞こえたがまあいいだろう。

エルフの起こしたあの荒波とは気配が違った。

 きっと海竜の仕業だろう。


「おい大丈夫かギムレット!!」


 海の中でカイの声が聞こえる。

 ああそうか。俺の肩に居たこいつも一緒に落ちたんだっけ。

海の精霊だけあって海の中でも喋れるらしい。


 息はまだ持つが、早く海面に向かおうとする。

 が、それと同時に海流の渦の中に閉じ込められてしまう。


 どうしたものかとカイを見れば、


「貴様!! だからあれほど俺様と契約しろと言っただろう!!

手のかかるやつだな!!!」


 ふんっとそっぽを向かれた。

拗ねてる場合かよと呆れつつも剣の柄に手を掛ける。


 渦の向こうから、視線を感じる。

きっと海竜だろう。


 殺気に似たようなその視線の気配。

エルフに操られているのならまあ納得だ。


「おい貴様まさか海中で戦うつもりじゃないだろうな!!

海相手に海中で勝利しようなんて不可能にもほどがあるのだからな!!」


 ぎゃいぎゃいと騒ぐカイ。うるさいなと言いたいが喋ることはできない。

 それにどうやって海から出ろと? 海流の渦からどう出ろと?

俺はテレポートなんて使えない。


 あれ、そう言えば俺って水属性じゃなかったっけ?


 魔法はそこまで得意じゃないが、うまく使えばどうにか脱出できるのではないだろうか?

息もそろそろやばそうだし、どう使うか。


 海流の流れを断ち切れば、もしかしたら行けるのではないか?


 剣を抜き、剣の周りに小さな海流を作る様念じれば小さな海流が剣先をぐるぐると回る様に現れた。


「お、おい何をする気だ?」


 カイの声を無視して、足裏で海水を爆発魔法で爆発させる。

勢いをつけ海流の渦に斬りかかる。


【爆発操作、海流切断を獲得しました。】


 頭に機械的な声が響く。

よくゲームでありそうな声だ。やはりゲームの世界みたいだなとこんな状況でも思ってしまう。


 想像したほどではないが、海流は切れた。と言うか、別の海流が海流に交わり一本の海流が乱れ海中は荒れだす。


 もしかして、結構やばいことしちゃったかもと思った次の瞬間、腹になにかが打ち込まれる。

痛みで思わず息を吐き出してしまう。

 ぼやける視界に映ったのは綺麗な青の鱗に纏われた尻尾だった。

海竜のものか、と確認する暇もなく砂浜までふっ飛ばされる。


 崖に激突する前に水魔法で自身を覆い速度を落としたためなんとか着地できたものの。

水魔法使えなかったら俺死んでたなと咳き込みながら海を見る。


 海は先ほどとは嘘のように荒れ狂い、真っ黒に染まっていた。

あの中にいたなんて思うと気分が悪い。


「どうすっかな…尻尾しか見えなかったけど、ありゃあかなりでかいぞ…」


 はーとため息を吐きながらその場に座る。


「ギム、大丈夫かい?!」


 そこで、ラベンダーがジェットたちを連れテレポートしてきた。


「大丈夫大丈夫。

海竜の一部を見たんだけど、結構でかそう」

「海竜を見た!?

あんた海中でなにしてきたんだい!?」


 ラベンダーの質問を無視して、どうあの海竜を鎮めるか考える。


「ラベンダーさん、海竜を空中にテレポートさせることは可能ですか?」


 いきなりナシュがラベンダーに問う。

なんちゅーことを聞いているんだ。不可能に決まって…


「できるけど、相手の大きさと位置がわからないと難しいね。」


 できるのかよ。

何をする気だと聞けば、


「空中に海竜をテレポートさせ、落下する数秒でケリを付けてしまえば一番安全かと思うのですが。」


 当たり前のようにナシュが言うので、それもそうだけどもとため息が出る。

 しかし殺してしまったら俺の本来の目的がぱーになってしまう。


 うーんと考えていると、海が山の様に膨れ上がる。

大きな波を生み出しながら、青く美しいドラゴンが姿を現した。


 それはビル十階はあるのではないかと言うほどに大きく、ただただ美しかった。

美しいが、瞳は真っ黒に染まりドラゴンの放つオーラは殺気ただ一つ。


 これが海竜か。でかいなーと見上げていると、


「呑気に眺めている場合かい!?

あんなにでかいとなると落とした時の衝撃が計り知れないよ」

「想像、以上です…。落下を利用するのは危険すぎますね…」

「綺麗なのに勿体ないですなぁ。あんなに歪んじまって」


 ラベンダーとナシュは気圧されているようだが、ジェットはのんきに海竜を眺めている。本当に何者だよジェットって。


「俺とりあえず言葉が通じるか試してみるわ。」


 三人にそう言って海竜の方に駆けだす。

水魔法を足の裏に発動させ、海の上を歩けるよううまく調整する。


 ラベンダーとナシュの制止の声が聞こえるがまあいいや。


【水圧操作を獲得しました。】


 先ほどと同じ声が聞こえる。

 成程、魔法をうまく使えばスキル的なのが獲得できるのか。

俺剣のが得意なんだけどな。


 とんとんと海の上を跳ねるように歩き、海竜のすぐそばまで近寄る。


 海竜は俺を真っ黒な瞳で見下ろすだけで、何もしてこない。


「なあ、お前海竜だろう?

昔、お前と話した人間の女の事を教えてくれないか?」


 声をかけてみる。

反応はない。


「お前、カトレアの事知ってんだろ?

あとついでに真っ黒なエルフの事や闇属性、闇魔法の事も知っていたら教えてほしいんだ」


 カトレア、と言う言葉に反応するように海竜が尾を振り上げる。

 やはり、何か知っているなと確信した。


 海竜の尾が迫って来る。

 ギリギリまで引きつけ先ほどの爆発魔法を使い飛びあがりかわす。

勢いのついた尾は海竜に当たる。


「言葉はわかるのに、言葉を話せないなんて滑稽だなオイ」


 とんと海竜の頭の上に着地し、どうしようかと空を見る。

晴れていた空は曇ってしまい、どよんとした空気を放っている。


「貴様!! 何を呑気に突っ立っている!!」


 そう言えばいなかったカイが当たり前のように俺の肩にぶら下がっている。

いつからそこに居た。


「仕方ないじゃないか。

海竜、触ってみれば見るほどこの鱗は堅い。

俺の剣が刺さっても俺の剣はぱーになっちまうかもだろ?

それに、たかが一撃で仕留められるでかさじゃないしなぁ」


 とんとんと足で額の鱗を軽く蹴ってみる。

うん、堅い。


「馬鹿者!! はやくここから離れないと危険だぞ!!」


 カイがべしべしと俺の頬を叩く。

それが合図かと言うほどに、次の瞬間海竜が海に潜る動きを始めた。


 でかいくせに素早い動き。

爆発で空中に避難しようとするが、ぐわっと現れた海竜の翼に叩き落とされ海に落ちる。


 衝撃で肺の中の空気が全て口から出て行ってしまう。

やばいと思い海面へ向かおうとするも海竜が海に潜ったせいで海中は大荒れだ。


 舌打ちをしたくなるような状況。


 そこで、俺の瞳に海竜が映った。

沈む俺をゆっくりと見つめる真っ黒い海竜の瞳。全てから心を閉ざしたような、そんな瞳。


 殺気こそあるが、怨みや憎しみの色はない。


 あるのは、やはり__。


 そこで、俺の頭に何かが流れ込んできた。

 真っ白い光、その中に見えてくるのはまだ瞳が美しい蒼をしている海竜と、海竜に何かを話しかけている__カトレアだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ