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セーブ153 神様嫌いのドラゴン

「やだなぁ、いきなり殺しにかかるなんて失礼なドラゴンだね」


 空竜の鋭く巨大な爪を片手で受け止めながら、ハックが呆れたように空竜を見上げる。

どちらかの血か、土煙でも飛び散るかと思ったがどちらも外れた様だ。


「…ドラゴンの攻撃を片手で受け止めますか。思ったより厄介な相手ですね」


 慌てることなくクリアネスは目を細めてハックを見る。

ハックはそんなクリアネスを無視して空竜をじっと見つめる。


「キミ、空竜だっけ? 悪いけどオレの記憶にキミとの記憶がほぼ残ってなくてさ。

オレ、キミに何かしたかなぁ。」


 受け止めている手に軽く力が入ったらしい。空竜の爪がぎしりと軋む。

あの大きさで堅そうな爪を軋ませるとは。恐ろしい。


このままだと空竜の腕がなくなりかねないので二人の元に駆け寄る。


「空竜は強欲の俺も、お前も大嫌いらしいんだよ。

何をする気かは知らないが、一旦空竜を放してくれないか?」

「放したら、また攻撃されるかもしれないからやだよ」


 空竜はどうにか押し切ろうとしているらしくハックが腕一本で抑えている爪には相当の力がかかっているだろうに、ハックは顔色一つ変えずにケロッと言ってのける。

 確かに、ハックが放したらハックにその鋭い爪は襲い掛かるだろう。だが、問題ないのではないだろうか。


「お前、空竜の爪で怪我するの?」

「するわけないじゃん?」


 ほら見ろ。やはりダメージなんてないではないか。

なら好きにさせておけばいいのに。


「でもね、怪我はしなくても気持ちの問題なんだよ。」


 ハックはやれやれとため息を吐いて笑う。

どうやらハックは全くこちらの話を聞く気は無いらしい。わかっていたけど。


 仕方ないので空竜の説得にかかるか、と少々疲れつつ空竜を見上げる。

酷く憎悪で歪んだ瞳が見えた。これは大変だな、と思いつつさてどうするかと思考を回した。


◇◇◇


「一旦落ち着こう? な?」

「やだもん」


 隙あらばハックを殺そうとする空竜を宥めるのはもはや無理なのではと思う程に空竜はハックを嫌っていた。

 と、言うか俺が間に入っている間にハックはけろっといなくなると思ったが、面白そうに俺と空竜のやり取りを見ている。

あの野郎、楽しんでやがる。


「ギムって前より強欲っぽくなったけど根は勇者のギムだよねぇ。

口は強欲のギムっぽいんだけど行動が勇者のギムってやつ? 何? めんどくさいけど面白いじゃん? オレそう言うやつの心理読むの好きだよ」


 ぺらぺらと勝手にしゃべり続けてハックは笑う。

クリアネスは若干げっそりしながら聞き流している。


「ああ、そうだ。

 ジペイに会ったらオレの事を聞くかもしれないけどついでにジペイ自身の事も聞くといいよ。

もしかしたら手を貸してくれるかもしれないよ。あいつはああ見えて結構溜め込むからさ。うまく聞き手に回れば何かと面倒見てくれるよ。これ、経験談ね」


 ハックは思い出したようにそう言うと、俺の傍にひょいとやってくる。

馬鹿野郎こっちは空竜宥めてんだぞ。火に油を注ぐ様なことをするな。


「じゃ、そう言う事で。

一応アドバイス的なことはしたよ? 嘘は何一つない。そしてまた元の世界に戻る機会があったら、マヌケなオレをよろしくね?」


 ぽんぽんと肩を叩かれ笑われる。

そして次こそばいばいと手を振って一瞬でいなくなった。


「…逃げちゃったじゃん!!」

「馬鹿野郎最悪殺されるぞお前!!」

「いいもんいいもん!!!」

「死んだら元も子もないのわかんないかな!?」


 ハックが居なくなった途端人の姿になった空竜がばしばしと俺の腕を叩いてくる。

なんなんだろう。やることなすこと全てガキくさいこいつは。俺より長生きしてるはず、なんだよな。多分。


 それに、実力差を正しく判断できないのにも驚きだ。


「空竜様が感情で動くとは恐れ入ったわ。落ち着けクソガキ」


 ぽんぽんと低い位置にある頭を軽く叩けば空竜の何かがぶつんと切れたような感覚がした。


「勇者のギムレットでも、今のギムレットは嫌い!!!!!!!!!!」


 かなり強い力で腕を叩かれて思わず悲鳴を上げる。

なんだこいつ、滅茶苦茶力強いじゃん。


 ぷんすこと効果音が出そうな雰囲気で地団太を踏んでいる空竜。

やることなすことガキっぽいが今の俺よりも圧倒的な力を持っているんだろうな。

その空竜が全く歯が立たないハックか。


「おっそろしいラスボスだな。本当」

「ラスボスってそう言うものですよ」


 はは、と乾いた笑いを零せばクリアネスがからからと笑いながらそんな事を言ってきた。

 さて、次は空竜を宥めるのではなくどうにか機嫌を取らないと帰れなくなってしまた。

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