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セーブデータをお探しですか?  作者: 卵粥
アサーティール王国編
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セーブ09 カイ

「で、なんでついてくるわけ?」


 精霊から話を聞いて、その青年が海に落ちたと言う場所に向かっている。

何の縁かは知らないが、昨日俺があのエルフと対峙した場所がその場所らしい。


 しかし、何故かあの精霊まで俺についてくる。

もう用はないだろうと振り返れば、


「何を言っている貴様!!

貴様はこの俺様と契約する運命にあるのだぞ!! さっさと契約しろ愚か者!!」


 びしぃっと指をさされるのでもう話しかけない事にした。


◇◇◇


 昨日の場所について驚いた。

 とても近寄るには気が引けるような危険な崖だったからだ。

俺って本当にモンスターの事になると周りが見えなくなるんだなと自分にヒヤッとする。


「ふぅん、こっから落ちたのか。」

「おい! 貴様危ないぞ!!」


 海を覗き込めば、精霊がぐいぐいと俺のフードを引っ張る。

大丈夫だよと精霊を掴めば、


「馬鹿か貴様!

貴様は昨日ここで海に飲まれそうになったのだろう!?

一度あることは二度あるのだ!!」

「それって二度あることは三度あるじゃないのか」

「どっちでもいいだろう!!」


 ぎゃんぎゃん騒ぐ精霊を無視して海に飛び込んでみようかと考える。

海竜って海がつくだけあって海の中にいそうだし。


「海竜って海の中にいるのか?」


 騒ぐ精霊に聞けば、そんな事も知らんのかとふんぞり返る精霊。聞かなきゃよかった。


「海竜は海そのものだ!!

ドラゴンとしてその場にあるだけで、本体は海なのだ!! わかったか!!」


 つまり具現化した姿がドラゴンって事か。

 海を相手にするってのはちょっときつい気がするが、ドラゴンとしているのならそれを斬ればいいだけの話。

 難しく考えずに行こう。


「ところでお前…えーと、名前とかあるのか? そしてお前、なんで俺を選んだ?」

「この高貴な俺様の名前を知ろうなんざ一億年早いわ愚か者!!」

「はいはいじゃあカイね」

「勝手に決めるな戯け!!」


 海と書いてカイ。いいじゃん適当さに溢れ出てて。

質問に答える気がないのかなんなのか、またうるさくなったカイを他所に俺は上着を脱いで海に飛び込む。

 カイの慌てたような声が聞こえた。



 海はとても澄んでいて綺麗だった。ただ、生き物が一切いない。

嵐でも来るのかと言うほどに、魚も亀も貝も全ていない。


「なあ、カイ。ここらの海の生き物はどこに行った?」


 近くの浜辺に上がり、律儀に俺の上着を持って待っていたカイに聞けば、


「海竜が暴走した日からすべて死んだか逃げて行ったのだ。

これでわかっただろう? この村は食糧問題にもぶつかっていると。」


 なるほどね。思ったより深刻な問題だ。

濡れた服を絞りつつさてどうするかと考える。


「海竜を鎮めるためにも俺様と契約しろ!!

たかが人間一匹の力で海には勝てん!! 海を創ったこの俺様が力を貸してやると言っているのだ!!さっさと契約しろ!!」

「うるせえうるせえ」


 耳元でぎゃんぎゃん騒ぐカイを無視して村に戻る。

宿に戻ると、すでに三人は戻っていた。


 濡れている俺を見てぎょっとした三人は面白かった。


◇◇◇


「なるほどねぇ。じゃあさっさと海竜をどうにかしないとあたいらまでやばそうだね」


 ざっとカイから聞いた事、海の様子を三人に話せばラベンダーはため息を吐く。


「ところで旦那、その、いいんですかい?」


 ジェットがおずおずと聞いてくる。

何が? と返せば、


「いや、海竜に勝つために海の精霊と契約しなくてですよ。

あと勝手に海の精霊に名前付けたらしいですが、そこらも大丈夫ですかい?

海の精霊にはすでに名前があるはずなんですが、上書きしちまったって事になりませんかい?」

「俺もカイも元気だし問題はないんじゃないか?」


 ジェットの言う事がよくわからず適当にそう流せば、スコーンとまた額にカイがぶち当たる。


「い"っっ!!!!?」

「よくないわ阿呆が!!!

貴様のせいで俺様の高貴な名前が変わってしまったではないか!!!責任を取って契約しろ!!」


 今気づいたのか、カイがぎゃんぎゃん捲し立てる。

何の事ですかねとカイをギリギリと掴めば、


「旦那、知らねえんですかい?

精霊や魔物に名を与えると言うのは主従関係を結ぶと言う事でっせ?

普通、名を与える精霊や魔物と釣り合わない人間は名を与えると逆にその精霊や魔物に取り込まれるか食い殺されちまうと聞きますが…海の精霊に名を与えたのにぴんぴんしてる旦那はいったい何者なんでさぁ…」

「ジェットその主従関係の解除法知らない?」

「きっ、貴様!!この俺様を下僕にしたのか!?」


 色々こんがらがってきた。

カイはこの事知らなかったらしいし。


「解除法なんざ聞いた事ありませんぜ?

まあ、多分名を与えた人間が死ねばひとりでに無効になるんでしょうなぁ。

それか、そのカイの言うように契約しちまえば同等の関係になれるのでは?」


 残念ながら死ぬ気は当分ない。

カイをチラッと見れば、


「契約しろ!!」


 そればかりだ。

 同等よりも主従のがこいつ相手にするなら楽そう…とかなんとか思っているとまたスコーンとカイが体当たりしてくる。


「はいはい茶番はそこらにしておくれ。

あたいの調べたことを報告させておくれ」


 そこでラベンダーが俺とカイの間に割り込んでくる。


「闇属性らしきエルフの目撃情報は全くなったよ。

海竜の気を探ってみたが、残念ながらわからない。

海の気配的に感じたことない属性の魔力を感じた。きっとそれが闇魔法だろう。


 あとね、大収穫だよ。

この村に、カトレアらしき女が以前来たらしい。」


 最後の情報で俺の脳内から海竜とか村の危機とかカイだとかは吹っ飛んだ。

今、ラベンダーはなんと言った? カトレアが、ここに?


 視界も思考も一気に覚醒したようにはっきりするのを俺は確かに感じた。

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