表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セーブデータをお探しですか?  作者: 卵粥
東の無の街編
117/287

セーブ111 砕破の音と勝利の音

 カトレアの罪の力も未知数。

 そして自分自身の罪の力もよく理解していない。

罪の使い方も、威力の上げ方もわからないし、こちらの罪で生み出した攻撃は全て打ち消される。


 圧倒的不利の状況なのに、俺は何一つ諦めていなかった。

むしろ、楽しくて、楽しくてと言う感情が沸き上がる。


 呆れた戦闘狂だと自分に苦笑しながら、ここまで追い込まれたのはいつぶりだろうと思う。

負けず嫌い根性がめらめらと燃え上がり、絶対に勝ってやると言う考えしか頭にはない。


 カトレアをどうねじ伏せようか、カトレアにどう勝とうか。

カトレアをどうやればこちら側に連れ戻せるのかと言う頭はもうなかった。


 この状況を打破すれば、カトレアは戻って来ると根拠のない自信が少し前に湧き上がって以来、勝つことだけに集中するようになった。


 カトレアは随分と楽し気に、俺の攻撃を捌いて行く。


 罪の力で生み出した激流は無意味だが、目くらましや行動を遅れさせるのに使えるので遠慮なく使わせてもらっている。


 その合間合間に飛んでくる刃、飛ばす刃をお互いに回避や相殺しつつ相手の隙を伺う状況がずっと続いている。


 不思議と疲れは感じない。

爆発魔法を剣の刃に纏わせてカトレアの鎌を叩き切るつもりで振り下ろす。


 刃が交わると同時に爆発が起きる。


 自分にもダメージがある戦法だが、カトレアにも確実にダメージを与えられる。


「自滅技は似合いませんよ。」


 カトレアが爆発の煙を利用して光の刃を飛ばしてくる。

咄嗟に水の盾で防いだが、これじゃあ埒が明かない。


 カトレアの足元に爆発魔法の地雷を仕掛けたが、闇魔法で爆発魔法を食われ意味はなかった。

 闇魔法って魔法自体を飲み込むように食うのな。あれ駆使されたら俺の魔法は無意味になって、それこそ剣術戦特化になってしまう。


 ん? 剣術戦特化の何が悪いんだ?


 そこで、ふと気づいた。

 俺は昔から魔法は不得意だった。主人公補正的なアレでこうも魔法をひょいひょいと使ってはいるが、ぶっちゃけ旅に出るまでは魔法だの罪だのとは無縁だったのだ。

言わせてもらえば、剣術でのし上がってきたのだ。


 現在、魔法や罪の力と言った特典が付いたが、俺が一番得意とするのは小細工なしの剣術戦だ。


 魔法や罪を使うからこうも疲れるのかもしれない。

あれ、なんかそんな事に気づいてみたら魔法や罪を使うのが馬鹿らしくなってきた。もういいや。


 原点復帰。水の盾も爆発魔法も、激流も全て消し飛ばして、剣を握る。


 カトレアは訝し気にこちらを見るが、それににっこりと笑顔で返して一気に距離を詰める。

カトレアは俺の考えを瞬時に理解したらしく、少々驚いたように光魔法の竜を飛ばしてくる。


 その竜を剣で引き裂き、進むことをやめない。

 そうだよ。魔法を使う魔物相手にも剣一本でやってきたんだ。いちいち魔法で相殺なんて曲がりっくどい真似をせず斬ってしまえばいい。


 万物の鎌の刃が目の前に現れたから、姿勢を低くしてそれを避ける。

カトレアの足を叩き切る様に剣を振るうが避けられてしまう。


 そうだ。この感覚だ。

剣一本になると、こうもスリルが増す。一つ間違えれば終わり。魔法も何も使わないと言うのはそう言う事だ。

 だが、その駆け引きが大好きな俺は、今とても楽しい。


 魔法だのなんだのを使わない相手程狙いやすいものはないだろう。

ましてや、俺の動きを全て読めるカトレアには俺取る次の行動が手に取るようにわかるだろう。


 それがなんだってんだ。

読まれても関係ない。押し切ればいい。力で、今まで積み上げたもので、叩き潰せばいい。


 要は勝てればいいんだよ。


 ギンギンと光の刃を弾き飛ばして、闇魔法が先ほどの様に足元を固定しようと襲い掛かって来るのを跳躍して回避する。


 やっと、カトレアの上を取れた。


 カトレアがしまったとばかりに目を見開く。

俺の口元が弧を描く。


「俺の勝ちだ」


 剣を振り下ろす。

カトレアは万物の鎌でそれを受け止めるが、先ほどのカトレアの様に上から攻撃してくるやつは圧倒的有利なのだ。


 ギャリギャリと嫌な音を立てて俺の剣の刃と万物の鎌の刃が擦れる。


 押し切ってやる、と剣を握る力を込めた所で、こちらの刃が一瞬綺麗に光った。

こちらの刃が一筋の朝日の様に光った瞬間、万物の鎌の刃が折れたのだ。


 パキンと外見にそぐわぬ程に軽い音を立てて、呆気なく折れた。


 この瞬間、この場の勝者が決まったのだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ