夢屋
その店は気が付くとそこにあるの。
私が初めてその店を見つけたのは、厄日とも言えるような最低最悪な日だった。
不快な音が部屋に響きわたる。
この音が鳴ってるってことは・・・起きなきゃいけない・・・
私は時計を見る。
まだ8時か・・・
って・・・遅刻じゃん!!私は飛び起きて急いで高校の制服に着替え、家を飛び出した。
「あーん・・・もう!!ついてない!!」
私は全速力で学校をめざした。その時、私の横を自転車が通り過ぎた。
「え・・・橋本君?」
私の足は止まった。
私の横を通り過ぎた自転車に乗っていたのは、
私の憧れの橋本君とクラスを裏で支配してると言われる飯島彩だった。
「2人・・・付き合ってたんだ。」
私はノロノロ歩いて学校へ向かった。
担任の説教も聞き流す。
「じゃあ、今度三者面談するからな。」
ほんっと・・・最悪。
私は教室に戻った。
机に突っ伏してると誰かが近づいてきた。
「佐藤さん。ちょっと話があるんだけど・・・いいかなぁ?」
飯島彩だ。
「は、はあ。」
私は飯島彩と屋上へ行った。
屋上に着くと、彩の態度は急変した。
「ねえ、テメエよぉ・・・橋本君に媚びてんじゃねぇよ。佳奈から聞いたんだよ!!このクソアマ!!」
破裂音と共に私は床に叩きつけられた。
頬の感覚がない。
彩は私の頭を踏みつけた。
「今度橋本君に手ぇ出したら、学校来れねえ体にしてやるかんな。」
そう言って彩は去っていった。
あー・・・鼻血出てる。
踏みつけられた時頭ちょっと切れたかな・・・
私は保健室で手当てをしてもらって早退した。
当然ケガの理由は言わない。
私は学校を出てからどこに行くわけでもなく、ぶらぶら歩いた。
気が付くと私は
その店の前にいた。
「夢・・・屋?」
正直興味は無かったけど、そんなことはどうでもよかった。
足が勝手に動いたのかな。
店の中は普通の喫茶店と変わらなかった。
「いらっしゃいませ。」
カウンターの中の男の人が話しかけてきた。
「お客様は初めてですね?」
「は、はい。」
「それではこの夢屋について簡単な説明をさせていただきます。
私の名前は・・・名前は・・・シンヤとでもお呼びください。まあ、私の名前などどうでもいいことですね。
ナツミ、お客様にお湯を出してください。」
シンヤがそう言うとメイド服を着た私と同じくらいの女の子がお湯を持ってきた。
お湯を持ってきたナツミという女の子の目は虚ろだ。
なんかこの店・・・気持ち悪い。
「この店はお客様の夢をなんでも叶えさせていただくといったサービスを提供しております。
夢というのはなんでもよろしいのです。」
「・・・それだけですか?」
「それだけです。」
嘘っぽ
でも・・・もしかすると・・・
「私の夢叶えてください。」
シンヤは満面の笑みを浮かべた。
「それでは、あなたのお名前と夢を聞かせてください。」
「名前は佐藤 空です。
私の叶えて欲しい夢は・・・橋本君と両想いになりたいです。」
「それでは佐藤空さん、その夢・・・叶えさせていただきます。」
不快な音が響きわたる。
この音が鳴ってるってことは・・・起きなきゃいけない・・・
私は目覚まし時計を止めた。
ノロノロと制服に着替えて家を出た。
「空、おせえよ。ずっと待ってたんだぞ。」
!?
「橋本君!?なんで!?」
橋本君は指で私の頭を弾いた。
「なーに言ってんだ。俺達付き合ってんだろ。恥ずかしいこと言わすんじゃねえよ・・・」
夢屋・・・本物じゃん。
ニケツで2人は学校へ行った。
教室に入った。
バシャーーン
空はびしょ濡れになった。
「はっはっはっ!!あんたにはその格好がお似合いよ!!・・・橋本君を私から奪うからこうなるのよ・・・」
彩・・・
わかってないわね・・・
今の私に逆らう意味が・・・
気が付くと私は夢屋にいた。
「佐藤空さん、お待ちしておりました。
ナツミ、お湯をお出ししてください。」
「シンヤさん・・・もう1つ夢、叶えてください。」
シンヤは不気味な笑みを浮かべた。
「・・・どうぞ。お話しください。」
「飯島彩を・・・殺してください。」
「それでは佐藤空さん・・・その夢、叶えさせていただきます。」
気が付くと目の前には血塗れになった彩が倒れていた。
「空!!大丈夫か!?」
橋本君が私を抱きかかえる。
「なにが・・・あったの?」
「彩がおまえをカッターで刺そうとしたら、足をひねって自分を刺しちまったんだよ・・・」
どう?彩・・・
今の気分は。
夢屋に足を運ぶのは何度目だろう?
とりあえず私はあれから毎日が幸せ。
夢屋のおかげでなんでもできた。
「今日はどうなさいましたか?佐藤空さん・・・」
「こんなに人生楽しいのに、死ぬってすごくもったいない気がするの。
でね、私・・・永遠の命が欲しいの。この夢、叶うわよね?」
その夢・・・叶えさせていただきます。
その店は気が付くとそこにあるの。
私が初めてその店を見つけたのは、厄日とも言えるような最低最悪な日だった。
「夢屋・・・こんなんあったっけ?まあ、どうせもう死ぬつもりだからいいや。
軽食でもしよう。」
「いらっしゃいませ。お客様はこの店初めてですね?私の名前は・・・名前は・・・たしか・・・タツヤといいます。
この店はお客様のどんな夢も叶えるサービスをさせていただいてます。
お客様、お名前は?」
はあ?なにコイツ・・・
気持ち悪い・・・
「・・・吉澤・・・遥です。」
「吉澤遥さんですね?
ソラ・・・吉澤遥さんにお湯をお出ししてください。」