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第二話 ―異形― 四

 ボクを案内する巫女さんの後に続くように建物の中を歩いていくと、中の様相が明らかとなった。

 建物の中は、大きくも古めかしい外見と違って……何というか近代的だった。

 だって、テレビのドラマとかで見るオフィスのようにガラスで部屋が区切られていて、その中ではパソコンが何台も置かれていたり、大きなモニターが分からない文字を映していたり、何人もの女の人や男の人の巫女さんが話をしていたりしていた。

 それをチラチラ見ながら歩いていると視線を向けられているのに気づいた。


『お主、見られておるな……』

『う、うん、どうして……だろ?』

『先ほどの大国という男の言い方だと我が宿っている姿だから視線を向けられているということじゃろうな』


 神さまの言葉でボクはようやく理解した。

 つまり今のボクは、動物園のパンダとかそんな風に見られているようだ。

 それに気づいて何というか居心地が悪いと感じながら、ボクは案内をしてくれている巫女さんの後に付いて行く。

 その間にマジマジと向けられる視線がなんだか嫌だった。

 そんな居心地の悪さを感じながら、巫女さんについて行くと……鉄の扉があり、その扉を巫女さんが開けてボクに入るように促す。

 ボクはそれに従い、部屋の中に入ると……中は明かりがまったくなく真っ暗で、換気扇の音が聞こえるだけだった。

 ここはいったい何の部屋だろうと思いながら中へと入ると、巫女さんも中に入ったのを感じた。

 そして、ギィィと軋みを上げながら扉が閉められた。


「ひゃ!? あ、扉の音……? うわっ!?」


 聞こえた音に驚きつつ呟いた瞬間、パッと部屋の明かりが点いて眩しさに驚いて声が出た。

 ……そして目が慣れてきたら、部屋の全容がわかり……。


「書庫?」


 と呟いた。


「そうですよ姫さま。それとも……さくやくん、と言ったほうが良いでしょうか?」

「え?」


 突然声がして振り返るとそこには巫女さんだけが立っていた。

 じゃあ、今の声は巫女さん?

 そう思っていると巫女さんは顔を隠している布を取り外し、ボクに素顔を見せた。

 その素顔にボクは唖然とした。何故なら……。


「え……、みこと……ちゃん?」

「ええ、久しぶりですねさくやくん」


 黒く綺麗な髪、黒い瞳、誰が見ても美人といった顔立ちの巫女さん、それはボクの幼馴染だった。


 ――月読みこと。


 それが目の前の彼女の名前だ。

 みことちゃんとは中学までは同じだったけれど、高校は別々になっていた。

 みことちゃんがどの高校に行ったのかは分からないけれど、高校進学と両親の海外出張を機に関係が遠くなったのは覚えている。

 けど、けどなんで……。


「なんで、みことちゃんが……ここに居るの? というか本当にどういうことなの?」

「それを説明するためにここにつれて来たのです。この対禍津日機関『高天原(たかまがはら)』の説明を」

「たかまが、はら……?」

「はい、説明をしますからそこに座ってください、さくやくん」

「あ、うん……」


 みことちゃんに座るように言われ、ボクは備え付けられた椅子へと座る。

 そんなボクに長机を挟んで対面するようにしてみことちゃんは向かいの椅子に座ると、机の上に置かれたリモコンを手に取った。

 なんで書庫にリモコン? という疑問を抱きつつ、みことちゃんを見ていると彼女の手はリモコンを操作していた。

 そしてウィィィン、と何かが動く音がしたと思い、音がするほうを向くとスクリーンが下りてきて映像が映し出された。

 これって……プロジェクター? あ、蛍光灯も自動的に消えた? 入ってくるときにはつけてたと思うのに。


「外は古そうな外見だし、神話上の敵を対処しようとする機関ですから難しい古文書とか専門書とかの本を読ませるとか思いましたか? そういう手もあります、けれどそれでは時間が掛かりすぎますし、何よりも完全に理解するのは難しいですよね? ですから、この機関の目的と禍津日は何かということを重点的に置いた映像を映します」

「そ……そうなんだ……」

「はい、それでは始まりますので見てくださいね」


 みことちゃんの言葉に頷き、暗くなった部屋で映し出される黒いスクリーンを見ていると映像が映し出された。

 白いスクリーンだ。そこに初めに文字が表示され、誰か分からないけれど……女性の声が流れ始めた。

 多分機械で作られた合成音だと思う。


【対禍津日機関『高天原』とは?】

『遥か昔、この地上には悪魔や鬼、魑魅魍魎といった化け物が跋扈していました。それらは闇に紛れ人を攫っては喰らい、人々は言い知れない恐怖に陥りました。

 そんな中、化け物と戦う者たちは居ました。彼らは退魔士や神官、巫女……今で言うところの陰で隠れて戦う正義の味方です。

 彼らは日々の陰に隠れ密かに魔を祓い、人に仇名す化け物たちを退治していました。

 ですがそんな中、彼らにとって新たな脅威が産まれたのです。

 その脅威の名は禍津日(まがつひ)、奴らは人の欲望を糧とし成長し強くなっていくという悪しき神が生み出した存在です。

 奴らと対抗するためには、一人一人の力が強くても個々の戦力では無理だと判断した当時の権力者たちは、ひとつの組織を創り上げました。

 それが、対禍津日機関『高天原』です。組織名の由来は神話の時代、神のいるとされる場所を使いました。

 結成された組織で我々は常に目を光らせて、魑魅魍魎どもや時折現れる禍津日と人知れず戦い続けているのです』


 音声とともに、映像では文字と昔の人が描いたと思う絵が表示されている。

 確か、浮世絵っていう種類の絵、だっけ? 良くわかんないけど。

 そう思っていると、次の項目へと移動したのか表題がデカデカと表示された。


【禍津日とは何か?】

『禍津日、それは伝承などで悪しき神が創り出した神の一種であると言われていますが、実際はわかっておりません。

 ですが奴らは人の欲望を糧に成長し、その力は強くなって行きます。

 強くなった禍津日との対処は各地に滞在する神姫、また昨今では機械神姫でなければ対処出来ません。

 事実、禍津日の頂点である禍津日神の復活を阻止する戦いでは、神の国から降臨したとされる【姫】の名称で呼ばれた神姫が対処に応じました。

 ですが彼女は自らの命を犠牲として神を封印するまでしか出来ず、殲滅することは不可能だったそうです。

 さらには当時、後方で禍津日の対処を行っていた者たちの証言では上級禍津日は山のように巨大であったと伝えられております』


『なんじゃと!? その言いかたではまるで我が弱かったように聞こえるではないか!』

『か、神さま落ち着いてください……』

『いいや黙っておれぬ! 我が弱かったのではない、奴らの量が多かったただそれだけじゃ!』

「多かった。ですか? 当時者の話を聞きたいのでお話をお聞かせ願いませんでしょうか?」

『うむ、良いじゃろう。しかと聞くがよい! あやつが復活しようしたときは――』

「――って、何でみことちゃんが普通に神さまと会話できてるわけっ!?」


 むきーっと憤慨する神さまを落ち着かせようとするボクだったけれど、突然話にみことちゃんが入ってきて神さまは意気揚々と喋り出そうとした。

 けれどそれを遮るようにボクはみことちゃんを見ながら叫んだ。

 だって、神さまの声ってボクにしか聞こえないんだよね? 現に大国さんには聞こえなかったみたいだし……。

 そう思っていると、みことちゃんがボクを見て微笑んだ。


「さくやくん、折角話を聞こうとしてたのですからぶった切らないでくださいね?」

「ひゃ!? ひゃ、ひゃい……」

『お、お主の幼馴染とやらは、怖いのう……』


 虫を殺すかのような微笑みにボクの体はキュッと恐怖を感じた。

 ふ、普通に微笑んでいるだけだと思うのに……あ、目が笑ってないや。

 そんなみことちゃんに恐怖を抱いているのはボクだけでなく、神さまも同じようだった。

 そんなボクたちを見て話を聞ける状態ではないと理解したのか、みことちゃんがふうと息を吐いた。


「さくやくんが挙動不審なのは何時ものことですし、神さまの声が聞こえる理由を話してあげます」

「あの、酷くない? ……あ、お、おねがいします」

「良いでしょう。それで私が姫さまの声を聞ける理由、それはこれです」


 そう言ってみことちゃんは、ボクに見えるように左腕に嵌めた腕輪を見せた。

 ボクの腕輪に似ているけれど、みことちゃんの腕輪のほうは機械っぽい物がついているように思えた。


『これは……我らの力に近い物を感じる。じゃが、神の力は感じぬ。いったいなんじゃ?』

「これは人が作り出した神姫、機械神姫の力です」

『機械神姫じゃと? ろぼっとというやつか?』

「はい、そう思っていただいて構いません。……改めまして高天原日本支部の機械神姫『オモイカネ』の現登録者の月読みことです。どうかお見知りおきを、姫さま」


 そう言って、ボク……ちがうな、神さまを見ながらみことちゃんは頭を下げた。

 頭を下げるみことちゃんを、ボクは唖然と見ていた。

 というか、機械神姫ってなんなの!? 本当に神さまが言ったみたいにロボットってやつなの!?


『我の器が混乱しておる。お主、詳しい説明をして貰えぬか?』

「ああ、さくやくんが混乱していますか。でしたら、見てもらったほうが早いかも知れませんね。――オモイカネ」

『イエス、マスター』


 みことちゃんが納得しながら、誰かに声をかけると先ほど聞こえた合成音の声が返事を返してきた。

 もしかして、ただの音声と思ってたけど……これって。


「みことちゃん、オモイカネって……機械天使の名前じゃないの?」

「オモイカネは機械天使の名前ですが、サポートの人工生命にも同じ名前が使われているんですよ」

「人工生命? もしかして、この音声って誰かが喋っているの?」

『はい、初めまして姫さま、そして姫さまを宿せし神姫となった此花さくやさま。ワタシは機械天使オモイカネのサポートをしております人工生命のオモイカネと申します』

「え、あ、は……はい、よろしくお願いします……」


 丁寧な上にハキハキとした言葉にボクは驚きつつ、返事を返す。

 さ、最近の人工知能って凄いんだなぁ……。


「人工生命の詳しい説明は省きますね。オモイカネ、先日の戦いの映像をお願いできませんか?」

『先日の戦い、と言いますと山の神社での戦いですね? ワタシの本体が大破する原因となった』

「……そうです。それを見せたほうがさくやくんも禍津日の怖さが分かるでしょうし……」


 先日の戦い、そして山の神社……その言葉を聞いて、ボクは昨日の朝に見たニュースを思い出す。

 もしかしてあれってみことちゃんが……、そう思い始めたところでスクリーンに映像が表示され始めた。

 チラリとみことちゃんがボクを見たのが見えたけれど、多分ちゃんと見るように言ってるのだろうと思いながら、ボクはスクリーンを見ることにした。

久しぶりにあげたかも……(汗

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