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第零話 ―夢―

ちょっと変身ものを書きたくなったので、しばらくお付き合いください。

あと、バトル描写が下手だと思いますがご了承くださいませ。

 夢、そうこれは夢だ……。何故だか知らないけれどボクはそう理解していた。

 夢の中でボクは、映画館で上映される映画を見るようにある光景を見ていた。

 それは焼け野原のような戦場で……剣を手にしたひとりの女の子が無数の黒い化け物と戦っているものだった。

 女の子、そう……女の子と言っても可笑しくない幼い外見の、桃色の髪をした可愛らしい女の子だ。


『くそっ……、数が多いのじゃ……。じゃが、これしきで根を上げる我ではない!!

 我が剣に宿れっ! 炎の化身――カグツチ!!』


 女の子は声高らかと叫び、何かを剣にはめ込んだ。

 すると剣から煌々と女の子の背よりも高い真っ赤な炎が噴出し始めた。

 CG技術が満載といったその剣を構えた女の子が大振りに横薙ぎをすると、黒い化け物たちの体が燃えながら斬られていき、地面に落ちるとともに轟々と燃えていった。

 けれど、黒い化け物の数は減らない……それどころか増えて行く。


『ええい、鬱陶しい!! 我を貴様らの主の下へと連れて行かせないつもりか!?

 ならば無理矢理、押し通るのみ!!』


 叫びながら女の子は燃える剣を大きく振り回し、黒い化け物たちを倒しながらどんどんと前へと進んでいく。

 前へと進む女の子を追いかけるべく黒い化け物たちは彼女が通っていった道を埋め尽くし、仕舞いには彼女までも呑み込んで行った。

 黒一色に覆われた戦場、まるでそれは無数のゴキブリが蠢くようであった。

 けれど女の子が立っていた場所を中心に突如紫電が走り、強烈な電撃が地面を伝い周囲に巻き散らされた。

 巻き散らされた電撃を浴びた黒い化け物たちの幾つかはプスプスと黒焦げとなり、口から煙を吐き出して倒れていく。


『すまぬタケミカヅチ!! はああああああぁぁぁぁぁああぁぁっ、雷神咆哮撃!!』


 電撃が放たれた中心には女の子が立っていた。

 けれど先ほどまで持っていた剣が消えて、今度はバチバチと放電する巨大な手甲を手にしており、叫び声を上げながら拳を前へと突き出した。

 直後、パリンと何かが割れる音が響いたかと思えば、帯電した手甲から強烈な閃光が放たれ地面を溶かし……女の子の進むべき道を塞いでいた黒い化け物を消し飛ばしていた。

 プスプスと煙が立つ地面を駆け抜け、女の子は更に前へと進んで行く。前へ前へと……。

 巨大なハンマーや盾を何処からともなく出し、黒い化け物たちの攻撃を捌きつつも倒しながら女の子は進む。

 けれどひとりの女の子に大量の黒い化け物の対処を出来ることは無く……時折攻撃を受けて女の子の綺麗な髪や肌は切り裂かれ、長い髪が無残にも千切れ、白い肌から血が零れ落ちていく。

 そして、女の子の目的地であろう戦場の奥に辿りついた頃には女の子の体はボロボロになっていて、幼い肢体にはポッカリと穴が開いている箇所ができていた。


『はぁ、はぁ……はぁ……。ついに、ついた……!』

『くくくっ、ようやく来たか、待ち侘びたぞ姫よ!!

 いかがだったかな我が眷属の猛攻は?』

『む、だぐち……など、叩いている気など……ないのじゃ……!』


 白磁のように白かった肌や綺麗だった桃色の髪は土や泥、火傷や攻撃を受けて汚れきっており、輝きを失っていた。

 ポタリポタリとかつて腕があった場所からは血が零れ地面を濡らして行く、緑色の円らな瞳が目の前の影を見るけれど……片目は潰れているのかポッカリと黒い虚ろがあるのみ。他にも耳も千切れており、片足も無くなっている……。

 そんなぼろぼろの姿になった女の子は前を見る……いや、睨み付ける。

 睨み付ける先には、薄っすらと浮かび上がる巨大な黒い影。

 これは夢のはずなのに、巨大な黒い影を見ていると全身が震えて、恐怖してしまう。あれはいったい何なのだろうか?

 わからない、けれど良くないものであるのは確かだ……。


『まだ……封印は解かれておらぬようじゃな……』

『くくくっ、まだ封印は解かれてはおらん。だが、もう間も無くだ! もうすぐ貴様は死に、代わりに我はこの世に甦る!!

 貴様という障害が居ないこの世を我が闇に染める。その光景を貴様に見せることが出来ないのが残念だ!!』


 女の子のぼろぼろとなった姿を巨大な黒い影が蔑みながら嗤う。

 その声を聞きながら、女の子は悔しそうに唇を噛み、拳を握りしめ……黒い影を睨み付ける。

 今の彼女には目の前の影を如何にかする力がもう無いのだろう。


『たしかに……たしかに、いまの我にはもう、貴様を如何にかする力はない……。それに間も無く死ぬじゃろうな……』


 女の子はそう言って顔を下に向ける。

 きっと悔しいのだろう……が、すぐにバッと顔を上げた。


『じゃが、我もただでは……無様には死なぬっ!! この残った命を使い、貴様を再度この地に封印する!!』

『っ!? ば、馬鹿なことを考えるな!? 今の貴様の封印など、この我にとって何の役にも立たん! 大人しく我を解放しろ!!』

『いいや、例え……ほんのひと時、我らような存在には一瞬の時間なれど……か弱き人の身にとってそれは悠久の時間じゃ!!』

『まさか……貴様は……矮小な人間ごときに、この我を! 神である我の対処を任せると言うのか!?』


 どうにもできるはずがない、そう高を括っていたであろう黒い影は焦り始める。

 だけどその直後放たれた女の子の言葉から滲み出す感情は、激しい屈辱。

 まるでその感情を目の前で浴びているかのようにボクは震え、恐怖する。

 これは本当に夢……なんだよな? そんな疑問を抱き始める。

 けれど、その答えが出る前に女の子は、剣を逆手に構え直すと……自らの胸に固定する。


『今は本当にか弱き人間、けれど貴様が復活する時もか弱い存在と思わぬことじゃ! 我は信じておる、人の可能性を!

 頼むぞ、人の子らよ! 我が果たせなかった悲願を、果たしてくれ!! ――――ぐ、ぐぅっ!!』


 叫び、女の子は剣を胸に突き刺した。ズブリと胸が剣を呑み込み……女の子の呻き声が上がり、前のめりに倒れた……。

 死んだ。そう分からせるかのように映像は女の子の顔をアップさせる。

 そしてしばらくすると死んだ女の子の胸から、斬られた箇所から血が零れていき、地面を赤く濡らす。


『ぐ……! お前たち、こいつを……こいつを完全に始末しろっ!!』


 黒い影が悔しそうに叫び、黒い化け物たちに命令する。

 命令された黒い影たちは女の子の死体を処理すべく近付いていく。

 だがその直後、地面を濡らしていった女の子の赤い血が光を放ち始めた。

 放たれた光は戦場を包み込み、光の中の黒い化け物たちはボロボロと崩れ去っていった。

 きっと何かをしたのだろう。……そういえば、封印がどうとか言ってたような……。


『ぐ、ぐあああああああああっ!! お、覚えておけ! 我は必ず、必ず甦る……! そしてこの世を闇に染め上げてみせる!! 覚えておけぇぇぇぇぇぇえぇええぇぇえぇぇぇ…………!!』


 そう思っていると黒い影が地の底から響き渡る声をあげた、けれどその声が徐々に消えていき……光が収まるとそこには、女の子の姿も無く……黒い化け物たちの姿も無かった。

 ただあるのは、地面に転がる……女の子が使っていた剣だけだった。

 ……いや、剣だけじゃない。

 何処かからか、巫女服の女性が現れた。


『お役目、ご苦労様でした。今はお眠りください……』


 あれ? この声、どこかで聞いたような……?

 そんな疑問が一瞬浮かんだが、気のせいだろう。

 そう思っていたボクは、振り返った女性を見て言葉を失った。


「…………え? みことちゃん?」


 その女性の顔は、ボクの幼馴染の子に似ていた。……いや、似ているなんてものじゃない。本人だと言われてもおかしくは無い。

 どういうことだろうか。そう思っていると……女性がボク(・・)を見た。

 え、えっと? 段々と近付いてくる女性に本当にみことちゃんそっくりだと思っていると……。


『目覚めのときは近い。そろそろ、起きてください』

「え?」

『戦いが始まります。……サクヤさま』

「それって……っていうか、名前っ」


 戸惑うボクに対して女性は淡々と言いたいことを言う。

 それがいったい何なのか、もう一度尋ねようとした瞬間――アラームが鳴った。


 ――そして、夢は覚めたのだった。

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