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その22 凡人の俺と祭のあと

今も昔も、為政者の不祥事はいいゴシップの種だね

 俺達は今、ミレニィの店に居る。


 昨日の聖星祭を終え、今朝はのんびりできる筈だった。コルトは自警団に復帰したのでここには居ないが、薊はまだ昨日の疲れを残している様子だ。

 ちなみにロジィは、まだ寝ている…。


 しかし、今朝のセニアの新聞が、セニア全土を騒がせている。

 ミレニィがその新聞の記事を、ざっくりと読み上げた。

『…セニア大神殿の長である大神官ザフマン・レインが罷免ですって。なんでも聖星祭の最中に、子飼いの神官がアグルセリアで騒動を起こしたのが原因のようねー』

 聖星祭の出店街で俺は、元巡回騎士のキキ・アイオスから同様の噂を既に聞いていた。まさかとは思ったが、本当にこうなるとは…。








 店の奥の椅子に座り、ミレニィが香草と豆の茶を飲みながら、のんびり新聞を眺める。

『神官達がアグルセリア駐在所を襲撃した動機は不明。だけど犯行に及んだ神官達は、この事件を魔物の仕業に仕立て上げたかったみたいねー。ザフマン大神官の関与は不明だけど、犯人が彼の直属の部下だったから、大神官は部下の管理が甘かった事を責められたようね』

『…大神官は自滅したのかな?』

 薊は首を傾げる。

『さあな。これが計画通りなのかも、そうじゃないのかもよくわからん』

 俺達は結局、どこまでザフマンの想定内なのか分からなかった。

 この状況すら、奴の思惑通りだとでも言うのだろうか?


 奴の狙いは、アグルセリア長老の持つ遺物だったはずだ。

 しかし結果的には、自身が失脚しただけだ。


 ミレニィが、新聞を長椅子に投げた。

『まあ私としては、神殿の監視が無くなりさえすればいいわ。お陰様で聖星祭の直前から、この店を見張る奴も居なくなったしね』

『そういえばそうだな…』

 聖星祭の前は、恐らく神殿の差し金であろう怪しい奴らが、ミレニィの店の周囲に出没していた。それが居なくなったのが、聖星祭の直前だった。

 ミレニィが投げた新聞を、長椅子から薊が拾う。薊はセニアの言葉が読めるので、新聞も問題無く読めるようだ。

『大神官の後任の最有力候補は、聖典神官長のネーデリオスって人だって。誰これ?』

 その名に、俺は聞き覚えがある。

『…それって、例の騒ぎの時に、大広場に来た奴だよな?』

 聖星祭の最中、アグルセリアからの早馬が大広場に乱入してきた時。

 大広場にやって来た大神殿の幹部が、確かそんな名だった。


『なんだか、陰謀の匂いがするわね』

 俺と薊のやり取りを聞いていたミレニィが、真剣な顔をする。

 しかし彼女は、言葉とは裏腹に楽しそうだ。

『いや、陰謀とは限らないだろ』

 俺が反論するが、ミレニィは意に介さない。

『いいえ、きっと陰謀よ。だってその方が面白そうだもの』

『ミレニィらしいね…』

 薊も呆れ気味だ。

 ミレニィは茶を一口啜り、灰色の髪をかき上げ、ニヤリと笑う。

『あのね…聖典っていうのは勇者の言葉を綴った本で、セニアの宝なの。それを管理する聖典神官は、勇者の教えに啓蒙な連中なのよ』

『そうなの?』

 薊は胡散臭そうに、ミレニィの推理を聞いている。

『そうよ。ちなみにザフマン大神官は…聖典を斜め読みして魔物にも融和的だったから、彼等とはよくイザコザを起こしていたらしいわ。つまり今回の事件は…聖典神官長が、大神官を引き摺り降ろすために仕組んだ事なのよ!きっと!』

『…なんだかあり得そうだな』

『でしょ!?』

 推理を披露したミレニィは得意気だ。

 でも、話を聞く限り、そこまで見当外れな妄想でも無い気がする。。








「コルト!やっと復帰だな!」

「お陰様で」

「いやー、自警団で紅一点のお前が抜けると、やっぱ寂しいな!」

「あはははは…」

「もう無茶はするなよな…これ以上傷を作ったらお前…」

「大丈夫、心配無用です」

 コルトはデリ・ハウラにある、魔境の自警団本部に来ていた。

 アグルセリアで受けた矢傷の一件で、コルトは今までずっと自警団から離れていた。聖星祭が終わった直後は自警団も人手が要るので、それに合わせて復帰したのだ。


「コルト、戻ったか」


「あ、隊長!」

 建物の奥から、顔に古傷のある獣人が現れる。彼はコルトの属する小隊の隊長だった。

 …なんだか、自警団を離れた時と似たような状況だ。

「コルト、ただいま戻りました!復帰に時間が掛かって申し訳ありません!今後は、以前の倍は働きますよ!」

「いい心掛けだ」

 隊長が神妙に頷く。そして、ふと首を傾げる。

「なあコルト…お前、傷はもっと早くに治っていたんじゃないのか?完治まで半月以上ってのは、ちょっとかかり過ぎだろ」

「あ、あはは…」

 図星だった。

 コルトの怪我は、とっくの昔に完治していた。

 隊長には敵わないな、とコルトは内心苦笑する。

 しかし、これには立派な訳がある。


「…仰る通り、私の矢傷は聖星祭前には良くなっていました。でもこれが完治するまでの間、私の友人が熱心に世話を焼いてくれたんです。それでどうしても、その友人に恩返しをしたくて…」


「ああ、あの半人の商人か…」

 …ミレニィの店に薊が来る以前。ミレニィは頻繁に、街道警護を自警団に要請していた。そして毎回必ずコルトを名指しにして随伴を要請していたのだ。

 そのため、彼女は自警団でもちょっとした有名人だった。

「それで、聖星祭の準備が忙しそうだったんで、祭が終わるまで手伝ってました」

 隊長が呆れ気味に笑う。

「はは…お前ら仲良しだな」

「はい、仲良しですよ」

「まあそれはそれとして、早速だが任務だ。ついてこい」

「はい!」

 聖星祭明けのデリ・ハウラには、自警団にとって重要な任務がある。

 聖星祭の為にセニアに来ていた他の集落の長老一行が帰る際に、自警団が元の集落まで警護しなければならないのだ。








「イグゼルフェ ロウ」

 昼下がりのミレニィの店に、誰かがやって来た。


 俺は店の奥の居住スペースで昼寝をしていたが、急いで起きあがる。

「…なんでこんな時に…いつもは客なんて来ないのにさぁ…」

 俺は1人愚痴を零す。

 現在この店の主であるミレニィも、接客慣れしている薊も外出中だ。コルトは自警団に戻ったし、ロジィはまだ寝てる。つまり店番は、実質俺1人だった。ミレニィは行商メインの為、普段この店には客が来ないのだが…。

 マジで客だとしたら、俺が対応しないといけないぞ…。

『ちょっとお待ちくださーい!』

 俺は店の入り口に向けて、強めの念話を飛ばす。デリ・ハウラにはセニア人が多く出入りしているので、魔物も人間も念話を使う。なのでとりあえず、念話が通じるという前提で行く。

 こうなった以上仕方無い、対応しない訳にもいくまい。俺は、元の世界でやってたコンビニのバイトをちょっと思い出す。まあ何とかなるだろ、多分…。

 俺は意を決して、店の方に向かい、客の姿を初めて見た。

『お待たせしました』

『…半人半魔の商人の店は、ここだな?』


 その客は、巨躯の牛男だった。

 その男は、初老の顔付に似合わず屈強な肉体を持っている。頭にこれまた大きな角が生えており、彼をさらに大きく見せる。なぜか険しい表情をしていて、彼の部下であろうトカゲ男が数人、同じような表情で彼の後ろに控えている。


 この牛男、俺の見知っている奴だった。

『あ、あんた…確かアグルセリアの長老…だよな?』

『む?いかにも、儂はアグルセリア長老のタジェルゥだ。しかしお主、何処かで儂と会った事があるのか…?』

『…覚えてねぇのかよ…』

 俺がアグルセリアで遺物探しをしていた時に、俺の話を聞きもしなかった、アグルセリアの長老だった。








「…すごい騒ぎだ」

 薊は、単身セニア王都にやって来ていた。

 今回の目的は、大神官ザフマンの様子を確かめる事だった。大神官の地位を追われるというのがザフマンにとって本当に予定外なのか、繍五郎達もその確証が持てなかったからだ。


 わざわざ忍び込むような真似は不要と判断し、薊は「外国人」として普通にセニア王都に入っていた。聖星祭直後という事もあるが、今回の一件でセニア王都は異様な雰囲気を醸している。

「大神官様!あの事件、本当に貴方の部下が関わっていたのですか!?」

「きっと何かの間違いですよね!?」

「英雄の子孫にこんな仕打ち…我らが王は、何故こんな…!」

 薊が大神殿へ向かうと、そこには人だかりができていた。

 どうやら、ザフマンがもうここを去ってしまうらしい。絢爛な馬車が大神殿前に停まっており、そこにザフマンが立っていた。普段の聖衣ではなく、貴族らしい服装をしている。

(すごい人気だ…さすが英雄の末裔)

 群衆がうるさくて、ザフマンの言葉が聞こえない。

 薊は熱気を帯びた人垣をかき分け、なるべく前へ進む。やはりザフマンは、というかレイン家の一族はセニアで人気が高い。


 レイン家は、約100年前に「勇者のお告げ」を受けた神官の一族だ。

 そのお陰でセニアは、今日まで魔王の復活を防いでこられたのだそうだ。

 魔王の生まれ変わりであるという異世界人を、捕らえて殺すことで。


「今回の一件、全て私の責任です」

 薊は、やっと群衆の最前列に乗り出す。

 珍しくザフマンは、普段の柔らかい笑顔は見せず、厳しい表情をしている。

「全て、私が悪いのです…。私が無理に魔境での布教活動を進めてしまったために、部下達に無理強いをしてしまったのです。私は彼らを省みることもできなかったのですから、今回の一件は私の自業自得なのです」

「そ、そんな!」

「大神官様!」

「もう私は…大神官ではありません、レイン公とお呼びください。私はこれで、二度と王都に戻ることも無いでしょう。御機嫌よう、王都の民よ…」

(魔物を陥れようとしたクセに)

 ザフマンの話を聞いているうちに、薊は腹が立ってくる。

 あの男は魔境で魔物を利用するつもりだったのに、これじゃまるであいつが被害者だ。魔物のことなんかまるで考えてない。所詮あの男にとっては、「解放派」の魔物も手駒に過ぎないのだろう…。

 あの男が王都の民に信頼されてるのが、薊には不愉快だった。


 ザフマンは馬車に乗り、王都の民に見送られて去って行った。








『ただいま…なにこれ』

 王都に偵察へ行っていた薊が、店に帰って来た。

『あら、お帰りアーちゃん』

『何って、出掛ける準備だよ』

 俺達はちょうど、浮動車に荷物を積み込んでいる所だった。俺達は急遽、再びアグルセリアに向かう事になっていた。

『アザミねーちゃんお帰り!』

『ロジィちゃん、ただいま。起きたんだね』

『あはは、あたし寝過ぎちゃったぞ…』

 昼過ぎまで寝ていたロジィは、夕方になってやっと目を覚ました。ロジィ曰く、何故かすごく眠かったらしい。彼女が記憶を取り戻したことと、何か関係があるのだろうか…?

 薊は店を見回す。

『ねえミレニィ、コルトは?』

『えーっとね、コルちゃんは自警団のお仕事で居ないの。でも大丈夫よ、アグルセリアには一緒に行けるから!』

『ふーん。で、なんでアグルセリアに行くの?』

『ふふふふ、それはねっ!!』

 ミレニィが、待ってましたとばかりに目を輝かせる。大きく手を広げ、クルクル回る。俺はその拍子に羽をぶつけられたが、ミレニィはどこ吹く風だ。

『タジェルゥの爺がね、私達に謝礼をしたいそうなの!』




 俺達は、晩飯を近所の店で食べることにした。

 理由は簡単。コルトが居ないからである。薊もミレニィも料理をしないし、俺だって異世界の食材は扱いに自信なんか無いからな。前に俺が料理をしたのだって、コルトの指導があったからだ。

『今回ね、やっぱり聖星祭前にアグルセリアで「解放派」が怪しい動きをしていたらしいの。それを見張ってたゲルテさんが自警団に要請して、奴らを見張っててくれたのよ』

『手紙の件、上手く行ったんだな』

『そうそう。で、その辺の事情があの爺の耳に入ったらしくて、その謝礼をするからアグルセリアに来いって言われたの』

『やったねミレニィ』

 弾むような声で喋るミレニィはずっとご機嫌だ。


 ミレニィがはしゃいでいる中、料理が運ばれてくる。

 基本的にデリ・ハウラの食事は、魔境では最もバリエーションが豊富だ。何しろここは商人の町で、魔境やセニアはもちろん外国の食文化も入ってきている。まあ主流が何かと言われれば、結局はセニア料理が一番多いらしいが。

 現に今居る店も、パンを主食にしたセニア料理の店だ。

『ミレニィねーちゃん、それは良いことなのか?』

 事情を知らないロジィが、パンを齧りながら無邪気に尋ねる。俺もミレニィとタジェルゥが不仲なのしか知らないから、詳細はちょっと気になる。

『もちろん良い事よ!』

 ミレニィは食器を振り回しながら愚痴を零す。

『あの爺、私をコケにしまくってくれたからね!前に言ったかどうかは忘れたけど…実は私は外国生まれなのよ。それで数年前に故郷を旅立って、魔境のアグルセリアにやって来たの。で、住み始めたはいいんだけど、あの爺ったら私の仕事を邪魔して来たのよ!?』

『邪魔?』

『働き先を見つけてもすぐ解雇されたり、仕事で妙な嫌がらせされたりと色々あったのよ。調べていくうちに、裏であの爺が口を利いてたのが分かって、それでアグルセリアを出たのよ!全くあの爺、私に人間の血が流れているのがよっぽど気に入らなかったのね!』

『それでミレニィは、長老様をそんな風に呼ぶんだ』

 スープを木匙で掬いながら、薊が荒れるミレニィを面白そうに眺める。

 ひとしきり吐き出して、ミレニィはとりあえず落ち着いたようだ。

『まあ、まだまだムカつく話はあるけど…ここまでにしましょうか』

『ホントだよ!せっかくおいしいゴハンがあるのにさ!』

『ロジィ、お前な…』

 飯の不味くなる話はするなと言わんばかりに、ロジィが抗議する。

 この娘もなんだか、だんだんマイペースになってきている気がする…ミレニィとコルトの影響だろうか…?








『こんばんは』

『あらコルちゃん、こんばんは』

 夜、ミレニィの店にコルトがやってきた。

 どうやら、自警団での今日の仕事は終わったらしい。

『アザミがセニア王都に行って来たそうじゃないですか。一応、状況を聞いておこうと思いましてね』

 ロジィは既に寝ており、俺と薊とミレニイが、店の奥で机を囲んでいた。

『丁度良かった、あたし達も今その話をするところだから』

『…眠いぜ』

 俺は舟を漕ぎながら、何とか起きている。非常に眠い…。

『サミーさんお昼寝したんでしょ?』

『…ほっとけ、聖星祭で疲れたんだよ…』

『相変わらず軟弱ですねー』

 酷い言われようだ…。


『まず1つ目ね。アーちゃん、大神殿の様子はどうだった?』

『ザフマン大神官…じゃなかった、レイン公は普通に王都を去ったよ』

 コルトが意外そうに眼を丸める。

『…王政の命に、普通に従ったんですね』

『へー。私はてっきり、王政に猛抗議するかと思ったのに』

 ミレニィは、夜食に固形食を齧っている…。

『何で抗議するんだよ?あいつの部下の神官がやらかしたんだし…』

 俺はあくびを噛み殺して、眠い目をミレニィに向ける。

 ミレニィは非常につまらなそうにしている…。

『いやいや、私はまだ陰謀説を推してるから!もし陰謀なら、きっとレイン公は王政に猛抗議するかなーって思ったんだけど…』

『ミーちゃん、そういうの好きですねー』

『だって面白そうですもの!』

 コルトも呆れている。

 脱線しかけた話を、薊が無理矢理軌道修正する。

『とにかく、これで魔物を利用しようとした奴が居なくなったって事だね。あいつが王都民に惜しまれてたのが超ムカつくけど』

『次の大神官がどんな奴になるかは、まだ分からんがな』

 ひとまず、失脚したザフマンの事はもう心配無いだろう。


『2つ目ね。これ覚えてる?』

 ミレニィが机の上に、紙の束を出す。

 俺は、それが何だかすぐ思い出した。

『あ、これ薊が盗んだアレだな…』

『シュウさん、酷い言い草じゃん』

『じ、事実だろ…』

 以前、俺達が大神殿に忍び込んだとき。

 薊が盗んだ、大神殿の決算報告らしき書類だった。

『ああ、こんなのありましたね。コレ結局何だったんでしょうね?』

 コルトはきれいさっぱり忘れていたようだ。懐かしそうにそれらを眺める。

 ミレニィが、その紙の束から一枚抜き取る。

『以前この報告書で気になったのは、大神殿が遺物と魔石を大量に買い込んでたって事だったわね。遺物はレイン公の趣味だったとして、魔石は結局何に使ったのか分からないのよねー』

『そういえばそうだな』

『私の予想では、聖星祭の終わりの「高空火術」をド派手にするんだと思ったんだけど、結局いつも通りだったのよねー』

 この世界では、魔法の花火をそう呼ぶらしい。

『レイン公が着服したんじゃないですか?』

 コルトの予想は辛辣だ。

 ミレニィはちょっと考え、首を横に振る。

『んーと、さすがに無理だと思うわ。大神殿は王政に近過ぎるし、そもそも「清廉潔白」が重要なのよ。だから、そういう監査も厳しいらしいわ』

『じゃあ大量の魔石が、まだ大神殿の管理下にあるって事か』

『恐らくね』

 ザフマンは、大量の魔石を何に使うつもりだったんだろうか…?








『それよりも!』

 ミレニィは突然、楽しそうに椅子から立ち上がる。

『ロジィちゃんが例の「壺」の使い方を思い出したんでしょ!?』

『ああ、そう言ってたな』

 ロジィは、以前大神殿で盗んだ「壺」の使い方を思い出した、と言った。しかし“過去を映し出す遺物”とロジィは言ったものの、それがどういった形なのかはさっぱり分からない。

『それで、ロジィちゃんの本の開け方が分かったら面白いですね』

『そう、そこよ!』

 ミレニィの目が輝く。

 ロジィの居た湖底洞窟にあった、開かずの「本」。あれにはきっと、ロジィの為に残された「何か」が記されているはずだ。

『大神殿の件はもう大丈夫でしょう。それよりこっちよ!ロジィちゃんの過去の方がよっぽど浪漫があるわ!』

『確かにな』

 俺も全面的に同意だ。

 俺の顔を薊がチラチラ見てくる。

 よっぽど俺も、楽しそうな顔をしてるんだろう。


 きっとこれで、魔王と勇者の謎に、一気に迫れるだろう。

2021/12/30 誤記訂正などなど

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