その18 凡人の俺、夏の森へ
暑くて死ぬぜぇ!
俺達は、デリ・ハウラから少し離れた森に来ている。
今朝の早い時間に、俺達はミレニィの店を出発した。今居るここは、俺がこの世界に来て、初めてコルトと出会った魔境の森にある丸太小屋の近くだ。
森の中は薄暗いが、天気が良いので木漏れ日が気持ちいい。
しかし、雨の月が終わって今は暑の月らしく、最近はだいぶ気温が高くなってきた。まあ、俺の知っている「夏」に比べれば涼しいので、きっとこの地の冬は寒いのだろう…。
ちなみにいろいろ事情があって、ロジィは店に置いてきた。
俺達は森の道を、浮動車でのんびり進む。
『今日は気持ちのいい天気ですねー。でも最近、だんだん暑くなってきましたね』
コルトはまだ、火山で受けた矢傷が完治していない。しかし杖を巧みに操り、自由気ままに動きまくる彼女は、とても怪我人には見えない…。
毛皮が暑いのか、コルトの服装はかなりの軽装だ。
袖の無い服の隙間から、白い腹毛や包帯が覗く。
『こういう気楽なお出かけも、たまには悪くないわね』
今日ミレニィは、店を休みにしている。まあこの気紛れな店主の店は、こうやって不定期に休むらしいが…。これで商売が一応上手く行っているのが、ミレニィの凄い所だ。
今日の彼女は珍しく、白い帽子を被っている。鍔が広いので恐らく日除けの為の物だろうが、お洒落な装飾が、この森にはちょっと似合わないな。
『シュウさん、今日こそ術具を使えるようになろうね』
『お、おう…』
薊は何故か、出発してからずっと俺の傍にくっついている。俺は最近ロジィに構っている事が多かったので、この感じは久しぶりだ。
今日のお出かけの目的の1つ。それは、俺の術具修行だ。
「シュウさん、最初はやっぱり座学にしよっか」
「そ、そうだな…」
緑豊かな森の中で、俺は薊から、魔法や術具の事を教わることになった。薊はこの世界に迷い込んですぐに、直感的に魔法が使えたらしい。しかし俺には、その感覚がさっぱりわからない。
俺は薊にそう言ったが“シュウさんが直感的に遺物を使えるのと同じだよ”と返されてしまった。確かに俺も、遺物の事を理解して使っているわけじゃ無いな。
「まず…この世界では、魔力には2つの種類があります」
気合の入った薊は、なんだか先生っぽい。気取ってはいるが緊張も見え隠れしており、その様子が実に微笑ましい。
「ほー…その2つって何だ?」
「1つは、人間や魔物が生まれた時から持つ魔力。ちゃんと鍛えたりすると、魔力の最大容量が増えるらしいよ。魔法を使うとこれが減って、時間経過で最大容量まで戻るの。といっても魔力は数値的な物じゃないから、感覚論なんだけどね」
「へえ。で、もう1つは?」
「もう1つは、魔石の魔力」
薊はポケットから、小さい紫の石を取り出す。
これは、ミレニィがアグルセリアで加工してた奴だ。濃い紫色はほぼ不透明で、日の光を当てると、深くに緑色が潜んでいる。
「例えばあたしがこの魔石を介して呪文を唱えれば、あたし自身の魔力を使わずに魔法が使えるの。ちなみに魔石は、その大きさと形状で魔力の容量が決まるんだって。魔法を使うとこの魔力がどんどん減っていって、自然光を浴びると最大容量まで戻っていくよ」
「ふーん、大きさは分かるが…形ねぇ…」
「同じ体積の魔石なら、より真球に近い形状の方が、魔力の容量が多くなるんだって。あと“術具”っていうのは、魔石を介して魔法を使う道具の総称だよ」
確かに、薊の扱う「空飛ぶ手甲」なんかには、魔石が組み込まれている。
…俺は頭が付いて行かないが、これだけは分かった。
「魔石って、話を聞いた感じだとまるで無限に再利用できる電池だな。でも、薊はちゃんと勉強してて偉いな…」
薊はこの世界に来てまだ1年だというのに、いろんなことを勉強している。でも俺は勉強が嫌いだし、見習いたいが無理そうだ…。
「ま、まあ、シュウさんも一緒に勉強しよ?」
「…そうだな、ちょっとずつな」
全く、魔力ってのは便利なエネルギーだ。
これだけ魔法が便利だと、やはり科学は発展しないのかな?セニアや魔境には、恐らく電機は存在しないのだろう。
薊先生は、腰に手を当てて授業を続ける。
「人や魔石の魔力は、回復にけっこう時間が掛かるよ。ちなみにミレニィの店の浮動車も魔石で動いてるけど、使ってない夜間とかに魔力の回復をしてるよ」
「なあ先生、もしもすごい魔法を使いたかったら、山ほど魔石を集めればいいのか?」
「いや、何て言うか、いい魔法は難しいから呪文に出来なくて…それを使うなら大きい魔石が必要なんだって。同じ重さの魔石でも、大きいの1個の方が、沢山の小粒よりいいみたい…」
「そりゃ何でだ?」
薊も良くわかっていないようだ。
たどたどしく続ける。
「えーっとね、あたしもちゃんと理解はしてないんだけどね…術具の魔石には“術式”っていう物が組み込まれてて、これは普通に魔法を使うときに唱える呪文の代わりらしいんだけどね、魔石に組み込める術式の長さは“魔石の魔力容量”に依存するらしいから…」
「つまり…いい魔法の術式は長いから、大きい魔石が無いとダメって訳か…」
「そんな感じだね、確か」
残念。大きい魔石は高価らしいから、俺には入手は難しそうだ。
「とにかく…魔導書をもう1回よく読んで、術具を使ってみようよ」
ひとしきり話し終えた薊が、浮動車から分厚い本を取り出す。
「おっし、今日こそやってやろうか!」
俺は店から持ってきた、いつかの「着火術具」を握りしめる。
コルトはミレニィと並んで浮動車に座り、繍五郎と薊を眺めている。
繍五郎は時折、奇声を発しながら術具を振り回している。薊が一生懸命説明をしているが、やはり生まれ持った才能なのか、繍五郎は魔法の才能が皆無のようだ…。
「あははは、ゴローさんは面白いですね。術具はそんなに振り回すもんじゃないのに」
「ちょ、笑っちゃ可哀想よコルちゃん…。サミーさんは真剣だし…」
「面白いものは面白いですよ?仕方ありません」
「…それはまあ、そうだけどね…」
コルト自身は、ミレニィにいろいろ感謝している。
一種の不慮の事故とはいえ、アグナ火山で左腿に受けた矢傷は、歩くのに支障が出る程だった。そんなコルトを気遣ってか、ミレニィは何かと世話を焼いてくれる。
ただ、不必要にしょっちゅう包帯を取り変えようとするのには、少し困っているが。
「…いろいろとすみませんね、ミーちゃん」
「え、何がよ?」
「いや私、怪我してから何かとお世話になってばかりで」
「え!?いいのよ、その、わ、私が好きでやってることだし…ね?」
「…何かあったら、今度は私がミーちゃんの力になりますから、絶対に」
ミレニィは、嬉しそうに頷く。
コルトはちょっと考える。
いつものことだが、私はミレニィと関わり過ぎている気もする。
でもお互いに、この距離感は悪くないと感じている。
ただの友情とも違う私達のこの関係って、何だろうな…?
当てはまる言葉を頭の中で見つけ、思わず口に出した。
「何だか私達、家族って感じですね」
「はへぇっ!!??か、家族だなんて、そんな…私…!」
ミレニィは何故か真っ赤になる。コルトは慌てる。
「あ、さすがに馴れ馴れし過ぎました?ごめんなさいね、ミーちゃん」
「違くて!その、私、私ね…!」
『や、やったぜー!!!』
『やったよシュウさん、火が付いたよ!』
「あ、ゴローさん成功した」
「え!!?あ、ええ…そうね………」
コルトとミレニィが目を離している隙に、繍五郎が術具の発動に成功している。
時間もいいし、着いた火種で昼飯にすることにした。
『ちょ、薊、力入れすぎだろ…』
『…』
『待て待て待て待て!お前、まな板ごと斬る気じゃ無いよな!?』
『そんなじゃないよ』
『いや、俺にはそう見える…』
『大丈夫だよ』
『でも…』
『見てて』
『…』
俺達は今日の昼飯を、森で食う事にしていた。そして食材として、いつだかミレニィがセニアで買って干した、海魚の干物とかを持って来ていた。
さらに、折角なので、今日は薊とミレニィに料理をさせている。
『あぁ、もうダメ、コルちゃん、私もう無理…』
『いやいやミーちゃん、まだ準備してるだけですよ?何抜かしてるんですか』
『…きっと私が作った料理を食べたら、皆呪い殺されるわ…魚の呪いで…』
『無いですよ』
包丁を硬く握りしめながら震える薊も、火を前に顔の青いミレニィも、まだ調理前なのに死にそうだ…。
『いいか薊、一口大だぞ…』
『わ、わかってるし…』
『待て待て待てって、細切れにする気かよ…』
『大丈夫、のはず…』
任せた俺も俺だが、ホントに大丈夫かよ…。
俺が見守る中で、薊が恐る恐る、魚の干物に包丁を翳す。
俺達は昼飯を終えると、さっさと片付けてデリ・ハウラへの帰路についた。
先程完成した昼飯は、辛口ソースを絡めた炙り干物のサンドイッチだった。見た目も味も、意外と普通の仕上がりだった。
ちなみに俺は修行の結果、「着火術具」の発動率が10%まで上がった。
前よりはるかにマシだが…前途多難だな、こりゃ。
そして俺はその帰路で、「レーダー円板」を起動する。
朝から俺達を見張っている謎の2人組は、今も俺達を見張っている。
今日のお出かけの1番の目的。
それは、俺達を見張る謎の連中を、デリ・ハウラから引き離す事だった。
「よ、よし、行ったな…?」
今朝。
繍五郎達は日の出を待たず、デリ・ハウラ郊外の森に出掛けて行った。
ロジィはその様子を店の窓からこっそり覗き見ていたが、繍五郎達の後方から、謎の人影が2つ、彼らを追って行くのが見えた。
「ここまでは、ミレニィねーちゃんの作戦通りだな…」
ロジィは詳しい事情を知らないが、ミレニィには、どうしてもやならければならないことがあるらしい。皆から聞いた話を思い出す。
1つ。
セニアの大神官とかいう奴が、この魔境で悪さを企んでいるらしい。
2つ。
にーちゃん達が悪い神官を捕まえてから、この店は誰かに見張られている。
3つ。
まだこの町を出歩いてないあたしは存在を知られておらず、見張られて無い。
だから今、あたしが自由に動くために。
にーちゃん達が見張りを引き付けているのだ。
「さあ、行くぞ…!」
ロジィは1人、ミレニィの書いた手紙と地図を握りしめる。
今日この店に1人置いてかれたのも…昨日セニアからこの店に帰って来た時に、わざわざ箱詰めにされたのも…全てはこの為だ。
目指すは、デリ・ハウラの運び屋本部。
この手紙を、アグルセリアまで届けて貰うのだ。
「…地図の通りだと、だいぶ遠いなー」
ロジィは1人、デリ・ハウラの町を歩いている。
この町に居る奴は、どうやら大半が亜人のようだ。見た目だけなら人間の姿のロジィは、行き交う魔物達の中でかなり浮いているため、時折変な視線を向けられる。
しかし龍の姿にはなるなと、皆に強く言われている。
ただ、この町の雰囲気を、ロジィはどこか懐かしく感じていた。
(あたしが父上と住んでた研究所も、こんなだった…気がする…)
ロジィは少しずつだが、記憶を取り戻していた。
父上と、父上の友人。どちらも顔だけで、名前は思い出せない。
しかしロジィは、繍五郎に聞かされた「ヨーグ」という名に聞き覚えがあった。
(父上の名前は何だっけ…?あたしの名前も、確かロジィは愛称だよな…。でも父上の友人で、あの元騎士のにーちゃんの名前は確か…ヨーグだ)
皆の話だと、ヨーグは勇者と呼ばれているという。
そして父上は、どうやらヨーグに殺されたらしい…。
2人は、歳こそ離れていたが、それなりに仲が良かったはずだ。
あたしが思い出せない記憶のどこかに、何かがあるのかな?
「あ、着いた」
考え事をしているうちに、ロジィは運び屋本部に到着していた。
屈強な魔物たちが、せわしなく出入りしている。
見た目だけは人間のロジィを、運び屋の魔物たちが邪魔そうに避けていく。
気圧されながらも、ロジィは、建物の中に踏み入る。
『ただいまー。ロジィちゃん留守番ありがとね』
『あ、みんなおかえり。こっちはバッチリだぞ!』
『…よし、とりあえず大丈夫そうだな』
俺達は昼過ぎに、ミレニィの店に帰って来た。ロジィはミレニィの手紙をちゃんと送れたようだし、これでひとまずは安心だろう。
俺達の今日のお出かけ、その最大の目的。
それは、神殿の企みをアグルセリアの魔物に伝えることだった。
俺達は、デリ・ハウラの自警団本部で神官を捕まえた一件のせいで、恐らく大神殿に睨まれている。その証拠に、あの事件の直後から、ミレニィの店が誰かに見張られているという。
そしてさらに、昨日大神殿に侵入した際に、大神官の企みを偶然知ってしまった。俺達は何とかアグルセリアにそれを知らせたかったが、大神殿に気付かれないようにする必要があったのだ。
もし俺達が大神官の計画まで知っているとバレたら、それこそ危険だ。
魔境はセニアの権限下なので、何をされるかわかったもんじゃない。
『まあ、手紙はゲルテさん宛にしたから大丈夫でしょ。あのヒトは信頼できるわ』
手紙は、アグルセリア採掘組合の魔物・ゲルテに宛てた。アグルセリア長老にも一目置かれているという彼はミレニィと知り合いで、半人半魔である彼女の良き理解者だ。無下にはされまい。
『シュウさんの作戦、上手く行くといいね』
『いや、俺の作戦じゃなくて、俺達の作戦だろ…?』
『ゴローさん、失敗したら大変ですよ?』
『だからなんで俺の責任になるんだよ!?』
『あははは、にーちゃん責任重大だな!』
『お前らな…』
全員にイジられる俺の心は不安でいっぱいだ。
何しろ、相手はセニア大神殿。全く、大事になって来ちまったな…。
『状況を整理しましょうね』
夕飯後、俺達は集まって作戦会議をすることにした。
念のため、場所はミレニィの店の地下室にした。
『まずは今回の、アグルセリアでの大神官の企みね。まあこれは、今日出した手紙で十分でしょ。聖星祭に合わせて「解放派」の魔物連中が事を起こすらしいし、それまでゲルテさんと自警団が見張ってくれれば大丈夫でしょ』
『というか、俺達にはそこまでしかできないしな』
『まあねー』
今日、手は打った。これで一応大丈夫と思っておく。
しかし、少し疑問が残る。
『大神官の目的は、アグルセリア長老の持つ遺物を引き出すことみたいだが…』
『…そこだけ何だか腑に落ちませんね』
俺達の疑問はそこだ。
遺物が使えないセニア人が、そこまでして遺物を収集する意味は、果たしてあるのだろうか?
『次は…アーちゃんが大神殿から盗んできた文書ね』
『はい、これだね』
昨日俺達が大神殿に侵入した際、別行動をしていた薊はいくつかの書類を盗んでいた。その中に、大神殿の収支報告的な物があったようだ。
『これによると…大神殿は最近、遺物と魔石を大量に買い込んでるみたいねー。確かに聖星祭では魔石が多少必要でしょうけど、この量はおかしいわ』
『ふむふむ…え、よく見たらこれ凄い金額ですね。大神殿の資産がいくらかは知りませんけど、これは多すぎませんか?』
『これはまだ、良くわからんな…』
大神殿の資産を食い潰す勢いで買い溜めされている、大量の魔石と遺物。
遺物の収集目的は、大神官ザフマンの言葉通りと仮定する。しかし、大量の魔石は、一体何に使われるのだろうか…?
『3つ目は、ロジィちゃんの記憶ね。ねえ、サミーさんが盗んできたこの「壺」、ロジィちゃんは使い方を思い出した?』
『いや、まだわかんないや』
『そう…』
ロジィは、少しずつだが記憶を取り戻しているらしい。
しかし、大神殿で盗んだこの壺の使い方は、まだ思い出せないようだ。
『ねえ、シュウさんが使ってみれば?』
薊が壺を突っつきながら呟く。
『いや、これ俺が弄っても動かないんだよな』
今までの遺物と違い、これは俺が触っても何も起きなかった。
『へー…残念ですねー』
盗む際にこれを選んだロジィの直感を信じたいが…用途が分かるまではただの置物だな、こりゃ。
『あと、他には何を思い出したんだ?』
『そうだ!あのなにーちゃん、大神殿のおっきな像な、あれに似た人の名前を思い出したぞ!』
ロジィは目を輝かせるが、その名前って…。
『ヨーグ、でしょ?』
薊に先に言われた。まあ、俺達は既に知ってる情報だな…。
そんなガッカリした俺をよそに、ロジィは満面の笑みだ。
『そうだ、あいつの名はヨーグだ!私の居たラグラジア帝国第3魔法研究所の、警備隊長だ!そこであたしや父上、それに異世界人と仲良くなってたんだ!』
『あれれ?おかしくないですか?』
コルトが首を捻る。
『勇者ヨーグって騎士だったんじゃないですか?』
『あ、確かにそうだな…』
サウラナ長老・ヴェスダビの言葉を信じれば、ロジィの言葉と齟齬がある。
『どーせ後から騎士って事にしたんだよ、きっと。その方が箔が付くし』
薊の辛辣な予想をよそに、ロジィは腕を組んで一言、
『あいつ、確か帝都の騎士をクビになったんだ。行くあてが無いあいつを、第3魔研の所長だった父上がわざわざ雇った…はずだよ』
『クビ?何でかしら?』
『さあ?』
ロジィは、なかなか肝心な事を思い出してくれない…。
『とにかく、あたしのやることは変わらない』
薊の目は、作戦会議中ずっと燃えていた。
『もし大神官が、魔境や魔物に悪いことするなら、あたしはそれを止める』
薊は、魔境に、魔物に、恩義を感じているようだ。
元の世界では、あまり幸せだったようではない薊。
コルトに拾われ、ミレニィに居場所を貰い、今では魔物達と交流している。
彼女には元の世界より、こっちの方が合っていたのかもしれない。
そして、それは、俺にも言える。
『まあ…俺も同感だな。コルトやミレニィには世話になってるし、ここらで恩返ししないと。あと大神官のザフマンは、初めて会った時から何か胡散臭いと思ってたんだよなー』
『へー?ゴローさんがやる気とは珍しいですねー』
コルトが涼しい顔で毒を吐く。
言ってくれるな。俺自身、こういうのはガラじゃないんだ。
笑顔のミレニィは、大きく手を叩いた。
『とにかくとにかく…聖星祭はもうすぐよ!!ウチの出店の準備もして、大神殿の動きにも気を配る。うふふふ、何だか面白くなってきたわ!!』
ミレニィはウキウキだ。俺はいつかの彼女の、「大きいことを成し遂げてやる」というセリフを思い出した。
セニア建国祭「聖星祭」まであと半月。不安と期待が膨らんでくる。
2021/12/30 誤記訂正などなど