翌朝2
程よく光の入るカーテンを引き、長時間でも疲れない椅子にナオを座らせ、真紀子も向かい合って座った。
「茨木さん、緊張している?」
「いえ、私から話せばいいのかなと」
真紀子はにっこり笑った。
「大手女性下着メーカーへの就職を目指したのは、どうして?」
いきなり切り込んで、ナオの反応を窺ったが、意外に彼女は、照れくさそうに、口に軽く握った手を当てながら答えるのだ。
「無邪気なものです。私、下着が大好きで、その製造の現場に携わりたかったんです。デザインの勉強もやっていたんで、あわよくば、ブラジャーやショーツのデザインも出来たらな、なんて思っていた程で」
「デザインか。確かに感性豊かそうなイメージがする」
「ちゃかさないでください、志田さん」
クスクス笑うナオ。しかし、すぐさま物憂い表情になって、告白する。
「本当にその時は無邪気で、また驕りもありました」
「茨木さん、あなたはまた別な一面を認識しているの?」
「はい、私は飛び降りる覚悟を持つまでは、自意識過剰なこだわる女でした」
「話してくれる? 嫌なことや個人的なことは伏せて、これまでの経緯を」
「全て包み隠さずお話しします」
ナオの決意に戸惑う真紀子。
「要点だけを……」
「志田さん、全て話させてください」
「わかった。途中で疲れたりした時には、無理せずに言って」
「では、話します」
こうして、茨木ナオは語り始めた。