君との出会い
サウンス帝国とリウスナ王国、この二つの国は、言わば主従関係と同じだ。
まず、それを説明するには、そもそもこの世界に存在している超越力を説明しなければならない。
プレクションとは、その人が産まれた時から持っている力で、力は産まれたと同時に測定され、D~Sに位分けがなされている。
そして、そのD,Cの位を持つ者がリウスナ王国。
A,Sの位を持つ者がサウンス帝国に暮らすという決まりがある。
まあ、つまりを言うと、リウスナ王国はサウンス帝国の属国で、言いなりなのだ。
そんな世界に産まれた私はと言うと、残念ながらCなのである。
まあ、別にCだからと困った事はないので、自分自身あまり気にしていない。
強いていうなら、力によって仕事が決まってしまっていることだ。
私の力は、研究、その名の通り、研究に特化しているのだが、そんな地味なプレクションな私は、幼い内から研究所へ送り込まれ、日夜問わず研究三昧な生活に明け暮れている。
「ナタリー、もう今日は休みなさい!」
研究データの紙に埋もれている私に声を掛けてくれるのは、ディーナさん。
ディーナさんは、一人で研究所に来た私に色んな事を教えてくれたお母さんのような存在だ。
とても優しくって、いつも私の事を気にかけてくれる。
一応説明しておくが、私は銀水色の瞳に銀水色の髪をポニーテールにしていて、赤い額縁メガネを掛けている地味すぎる私とくらべ、ディーナさんは、超が付くほどの美人だ。
いつも柔らかな緑色のウェーブの髪を揺らして、金色の美しい理知的な目で物事を見据えている。
「はぁ~い。 もう、寝る寝る。」
「ちゃんと歯磨きして、髪のけ乾かして寝るのよ~。」
「........ムゥ。 もう私、子供じゃないのに。」
と言いつつ、乾かしそびれていた髪を乾かして寝た。
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「ふぁ~~、ディーナぁさぁん....、朝...ご飯....何?」
二階の寝室から、一階の研究所兼リビングへと降りていくと、机の上にコンソメのスープと、目玉焼きが作ってあり、そのお皿の隣には、先に食べてて、と、ディーナさんの文字での書き置きがあった。
「また、研究材料とりにいったのかな......。」
ディーナさんは時々、出かける時がある。
そんな時は大体、新しい研究の材料を仕入れてくるときだった。
次は、どんな物を研究するのかな♪ 私は密かにこの次の研究材料が入ってくるときが楽しみだった。
そう、次の研究に胸を踊らせながら朝食を食べていると、ガチャと、玄関のドアが開く音がした。
ディーナさんが帰ってきたんだ......♪
急いで、残りの朝食を食べ終えると、玄関の方えと向かう。
みると、いつも通りディーナさんがいた。
そのディーナさんの腰元には男の子がいた。
だが、その男の子の秀麗な顔つきに思わず息を飲む。
肩まで伸びている髪は、真っ直ぐで、色はとても綺麗なミルク色だ。
それに伴い、目の色もとても綺麗なミルク色をしている。
特に、髪なんか、天使の輪っかが掛かっているような光沢が眩しい。
服は、厳かな真珠色の礼服を着ていて、靴までもが白いブーツで整えられていて、
肌も、キメが細かすぎて、とても人間とは思えない白さを誇っている。
「.........天使?」
「.........女神様?」
ふぇ?女神.....様?
何言ってるんだろう。 天使のような男の子の方も、私の言ったことが理解出来ていないのか、首を傾げている。
「この子はね、フリース・ネルス・ラマンダ・リート・ハランス・ヤナハサ・タハマラ・アタハナ・ルーム・スザンダ くんだよ。」
「...........誰って?」
「だ・か・ら、フリース....「やっぱりいいや。」」
「えーと、フリースくんって呼んで良いかな?」
「........は、はい。」
私の話しに、優しい音色で、言葉少なげに答える。
やば可愛い。 今すぐにでも抱きしめたくなる。
「.....あ、あの、恥ずかしいでぇすぅ。」
「......っは!ご、ごめんね。」
気がついたら、いつの間にか抱きしめていた。
それにしても、とってもいい匂いがした。
まるで薔薇の香水をつけているような......。
.....て、変態じゃん。私...。
「って、ディーナさん、まさか養子を取ろうとしてるんですか?
もう38歳だからって、ディーナさん美人なんだから、焦る必要ないですよ。」
「うるさいわね。
そもそも、今回連れて来たのは、この子のプレクションを調べるためなの。」
「プレクションを?
何でですか? だって普通だったら、産まれた時に調べられますよね?」
「それがね.....、実はちょっと訳ありでね。
この子のプレクションは特殊だから、三年間位観察をする事になったのよね~。」
ディーナさんは、いつの間にか自分の入れたコーヒーを机で飲んでいる。
それにしても、特殊なプレクションなんて、興味が湧きすぎる。
「因みに、ランク位は分かってるんですよね?」
「ええ、フリースくんはSランクよ。」
「へ~、Sランクですか~......、え、S?
って、本当にS何ですか!?」
「ええ、そうらしいわよ。」
「そうらしいわよっ、て.....。」
ディーナさんはああ言っているが、もしSランクの人に粗そうなどしてしまったら、どうなる事か........。
「まぁ、仲良くしてやんなさいね。」
「.........う、はい。」
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あれから、5日たった。
フリースくんに対して分かった事。
フリースくんが天使すぎるということが分かった。
食器を机に並べていると、「ぼ、僕も手伝っていいですか?」と、上目使いに聞かれた時には、思わず抱きしめてしまい、お皿を落とし、ディーナさんに怒られてしまった。
他にも、
街でお祭りがある時、行きたそうに窓の外を眺めていたときなど、一緒に行く?と聴くと、嬉しそうにはにかみながら頷いてくれて、その日の私は、財布が空っぽになるまでフリースくんにお菓子を買い与えたのだった。
極めてつけが、フリースくんの天然さ、
「ナタリーさんの笑顔は可愛いです...。」
「ナタリーさんはまるで女神様の化身みたいです....。」
「ナタリーさんと居ると、癒やされます。」
こんな告白じみた言葉を、少し頬を赤くさせ、上目使いに私に言うのだ。
むしろ、癒やされているのは此方だと言うのに...。
というか、もう、私の鼻血が止まらなくて困る。
そもそも、もうフリースくんのプレクションって、癒やしなのではないだろうか?
そんな事を思っていたある日。
「それじゃあ、これより、フリースくんのプレクションの調査を始めるわよ!!」
ディーナさんのこの一言で、フリースくんのプレクションの調査を始める事になった。