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プロローグ 『全てが変わり、始まった日』

こんばんは、こたつ猫と申します!!

勢いで連載を始めてしまいましたが、生温かい目で最後まで読んでくれると嬉しいです!!

 





 ──これはどうゆう状況なんだろう。


 呆然と立ち尽くす少年の胸中はそんな言葉で埋め尽くされていた。

 自分が直前まで何をしていたかも思い出せず、気づけば大きな広場に立ち尽くしていたのだ。サラサラと流れる噴水の音がやけに大きく聞こえ、彼に現実感を失わせている。


 何をするでもなく、ただ虚空を見つめている少年。そんな彼を道行く人は訝しげに見るが、ただそれだけだ。すぐに自分の時間へと戻り、いつも通りの日常を再開する。

 そんな少年だけが異質であるような世界。こてん。と首をかしげる少年の姿だけが、可愛らしく空虚に映った──



 ♢



「まず、状況を整理しよう」


 しばらくぼけ〜っとしていた少年だが、奇妙なものを見る視線に気づき我に帰ったのだ。そこから注目を集めてしまう広場の中心から離れ、後方にあった噴水近くのベンチに移動していた。

 あまりの突然のことに意識が定まらなかったが、時間が経つことで冷静に思考ができるようになる。しかし、冷静というのは少し違うかもしれない。ただ自分で落ち着いていると錯覚しても、小刻みに震える足を見れば、動揺しているのが一目瞭然だろう。


 …だが、何もしないで日が暮れる。という最悪の事態を避けるため、ぐちゃぐちゃしている頭を無理やり働かせる。何もせずに呆けていれば、ただ後手に回るだけなのだから。

 ──それは、自分の身を危険に晒しているのと同義である。それはなんとしてでも避けなければいけない。


「最初に現状の確認からだ。 ──僕は桐生裕太(きりゅう ゆうた)。三流大学の経済学部に通っていたはずだ」


 ──桐生 裕太。彼は取り立てて目立つこともなく、極めて平凡な学生生活を送っていた。ただ当たり前のように大学受験し、なんとなくで三年間もの時を過ごした。この彼の人生は本人が空虚に感じるほどには平凡で、多くの若者が自覚しながらも目を背ける現実だっただろう。それはこれから先も同じで、決まったレールを歩くように就職活動をするはずだったのだが、


「なんでこんなところにいるんだ。日本から出た記憶はないんだけどな……」


 周りの行き交う人々を見ながら呟く。先程から見かける人々は金髪に始まり、赤髪に青髪。はたまた緑色の髪をした人までいる。彫りの深い顔立ちは、とても日本人には見えない。さらに言えば、色とりどりの髪は染めているのでは無く、恐らくは自毛だ。染料特有の不自然さが無いし、何よりしっくりきすぎている。


 逆に日本人の特徴であるはずの黒髪をしている者はいないし、和服を着ているものもいない。まぁ、現代日本でも、和服で外を歩いている者は少ないんだが……。


「……どこかのイベント会場に紛れ込んだのかな? それにしては全然盛り上がってないけど……」


 これが何かしらの催し物なら、イベントの関係者がいるはずだが、そんな者は全く見当たらない。ただの日常の一コマにしか見えないのだ。そのせいか道行く人の視線が『異物』を捉えたようにユウタに突き刺さる。それに込められている感情は『奇異』や『不審』だ。さすがに無遠慮な視線にさらされ続ければ、鈍感なユウタでも気づく。


 そして観察していて疑問に思ったのが、通行人たちの服装についてだ。鉄の鎧を着込んで剣を担いでいたり、扇情的な踊り子風な恰好していたりする。日本──いや、世界のどの国でもありえない光景だろう。さらには一度頭が拒否した事実。道行く人の頭の上に乗っかっているものが、その答えを補足していく。


 なぜなら『イヌミミ』を生やしたものや、全身毛むくじゃらの者もいるのだ。さらには耳が長い女性──『エルフ』らしき者までいる。ネット小説を読むユウタの頭にはある仮説が出来上がった。

 そう。このことから導き出される馬鹿げた予想は──


「あ〜……異世界転生しちゃったかな……」


 その予想を裏付けるように、長剣を持った兵士らしき人が空中を駆け抜けていった



 ♢



「はてさて。ここからどうしようかな」


 噴水の前のベンチでは目立つ事は変わらなかったので、路地裏の石畳の上であぐらを組んで座っていた。今の自分の状況が流行りの異世界転生だとしても、チュートリアルを何も受けてはいない。ましてや、異世界を生き抜く力なんて貰っていないのだ。これは絶望的な状況だと言えるのではないだろうか。


「案外神様ってのも、適当なものなのかなぁ」


 呑気に構えているが、無責任に放り出された状況だ。はっきり言ってかなりマズイ。唯一救いがあるとするならば、屋台の呼び込みを理解できる事──つまり、言葉が通じる事だ。ちなみに人に話しかけてみようと思ったが、いまひとつ勇気が出なかったため実行できていない。

 あとは文化などの違いに気をつけないと思わぬ失敗をしてしまうものだが、右も左もわからない状況である。そんなことを言っている場合ではなく、一刻も早く生活基盤を手に入れることが重要だ。


 それにはどうするか考えたいところだが、他に重要な問題が発生してしまった。


 ──なぜか体が縮んでいるのだ。


「天涯孤独の状況にされただけじゃなく、まさかの幼児退行。 ──神様がいるとしたら、僕のことが嫌いなんだな」


 子供特有のプニプニと柔らかい手を弄りながら思案にくれる。こんな小さい体では、肉体労働をする事は出来ないだろう。ユウタのような身元が怪しいものにも、出来る可能性があった日雇いの仕事。その選択肢がなくなった今、どのように生計を立てるかが問題である。それに体を小さくするのなら、貴族転生が王道ではないだろうか。それなら大学で専攻している経済学を生かして、内省チートを発揮できるのだが……。


 無い物ねだりを辞めて現実を見ると、そもそも子供1人で生きていけるほど甘い世界だと限らないし、早めに自衛の手段を身につける必要もあるだろう。どの程度治安が悪いのか知らないが、天涯孤独の子供など人攫いの格好なカモだ。いつ襲われるかわかったもんじゃない。


 …そもそも、自分がどのような容姿をしているかわからないのだ。ケータイも鏡もない現状、体が縮んだことしか把握できていない。服装は制服のようで、この世界で浮いている事は明白だった。


「八方塞がりなのはわかったから、それをどう解決していくかだよな。万が一にもファーストコンタクトを失敗したら、どうなるかわかったもんじゃないし」


 今ユウタにある選択肢には、公権力を持つ警察の役割の者──衛兵にコンタクトを取り保護してもらう。他には親切な人に養ってもらうだとか、住み込みで働ける場所を探すかだが……現実的ではない。そうなると必然的に、


「保護してもらうしかないよね。常識も何もない状況じゃあ、騙されたとしても気づけない。まずは情報を手に入れられる環境を作らなきゃ!」


 ようやく方針が決まった事で心にゆとりができる。よしっ!と両手を握りしめ立ち上がり、衛兵を探すべく大通りに戻った。薄暗い石畳の道をトテトテと進み、光が開けて大通りに顔を出そうとして──暗闇に引きずり戻された。


「……よお、坊ちゃん。こんなところに1人で何をしてるんだ? お父さんとお母さんから言われなかったかい? こんな薄暗い所に1人でいると──攫われるってな!」


 ドスンっ!と尻餅をつき、上を見上げる形になったユウタの視界に映ったのは──大柄な男達だった








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