暴食
「・・・まーた遺伝子改造系の怪物か」
なんか二代目のときに戦った気がする。
あの時は確か・・・遺伝子変異をさらに促進させたのか。
しかし、ここには遺伝子制御の設備なんて全くない。
・・・にしても。
『ぐぅぅぅぅうぅぅ』
アレを逃がすのはなんとしても防がなくてはならない。
あとバリンバリンという機械をかみ砕いている音はまだいいんだけど合間に入るぐちゃぐちゃっていう肉をかみ砕く音を何とかしてほしい。
・・・あ、今目が合った。
『ぐぅぅぅぅぅ?』
「・・・」
死んだふりしよ。
「・・・・・・・・」
『・・・・・・』
「・・・・」
『・・・・ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』
「ちょっ!ふっざけんじゃないわよ!!」
慌てて起き上がって逃げる。
しかし、狙いは私ではなくオービット1だったようだ。
どうやら指揮系統がオービット本人に完全に依存していたらしくもう機能を停止したのかその場に崩れていた。・・・これも自業自得よ。
そう・・・自業自得だ。ここで同情なんてしてはいられない。
『ぐぅぅっぁぁぁぁぁぁ』
今度はコーレンとアンダーソンが入っているであろうチューブにかみつく。
しかし、予想以上に頑丈だったようで、歯のほうが負けてしまい折れてしまう。
『ぐ・・・ぐるぅぅぅぅぅぅ・・・ぐぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
しかし、すかさずもっと頑丈そうな歯が生えてくる。
・・・しかも金属でできているのか鈍く輝いている。
『グルぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』
今度はちゃんと貫通して、中にいる幼い肉体を次々とむさぼっていく。
やはりこれも機械に接続されていたのかぐちゃぐちゃとした生々しい音ともにバリンバキンという硬質な音も響いている。
続いて壁の機械類、そしてメインコンピューターと食っていっている。
・・・私は食わないのだろうか。
『グワァァアォォォォォォォォォ!!』
『メインシステム破損。サブシステムに切り替えます』
『脅威を確認しました。全隔壁を閉鎖し脅威に備えます』
まずい。
おそらくシステムが破壊されたせいで壊れたのだろう。
それを外部からの攻撃と勘違いして隔壁で侵入を防ぐつもりだ。
だが、それは私を閉じ込めるということでもある。さすがに逃げ場がなくなれば何もできずに殺されてしまうだろう。
「・・・最悪ベータパルスをつくりだして焼き殺すか」
ベータパルスは接触した生物をすべて破壊する。もちろん時間は多少かかるが、再生し続ければいずれ完成するだろう。・・・それにあいつに再生エネルギーをぶつけてもいずれ適応して逆に力を与えてしまう。徐々に弱らせていくのではだめだ。一気に破壊しなくてはならない。
さて、どうしたものか。
一方そのころ。
「ロズミアさん・・・どこ行ったんだろう」
ミゼルはあの後周囲の人にロズミアのことについて聞き込みを行っていた。
もうかれこれ一時間は探している。
「ああ、それなら・・・この路地をまっすぐ通って行ったよ」
「この路地を・・・?ありがとうございます」
「友達かい?」
「ええ、まあ・・・そんな感じです」
ミゼルは老人にお礼をいい、路地へと入っていく。
路地はどこにでもあるもので、左右の壁にはそれぞれ落書きがしてある。
このことからもわかるように治安はよくないのだろう。
「・・・一刻もロズミアさんを探し出さないと」
ミゼルはあの時、天使の猛攻から身を挺してかばったことを思い出していた。
いまだにロズミアに何が起きたのかよくわからず混乱しているが、見た目は別人であれ中身は正真正銘ロズミアなのだろう。
「?・・・あの壁」
5メートルぐらいだろうか。
少し行った先から壁が変わっているようだった。それも家と家の境界ではなく、まるで違和感しか感じないが・・・意識の外に無理やり押しやられるような感覚だ。
ただの勘だがなんとなくロズミアはこの先で危険な目にあっているような・・・そんな気分にミゼルはなる。
「ロズミアさん・・・!」
「はぁ・・・はぁ・・・・・・」
『第一隔壁閉鎖』
なんとか探査機の外へと脱出することができた。
・・・思えば見た目よりも中のほうが圧倒的に広かった。
どうやっているのかはわかるが・・・よくそれを2100年の時にできたものだ。
ガンッガンッ
突如第一隔壁に何かが体当たりするような音が響く。危なかった。
「・・・さて、どうしたものか」
あの片っ端から燃やしまくったロボットも探査機内のメインコンピューターで制御していたのだろう。探査機を取り囲むようにしながらも一体残らず倒れている。
ドライバーで調べても待機状態だった。
「悪いけど働いてもらおうかしら」
ドライバーでロボットの一体に指揮権を与えたうえでその一帯に『合図したら指定ポイントで自爆しろ』と命令する。
正直生き埋めにするだけでは死なないだろう。だが、時間稼ぎができればそれでいい。
先ほども言ったようにあいつは崩壊と再生を繰り返し、時期に全細胞が死滅する。
「ロズミアさん!」
「あら、ミゼル。どこに行ってたのよ」
「そ、それはこっちのセリフです!」
どうやらミゼルも来たようだ。
これは早々に済ませなくてはならない。
グルォォォォォァァァァァァァァ!!
「・・・な、なんですか?い、今の・・・」
「2100年の天才科学者の、って・・・んー・・・説明すると長いからまたあとでね」
「え、ええええええ!?」
「それよりほら、早く逃げる!」
「え?え?ちょっ、ちょっと待っ」
「|Andiamo(さあ、いくぞ!)」
と、その前に自爆ポイントを設定しないと。
『グゴォォォォォ!!』
「ひ、ひぃ!?あ、あれ!あれ!?」
第一隔壁に牙を突き立てたのだろう、大穴が開く。
といっても、人ひとり入れるぐらいであいつは入れないのだけれども。
「よし、自爆ポイント設定完了」
「は?」
「よーし、みんな逝ってこーい!それゆけ!1、2!1、2!!」
ミゼルが『何やらかしてんのこいつ』みたいな視線を向けてくる。
今は緊急事態なんだから仕方ないでしょうに。
「とりあえずあの化け物は放っておけば死ぬからここら一体を爆破して生き埋めにするのよ」
「そんなことしていいんですか!?ここ町のど真ん中ですよ!?」
あー、それね。
「ここ厳密には町の中じゃないから大丈夫」
「は?」
説明するととても長くなるからミゼルには言わないが、私が元いた次元とつながっている。というか、ちょうどその中間にいるといった感じか。
宇宙船ごと爆発するついでに爆発の衝撃で無理やり向こう側に押し戻してやろうというわけだ。
「元の路地に出れば多分安全だから・・・ほら、時間もないしさっさと行く!」
「わわ!?」
無理やり手を引っ張って走り出す。
ちょうど第一隔壁も腕が出てくるぐらいには破壊されてしまっている。
『ガァァァァァ!!』
今度は腕を伸ばして攻撃してくる。
しかもかなり早い。
・・・結構やばいかも。
「『護封結界』!」
「・・・助かったわミゼル」
「長くはもちません。それにかなり・・・!」
額に脂汗を浮かべながら結界を貼っていることからも相当に厳しいのだろう。
探査機の一番頑丈な隔壁でも数分しかもたないとか・・・。
『グガァァァァァ!!』
「くっ!?」
ついにミゼルの結界が破られる。
・・・まあ、ちょっと見ない間に随分と大きくなっちゃって。
「『護封衝墜』!」
今度はどこからともなく表れた柱によって地面に縫い付けられる。だが、これではあまり意味はないだろう。
『グガァァァァ・・・アアアアァァァァァ!!』
無理やり肉を引きちぎってとびかかってくる。
まあ、でも。
『エマージェンシーシールド発動』
突然現れたシールドによって突撃は防がれる。
「・・・これは・・・結界?」
「ま、5000年代の科学によるものだけどね」
ミゼルが使う結界術はよくわからないが、おそらくあれも力場を用いたものだろう。
ならば、これと原理は同じだ。
「これは電力が続くかそこのジェネレーターが壊れるかまで発動し続ける。止めようにも制御するメインコンピューターはそいつが食べちゃったしね」
『グガァァァァ!!アオォォォォ!!』
悔しそうに何度も体当たりをするが、さすがにこの力場は破れないようだ。
さすが5000年代。
「さ、爆破準備も完了したみたいだし急いで逃げましょうか」
「・・・ほ、本当になんともないんですね」
「ま、次元を超えるほどの爆風なんてそうそうあるもんじゃないしね」
これで誰もあの宇宙船には近寄れない。
一応ロボットの残党がこちらに残っていないか命令権を与えたときに調べてみたが、いないようだ。・・・最もあまりに急いでいたので厳重にプロテクトされているものは見ていないが。
「万が一あの怪物が生き延びていたとしても今頃は宇宙空間で窒息死よ」
「宇宙・・・ですか」
「・・・」
ミゼルには何か思うところがあるのだろうか。
感慨深げに空を見つめている。
気づけばもう夕方で日も暮れようとしていた。
「・・・ええ、宇宙にはあんな怪物なんて目じゃないぐらいの冒険が待っているわ」
「・・・」
「どう?私と行く気になった?」
私はミゼルに手を差し伸べる。
この手をとれば、それは先ほどのような一歩間違えれば死ぬような冒険の毎日だ。
逆に言えばこの手を取らないのならば、安心して安全な毎日を過ごすことができる。
無理強いはしない、あくまでミゼルの判断に任せる。
「行く気も何も。元から私はついていきますよ。だって楽しそうですし」
「・・・フッ。決まりね」
ミゼルは快く私と握手を交わしてくれた。
「それでは改めてよろしくお願いします」
「こちらこそよろしく。・・・いざとなったら守ってくださいね」
「ふふ・・・それはこっちのセリフです」
そんな軽口をお互い言い合いながらもお互いこれからの冒険に胸を膨らませていた。
さあ、今度はどこへ行こうか?
ようやく普通の話です。
叫び声がなんて幼稚なんだ!




